丗弐ノ壱 供物ノ姫(一)
助明は、正直戸惑っていた。
つい先ほど届いた文の送り主に心当たりがあったからだ。
彼の脳裏に浮かぶのは、長年の間自分を支えてくれた有能なる家臣の姿。
「まさか……」
助明はため息をもらす。
なぜ、このようなことになったのだろうか
送り主の手紙から伝わる決意。それがなにを意味するのか考えてみるが、一向に答えが出ない。ただ、かつて自分が下した決断を悔いるだけだ。この手紙を受け入れていいのだろうか。
「父上。見つかったというのはまことですか?」
思いを巡らせていると高宗が部屋へ入ってきた。そのまま、助明の前に腰を下ろす。
「ああ……」
「して、どのような娘ですか」
「まあ、待て。焦るな。話は、源氏の御曹司殿が着てからだ」
「父上?」
助明の強張った表情に高宗が首をかしげていると、後方から足音が近づいていることに気付き振り返る。
「助明。真か!? 見つかったというのは!!」
八郎が数人を連れだってこちらへと足早に近づいてくる姿が見えたかと思うと、食い入るように顔を近づけられた助明はのけ反った。
「真でございます。御曹司殿」
それでも、体制を整え、八郎の問いに答える。その八郎の無礼極まりない態度に少々顔をしかめてしまうところがあるが、高宗自身嫌っているわけではない。むしろ、尊敬もしていた。
「どのような姫だ!!」
「まあまあ、座ってください」
助明が落ち着いた口調でいうと、八郎は一呼吸して座った
体だけはだれよりも大きいが、そういうところを見ると、やはり子供。好奇心の塊のような童だ。そうおもうそう思うと助明の口元は自然と微笑んでしまう。
「文によれば、高瀬の村に暮らしている女子のようじゃ」
「高瀬?」
高宗は、その言葉を聞いて、一人の少女のことを思い浮かべた。
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