第46話
「それで? ギルド登録だっけ?」
クローニを落ち着かせてから、すこし時間が経ったいま、場所をクローニのプライベートルームに変えて話している。
讀賣の前には、先程からずっと目を光らせているクローニが座って、性格には今は膝立ちをしている。
「ッそうだ! ……それでうちのギルドに入ってくれるか?」
年齢的にも、外見的にもそぐわない上目遣い
で讀賣のことを見つめている。
そんなクローニが先程のおばちゃんと類似している事から多少引き気味だが、テーブルを乗り上げてきているらことから、嫌な顔を浮かべながら椅子へと押し返す。
そして一息を吐く、調子を取り戻すために目を閉じて頭の中を整理する。
そして小難しそうな顔をする讀賣は戸惑っている口をかみ締めて口を開く。
「クローニがギルますだったら信頼もできるし、これ以上にないと思うし、安心してあいつらを預けられる」
「ッだったら!」
策ほど押し戻された事に何も感じていないのか、目をきらきらとさせて今度は完全にテーブルに乗り上げるようにして身を乗り出す。
そんなクローニに呆れが刺した讀賣がため息をつきながら押し戻すと、一度クローニの目をしっかりと見て口を開く。
「なあ。それはお前がしたくない、やらせたくない事なんじゃないのか?」
そしてもう一度瞬きをすると、すこし強めな口調で発する。
「――奴隷でも、亜人でも、人生を他人が決めるってことをさ」
それを言われたクローニが一瞬目を大きく見開くと、自分の言った事の意味にきずいたのか、明らかに雰囲気が沈む。
「……ごめん。助かったよ」
耳から目元に垂れ下がった髪をかき上げると、すぐにテンションを戻す。
讀賣もさすが人と接する職業の人間だと驚いている。
「いや、大丈夫だ……それでギルドの件は、あいつらと話し合ってから決めるから、決断はその後でいいか?」
気まずいのと、ギレーヌが待っているということから、早めに切り上げようと提案を出すと、それに賛成なのか、黙って顔を縦に振る。
「おばちゃんもそれでいいよ」
「……ああ。それじゃあな、おばちゃん」
一人称が変わったことから讀賣も察し、呼び名を変える。
今まで讀賣がクローニのことを名前で呼んでいたのは、酒の席を付き合うということから派生したものだ。これはもう今日は酒を飲まないということだ。
それを理解している讀賣は、この部屋に来るときに持ってきておいた酒の入った袋をアイテムボックスに収納する。
初めてアイテムボックスに収納するという事から、勝手がわからなかった讀賣だが、クローニが得意げにアイテムボックスの入り口を開閉をしていることを見たからか、念じると、クローニと同じ色である黒い入り口が現れた。
「俺もやれば出来んだよ」
「……そうかい」
面白くなくなったのか、クローニはつまらなそうな顔でそっぽを向く。
その顔を見た讀賣が苦笑いを浮かべると、アイテムボックスに酒瓶の詰まった袋をぶち込むと、扉のほうに向く。
「それじゃあオレ、ギレーヌのところに行くから」
「ああ……」
振り向くときに視界に入った悲しげな顔を浮かべるクローニ。底をあえて接する事を讀賣はしない。そのかわり、クローニにこう言う。
「また何かあったら一緒に飲んでやるからさ、あまり溜め込むんじゃねぇぞ」
そう言い残すと、返事を聞く前に素早く扉をくぐる。
「ふぅ」
閉じた扉に背を架けると、ため息をつき上を向く。
そして溜まっていた疑問を呟く。
「なんで俺おばちゃんに惚れられてんだ?」
讀賣はクローニと同じ人と接する職柄だったため、相手の調子を読み取ることは簡単だ。
そして今回も読みう取ることはとても簡単だった。それが表側に大きくでていたからだ。
「ほんとにさ、幼女ハーレムだけで良いんだけどな」
いつも頭の中で考え妄想し作り上げている幼女の王国。
讀賣の周りには幼女が集まり、それぞれが様々な顔をし讀賣のことをみあげ、撫でを欲している。
そしてその中の誰かを撫でると、次々と様々な幼女が私も私もと近づいてくる。
「あは、あははっ」
顔を愉快に歪ませると、大きく息を吸い込み叫んでしまう。
「ようっじょ、サイコォーーー!!」
腰を深くし、空を仰ぐ。
周りから見ればきっと奇行であることはこの世界でも地球でも変わりはしないだろう。
だが、現在は帰っているのは少数の冒険者のみ、疲れ果てて讀賣のことを気にする余裕などはない。
それを分かっている讀賣は前世でも出来なかったことをできたことの喜びで、酷かった顔をさらに歪ませて、歪な笑い声を発していた。
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