第39話

 カチカチと不慣れなフォークでの食事が終盤に差し掛かる頃、讀賣の思考は全く別のところにあった。

 それはレグリーのことだ。

 この場をい去るときに残した言葉が今になって脳内を駆け回っている。

 「部屋に戻りたいような、戻りたくないような」

 そこまで言うと、一気に残ったご飯を掻き込む。

 掻き込んだご飯が喉に詰まらす、なんてことは無かった。きっとそれはご飯にかかっているソースのようなものだろう。

 辛いような、甘いような、よくわからない味が脳に刺激を送り食欲を駆り立てるほどの一級品だ。

 口の周りについてしまったソースを近くにあったお絞りで拭くと一休みといわんばかりに水に手を伸ばす。

 「なんで水って透度が高いんだろうな」

 日本でもそうだが、地球規模でも、はたまたこの星でも水は透明だ。さすがの讀賣でrも様々な工程を得て透明になっていることは分かる。だが、讀賣が出した問いの真髄は違う。

 何故どこの星も水という概念や建物など、様々な概念が合致するのだろうか。

 考えれば考えるほど眉間にしわが縒り、疑問を呼ぶ。

 「ニーキ様? どうかしたのですか?」

 突然の声に体が跳ねる。

 「や、なんでもないさ……それよギレーヌ、お前はこの水はどんな風に見える?」

 上がっている心拍数を隠すために質問を出す。

 するとギレーヌはコップに入っている水を食い入るように見つめる。

 うぬぬと唸る声がいつの間にか朝食時を過ぎて人が少なくなり朗らかな日差しが差し込む食堂に流れる。

 日差しが心地よく体力を吸い取られているのか、ぼちぼちと寝に入ったり、寝ていたりなど、仮眠を取っている人がちらほらと見える。

 先ほどの群衆は何故かポッと居なくなり、途中からは静かに朝食を取れて内心満足感があるのは讀賣の胸の中にしっかりと仕舞われている。

 「質問を変えよう。なぜ水は透明・・だと思う?」

 「だってそれは魔法でろ過をしているからで……」

 讀賣はそっと席を立つと、ギレーヌの横まで行き頭を触る。

 「お前のご主人はそんな短銃菜ことを尋ねるやつだと思うか?」

 そう耳打ちをすると、頭に触れている手を上下に二、三度動かし頭をポンポン撫でると、そっとその場を立ち去る。

 先ほどの讀賣の質問には意味などは全く無い。あるとするならば、それは讀賣の疑問の解消と、レグリーとの一時的な隔離だ。きっとギレーヌでもこれは予測が出来ないだろう。

 レグリーが讀賣に告白をするなんてこと。

 そんな事を知らないギレーヌは必死にコップに入っている水と睨めっこをしている。

 そんなギレーヌを後ろに、讀賣は多少足を引きずりながら角を曲がった。 

 

 

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