拾弐ノ壱 悪夢ト月(一)

「おぞましいことよ」

一人の女は言った。

「ほんに、おぞましいことよ」

別の女が言う。

「あれは化け物ではないのか?」

さらに別の女も言っている。

三人の女が口々にそんなことを言い合っているのを、偶然に通りかかった少年が聞いた。

幼子は狩衣姿でその手には弓がにぎられているところからみると、いましがた、狩か、弓の練習から屋敷のほうへと戻ってきたところだろう。

「信じられぬ」

一人の女は言った。

「信じられぬ」

別の女が言う。

「あれは鬼ではないのか?」

さらに別の女も言っている。

幼子は、弓を強くにぎりしめた。





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