玖ノ弐 依頼(二)
大蛇が、暴れるようになってから、すでに数年のときが流れていた。その間に、あの里の被害は留まることを知らない。尊い命が奪われ、生きることも困難となっていた。
心が痛い。
早く、どうにかしなければならるない。
これ以上、何の罪もない民たちを苦しめるわけにはいかない。
『助けてください!』
里から、助けを求めて二人の兄弟がやってきたのはいつの話だったのだろうか。
大蛇によって、父を奪われた兄弟をはじめとする村人たちの無念。
それを晴らすべくして、自分の元へ助けを求めてきたのはいつのことだったか。
高宗は、彼らの思いを組んで、何度も山を越え、あの里へと足を踏み入れた。
それなのに、まるで高宗たちをあざ笑うかのように、大蛇は姿を現そうとしない。
ただ村を襲った痕跡があるのみだった。
そこにあったのは、村人の屍と荒れ果てた土地。
あらゆるところを食いちぎられ、恐怖にゆがんだ顔が脳裏に焼きついて離れない。
どうにか、難を逃れた幼子が、死んだ親の亡骸にすがり付いて
泣く姿。
そして、高宗たちに向ける村人たちの怒りと悲しみのこもった視線。
言葉にせずとも、確かに其の視線が高宗たちに訴えかけていた。
なぜ、あれを倒してくれないのかと……。
それでも、村人たちが口に出したりしない分、高宗たちの胸に突き刺さる。
半分は諦め、その半分は救済を願う。
入り混じる感情は、余計に彼らから生気を奪っていく。
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