拾壱ノ弐 後藤家(二)
「まあ、それはよいとして、助明殿」
八郎は早速、本題へと入ることにした。
「そうでしたね。唐船の里の大蛇ですね」
「そう、その大蛇じゃ!!」
八郎は、目を輝かせる。
その様子に、助明は一瞬目を丸くした。すぐにまるで子供でも見るかのようにやさしい眼差しを向けたことに紀平治だけが気付き、微笑ましく思えた。
(あれでも、まだ童にすぎぬ方じゃ。ただ、やはり好奇心が旺盛すぎることは今後難儀なことになりはせぬか)
紀平治に不安がよぎる。
おそらく、彼は好奇心の赴くままに、いつものように事件に首を突っ込むだろう。
傍若無人。乱暴もの。
そのように名指しされてしまうのは、この好奇心ゆえのこと。
そのおかげで、最近、耐えない
まあ、なぜ京の都にいたはずの彼がこの地に来ることになったのか。それに対するいきさつははっきりと伝わっていない。
紀平治も詳しいことは知らないが、どうやらこれが、八郎の父君の何かしらの考えのあってのことであることは推測できる。
いつかは京へもどることになるだろうことは推測がついている。もし、京へもどったとき、彼の運命はどのような方向へと動くのか。もし、源為義の野望というものがあるとするならば、その先に、とてつもない運命に翻弄されるのではないかという懸念が常に常に紀平治の中にあった。
(御曹司が京へもどれば、わしもついていくに決まっておる。おそらく、これとは違う戦に巻き込まれるであろう)
紀平治が最近、自らの持つ方術を使って占った結果にもそう出ている。
なにかが渦巻いている京。
しかし、いまはそのようなことを考えるべきことではない。
いまやるべきことは、助明たちの話に耳を傾け、事態を収拾させることだ。
紀平治は、京に向けられた危惧を向こうに置いて、助明たちの悲痛の訴えを聞くことにした。
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