第24話
ひんやりとした冷たい空気が頬を撫で上げると目を覚ます。
「……寝てたのか」
前屈みで寝ていたせいか、固まった腰を背伸びするように伸ばすと今まで膝に乗っていた重みが動く。
「……ん?」
先ほどまであった寝息が一つ消える。
消えたのはルーネの物だ。どうやら讀賣の膝にはリーナとルーネが寝ていたらしく、未だにリーナが膝の上で寝ている。
「そーいやレグリーは?」
「ふぁあ……あそこにいるよ」
小さく欠伸を掻くと、まだ眠たいのか目を擦り意識を覚醒させる。
その手とは反対側の手で指を刺すのは横並びに並んである残り二つある内の讀賣側のベットだ。
そこにはギレーヌとレグリーが絡み合うように二人で添い寝している。
起きる気配は無く、すこし寒いのかプルプルと震えている。
膝に乗っているリーナを持ち上げ、頭の下に枕を入れ、膝と交換させる。
今日一日で色々な事があって疲れているのか、先程みたいな大きな動きをしたのにも関わらず、まったくといって起きる気配がない。
振り返るとルーネが倒れるのが見える。
「……やっぱり幼女はやわらかい」
ベットから落ち地面に落ちる前に回収すると、必然と持ち上げるような形になる。
感想を素直に言うと、リーナと同じようにベットに寝かせ毛布を被せる。
「明日は支部とかに行こうと思ったけど、やめたほうがいいか」
頭の中で新しい予定を組み替える。
――コンコンコン
急にノックが鳴る。
何かあったっけと考えると、部屋に入る前にカウンターのおばちゃんに言われたことを思い出す。
『夕方くらいになったらお風呂を入れるから、入ったら呼びに行くからね』
今は夕方。もうそんな時間かと何の注意も無く扉へと歩いていく。
「はいはい、今あけますよー」
そう言い自分のベットから離れると、レグリーたちに毛布をかけ、ドアに近づく。
そしてドアノブを捻った瞬間、外から殺気が部屋中に蔓延する。
だが、もう止まれない。
徐々に開く扉から一気に離れるようにステップを踏むが間に合わない。
「ック!」
前で手を交差させ防御はしっかりと取る。
だが、よく考えれば、手を交差させたところで、もしも相手が冒険者だとしたら、何らかの武器を持っている。
手なんて切られる。
どうすれば。そう思った瞬間、背中から殺気にも似た叫び声が耳を襲う。
「ッご主人、退け!」
レグリーのものだ。
レグリーはベットから飛ぶようにして讀賣まで詰めると、一気に首元を掴み、先程踏み切った聖で荒れている状態のベッドへと投げ捨てる。
「
唱えると、一瞬にして稲妻を纏った全開モードに達する。
腰につけてある獲物の片手直剣を引き抜くと同時に開いてくる扉に突進するように突き破る。
「気配からして暗殺者。返答次第ではその首が無いと思え」
壁に突き当たる相手の真横に剣を突き刺すと、いつでも胴体を避けるように、剣の向きを調整する。
相手の容姿は不健康と思えるほど細く、もはや不気味ですらある体に纏っているのは黒いピチピチなゴムスーツだ。
顔はコイフを被っており見えないが、服が服のせいか胸が膨らんでいるのが見えるところから、女性ということが分かる。
そして讀賣が目を見開いたのは胸にあるものだ。
首輪だけならおしゃれ、で済むと思うが、そこには刻印が光浮かんでいた。
刻印が刻まれている、ということは奴隷、ということだ。
光っているのは命令の実行をしていない、または放棄しているという事だ。
つまり現在讀賣に手を掛けられていないということだ。
流石はレグリー、そう褒めようとしたが、未だにそれは出来ない。
レグリーは剣を突きたてたままでプレッシャーを押し付けている。
「答えないなら質問を変えよう。貴様は誰の命令で、何故ご主人の命を狙っている」
変わってねーよ! と突っ込みたくなる気持ちを抑え、もしものときの様に魔法で囲いを作る。
「檻よ、我が力の知らしめとし降臨せよ『
魔力の量によって効力の強化が出来る檻を作り出し、魔力の最大の半分を一気につぎ込む。
すると、檻はまっすぐのものから交差するように斜めに上に伸びてゆく。打てよしたには黒くて堅そうな板が表れピチピチスーツの女を閉じ込める。
「俺は幼女以外容赦ねぇーから」
「あれ、裏の世界で有名な暗殺者、黒鷹《くろたか》です!」
いつの間にか目覚めていたリーナがピチピチスーツの女の通り名らしき名を口にする。
その名が本人を指すもので当たっていたのか、ピチピチスーツの女は急に焦りだす。
檻を壊そうと魔法らしきもので炎を出したり、それが効かないと分ったら、今度は氷の魔法を放ち檻を凍らせる。
「クソッ!」
檻に触れていたレグリーはその場から離れる。
するとレグリーが触れていた所が凍り冷気は発する。
そしてまた炎の魔法を放ち、それを溶かす。
その行為が何をしているのかわからないというような顔を見て讀賣が呆れ後ろを向く。
だが、呆れは驚愕に変わる。
リーナやルーネはともかく、ギレーヌですら分らないらしい。
何故だ、と思ったが、この世界に来る前、ケルプに言われたことを思い出した。この世界の生活水準レベルが低いこと。
生活水準レベルが低いという事は、技術レベルも低い。もしかしたら鉄を暖めて冷やすと割れるという事も知らない。
そんな中、何故黒鷹がその事を知っているのかという事が疑問になる。
だが今は黒鷹の行動を止めなければとい虚勢をは吐く。
「安心しろ、いくらやってもこの檻は膨張も収縮もしない。そもそも熱して赤くならない所で気づけ」
すると、素直なのかどうかはおいておいて、諦めコイフを外すそぶりをした。
さて、お顔の拝見と行きましょうか。
讀賣の警戒が緩んだことを黒鷹は見逃さなかった。
檻の格子と格子の間から鋭くとがった氷を投影させた。
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