第36話
讀賣が部屋を出て一番最初に伝わってきたのは、まるでどこかの年二回に行われる会場のような統制の取れた人々と、盛り上がっている声だ。
これこそが異世界。統制が取れている人たちだが、どこか汚さを感じるような感覚。
讀賣はその感覚を前に打ち浸れる。
「ああ。やっぱし異世界はいいよ」
地球ではこのような集まりは周りから懸念され、虐げられていたものだ。
何かに夢中になり我を忘れる。
子供のときはそれはとても良いことだ。だが、歳を取っていけばどうだ。周りからの重圧でそれらが出来なくなるどころか、自分自身も虐げられ煙たがられる。
でも、それは地球ではの話。この世界では目の前で行われているような事が正常なんだ。
どれだけ騒いでも、どれだけ夢中になっても、何時までも少年のままで居られる。
「あら。この前のご主人ちゃんじゃないのよん!」
少女の心を持ったおばさんが讀賣の腕に抱きつく。
「ご主人!?」
先ほどのおばさんの声を聞いたレグリーが一直線に向ってくる。
狼人族は、自分より強い相手には敬愛を示すといわれている。
それの象徴が今現在のレグリーだ。少しの間でも讀賣から離れればこうなる。
「ご主人!」
一気に讀賣に抱きつくと、頬擦りを始める。
それにつられてギレーヌやリーナ、ルーネが集団から抜け出すように近寄ってくる。
「レグリー少しは落ち着きなよ」
頬擦りが止まらないレグリーの頭を撫でるとそう言う。
「ニーキさん。その……私も」
頭を出してくるルーネ。
ルーネおまだ子供だ。きっと大人や年上に甘えたいだけなのだろう。それだけなのだ。
そう、それだけなのに……どうしてこんなにも期待しちゃうんだよ! ああ、なんでこんなにかわいいんだよ。大体日本にいるときでもあんなに幼女は可愛かったのに、さらに可愛くなって俺に懐くとかさ、もうここは
上目遣いで見つめているルーネの頭を讀賣は満面の笑みで撫でる。すぐ隣でおばさんが顔を引きつっているが、賢者モードになっている讀賣には問題はない。
だって襲わないし、襲えないもん。
ロリとは愛でるものであって、犯すものではない。
「可愛ければそれでよし」
讀賣がキメ顔で言うと、先ほどまで引き気味だったおばさんが表情を一転させて、先ほどの様に近づいていく。
「可愛いといったら、このワ・タ・シ。ウフッ」
しわがばんばん入っているお茶目な萌え顔だと思われる顔を見せながら、レグリーを追い払うようにして腕に抱きつく。
「放せ! ……いえ、離してください」
力で離そうと思った讀賣だが、それをすぐに諦めた。
おばさんのたわわに育った垂れ乳が擦り付けられる。
腕を抜こうとすると、垂れた乳と一緒に吸い上げるため、激しい嘔吐感に否まされ腕を引くことが出来なくなる。
腕を戻すにも垂れ乳が邪魔をし、固定ということしか回避方法がない。
「まったく堅くなっちゃって! これだから男の子は!」
しわしわなおばさんの顔がどんどんと近づいてくる。
魔法を使えば、この場からの離脱や恒星など出来るだろう。だが相手は身なりから見ても一般人。それのおばさんと思うほどの年齢だ。目測でも70後半はあるだろう。
そんな人を吹き飛ばす事を讀賣が出来るはずもない。
『ギレーヌ。このおばさんをどうにかしてくれ』
刻印を使って言葉を送る。
それが正常に届いたのか、一瞬だけだが刻印が赤を浮かび上がらせる。
「あの、おばあさん? この方が困っているようなので離してあげてくれませんか?」
ギレーヌが優しく言うと、讀賣が困っているのが本心だという事を察したのか素直に絡めていた腕を解く。
そしてギレーヌのほうに向き直ると、その胸倉を掴み持ち上げた。
「なに私のことをおばさん呼ばわりしてるのよ!」
何故か男の讀賣に言われてもなんともならなかったおばさんが女であるギレーヌに言われると、急に怒り出した。
同姓に言われると我慢が出来なくなる、というのもあるが、流石に今回のは理解が出来ない。
「自分の年齢が把握できないおばさんがなに威張ってんだ?」
「……なんだい小娘。私とやろうってんかい?」
急に周りがざわめき出した。
その声に耳を済ませると、あのおばさんがどうやら
レグリーがケンカを止めようと間に入ろうとするが、ギレーヌに睨まれたりおばさんに睨まれたりとまるで蛇に睨まれたかえるの様に蹲り讀賣の裏に隠れる。
「ご主人……」
「大丈夫だよ。ギレーヌのことだ、きっと何か突破口はあるだろう」
安心させるために頭を撫でてやると、安心を通り過ぎて安楽した表情に早変わりする。
讀賣はすこし苦笑いを浮かべると撫でるのをやめ、ギレーヌたちの方に視線を移す。
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