拾参ノ伍 松浦ノ与次(五)

「さてと、これからどうすべきなのだ?」

「正直いいますと、いますぐにでも大蛇を退治しとうございます。

しかし、大蛇がいつ現われるかわかりませぬ」

「大蛇はどこにいるのだ?」

「おそらくは……」

「水神様を……」

 与次が口をはさんできたために、八郎たちはそちらへと顔を向ける。

「すっ、すみません。高宗様がお話しようとなさっているのに」

与次郎は慌てた、

「いいや、いい。私が話すよりも、お主が話したほうがよいだろう。なんせ、与次郎は、この地に住んでおるのだから、私よりも詳しかろう」

「そうだな。よし、話してみよ」

 与次は、八郎と高宗を交互に見た。

 二人はまっている。

高宗は真剣なまなざしで、八郎は好奇心丸出しに無邪気な笑みを浮かべながら、与次の次なる言葉を待っている。

 与次は一度大きく深呼吸をして、自分を落ち着かせる。

「それでは、私でよろしければ、お話させていただきます」

そう前触れをして、与次郎は話始めた

与次が始めて大蛇に遭遇し、自分の父親が犠牲になったこと。そして、水神がお隠れになったこと。包み隠さずに、源氏の御曹司へと話してきかせた。

源氏の御曹司は口を挟むことなく、与次の言葉に耳を傾けた。

一通り話しを終えて、しばらくの沈黙の後に八郎は「竜宮山」と呼ばれる山と視線を向けた

「あの山にあるのか?」

「はい、天導の泉と私たちは呼んでおります。あそこは、かつて水神様がお住まいになっておられました。しかし、数年前に……」

「要するに、其の大蛇が水神とやらを追い出して、自分のねぐらにしてしまったというわけか」

八郎は与次の話を聞いて、そう決定づけた。

「しかし、其の水神というのもたいしたことないのだろう。それとも、臆病者か?」

「八郎君!!」

「御曹司!!」

家李と紀平治は、ほぼ同時に声を上げた。

「似たようなものだろう。要するに後からきた輩に何も抵抗もせずに逃げたということであろう」

「はははは」

突然、背後から笑い声が聞こえて振り返る。

「行慈坊。いつの間に……」

「最初からご一緒しておりましたよ」

「おぬしは、神出鬼没だな。別当よりも奇怪だ」

 兄はそんなに奇怪な人かと家李はむっとするが、八郎は気づかない

「それより、なにがおかしいのだ?行慈坊」

「いやはら、あなたの発想には、驚きましたよ」

「この山に住み着いていた水神様というのは、それでも神なのですよ。それなりの神通がございます。それをも退ける大蛇というのは、もしかしたら、あのヤマタオロチのゆかりあるものかもしれませぬ。油断なさらぬよう」

「ヤマタノオロチか」

其の言葉に八郎の瞳はさらなる輝きが宿る。

「まあ、それよりも、その《天導の泉》へいってみようではないか。

うまくいけば、大蛇にあえるかもしれぬ」

そういって、再び唐船山のほうへと視線を向けた







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