拾弐ノ嗣 悪夢ト月(四)
さて、八郎は、すぐに後藤助明が寝ているだろう部屋のほうへと向った。
「助明殿。入るぞ」
助明の返答を聞くよりも早く部屋の襖を開けた。
「何事ですか?」
助明は、その音に驚いて眼をこすりながら起き上がっぃてる。
「為朝さま。どうなさいましたか?この夜分に……」
助明は、平然を装っていたのだが、内心は、苛立っている。しかし、ここで彼にそれを出すわけにはいかない。ここでことを荒立たせても仕方がない。こ。助明は、夜中にも関わらずに八郎の話を聞くことにした。
「というわけで、その法師を今宵、泊めてはくれぬか?」
助明はしばらく考え込んだ。
「わかりました。その法師様の寝床を用意させましょう」
「いや、それには及ばぬ。俺の寝床を使うといい。」
「しかし、それじゃあ」
「大丈夫だ。俺はどこにでも寝られるのでな。それじゃあ、失礼した」
それだけいうと、八郎は、すぐさま助明の部屋を出て行ってしまった。
正直、呆然としていたために、助明は止める余裕もない。
助明はやれやれと自分の頭をなでた。
「人の寝ているときに入ってこようとは……」
なんと、常識知らずの若者なのだろうかと助明は、憤ったが、すぐに冷静さを取り戻す。
「あれは夜襲を仕掛けそうな素養だな」
助明は、八郎のこれからを思い浮かべていた。
これから……
これから変革をはじめようとしている時代にこの男はどこに向かうのか。
助明は多少なりとも興味を覚えていた。
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