玖ノ参 依頼(三)

「その大蛇は、大きいのか?」

「はい。竜宮たつのみやという山には、天へ聳え立つ天童神てんどうしんと呼ばれる大きな岩がございます。その岩に、七回りするほどの大きさだそうです」

 八郎の質問に、高宗は、淡々とした口調で答えた。

「なんか、すごいわね」

 白縫は、思わず声を漏らす。

「なにとぞ。私どもの故郷をお助けくださいまし!」

 高宗の声は高ぶり、懇願する。

 しばしの沈黙が走った。

「よし、わかった」

 八郎が立ち上がる。

 考えるまでもない。まったく迷いのない瞳が高宗に向けられた。

「受けよう」

 その言葉に、高宗は、表情を明るくし、ありがとうございますと頭をさげた。


 その様子を、行慈坊が、隠れるようにして見いいた。そして、満足げに微笑みを浮べる。

 其れに気づいたのは、家李だけ。家李は怪訝そうに部屋の外にいる行慈坊へと視線を向けると、行慈坊もそれに気付き家李に軽く会釈しただけで、その場を去っていった。


 家李は首をかしげた。




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