第2話 俺の幼馴染

 ピンポーン、ピンポーン。

 ピンポン、ピンポン、ピンポン。

 ピンポ、ピンポ、ピンポ、ピンポ。

 ピン、ピン、ピン、ピン、ピン――――――。

「うるさーい!」

 扉を思い切り押し開ける。

「もう、遅いってば。もっと早く出てきてよ。指が筋肉痛になっちゃうよ」

 指にフーフーと息を吹きかけながら立っていたのは、幼稚園からの幼馴染、山下香織だ。

「いつも言ってるだろ、俺は朝はゆっくりしたい派なんだって」

 香織は中学生のころから毎朝俺の家にやって来る。小学校を卒業し、集団登校がやっとなくなったと喜んでいたのに。

「知ってる。小学生のときにそう言ってたから。でも、中学校の入学式に遅刻したじゃん」

 そう、俺は中学の入学式に遅刻したのだ。それが原因で、翌日から香織が家に来るようになった。俺が遅刻しないように。

「でも、あれは――」

 はいはい、わかりました。言い訳はいいから、さっさと登校の準備準備。俺の背中を押しながら、家の中へと香織も入って来る。

「わかったよ。すぐに準備するから。ちょっとリビングで待っててくれ。飲み物も適当に飲んでくれていいから」

 香織にいつも通りの伝言を残してから、二階への階段を駆け上る。

 自室の扉を開け、壁にかかっていた制服を掴み取る。今日から高校二年生。もう高校生になって一年になる。この制服も袖先にほつれが出てきている。パジャマから制服へと着替えていると、扉が俺の方へ襲い掛かってきた。

「もう着替え終わったー?」

 バン! 額に扉が命中し、天使が俺の頭上を回り始める。

「ちょ、ちょっと、大丈夫?」

 駆け寄ってくる香織に、片手を挙げて問題ないことを意思表示する。

「よかったー。ごめん。まさか、扉の前に立っているとは思ってなくて」

 そもそも、勝手に人の部屋を開ける行為がどうかしている。

 それにしても痛い。ジンジンする。片手で額を押さえながら、着替えを続行する。

「あ、痛いようなら、私が着替えさせてあげようか」

 ニヤニヤとこちらをからかう表情を浮かべながら、そんなことを言う。

「下で待ってろ。そう言っただ、ろ!」

 扉の外に追い出した香織の後姿を見届けながら、扉を勢いよく閉め切った。

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