第15話
『差別じゃないのか! 人権問題で訴えるぞ!?』
すると彼女は笑顔でこう言った。
「『差別じゃないよ、区別だよ』」
讀賣は頭にでてきたその台詞をそのまま出してしまう。
「――ヒッ!」
讀賣の顔を見てリーネは小さな悲鳴を上げる。
流石の讀賣でも幼女に悲鳴を上げられるのは心に来るものがあるらしく、ショボンと項垂れる。
「はぁ、まあいいや。それより世話になったね」
「そそそ、その前に魔石は⋅⋅⋅⋅⋅⋅?」
「ああ。忘れてた」
言われて思い出した讀賣は、ポーチに入っている魔石を取り出すと、キャッチボールをするようにカーサワに投げる。
もちろんそんな事を想像していなかったカーサワは手にあたり跳ね返る魔石にうろたえるが、落としてはいけいと自分の身が下敷きになるようにして体に落とす。
「すまんすまん。んじゃ、また今度会ったらよろしく頼みますわ」
「え、ええ。こちらこそ」
笑いながらいう讀賣の言葉に乱れた髪を整えながらカーサワは返事を返す。
讀賣はそれを聞くと、レギーヌにくっついてある鎖を引っ張るようにしてついてこさせる。
「そんじゃーな」
そういい讀賣は暗幕をくぐり外に出る。
冷静に思えば、それは不思議な光景だろう。
二十歳も行かない幼い面影が残る少年に、地べたを這っている中年のおじさんが敬語を使っている。
だが、その事に誰も気づかない。
敬語を使っているカーサワの意識はそんな事に向きもしない。
ただ残るのはA級の魔石を貰えたということだ。
「あんな大人にはなりたくないです」
ルーネがそんなことを呟く。するとレギーヌも続く様に私もと言う。
讀賣は少し睨む様にギレーヌを見ると、ルーネの言葉によって明るくなりかけていた顔が暗く戻ってしまう。
「まあいい」
視線を前に戻すと、そこは暗闇に潜る前の世界が広がっている。
相変わらずすごいなと心の中で感心しながら、リーネの隠れている場所を眺める。
そこには周りにある景色である草むらとは違和感がプンプンと臭う白いパーカーの裾が草の上に被さっていた。
「頭隠して尻隠さず、だな」
讀賣が後ろを確認するとリーナの名前を呼ぶ。
「服見えてるぞー」
「ひゃい!?」
先ほどまで何も声のしない森から声がしたことで驚いてしまう。
リーネは状況を確認しようと頭だけをひょこっとだし首をくるくると回す。
「あっニーヤさんーーッとお姉ちゃん!」
顔をパーっとさせこちらへと走ってくるリーナ。
それを受け止めようとその場で両手を広げるが、手を挙げたせいで下が開き、その間を潜る様にしてルーネを走り出す。
「お姉ちゃんッ!」
「リーナッ!」
ヒシッという効果音が似合いそうはほど二人は強く抱きしめあう。
そうだろう、いつも面会しか許されず、それに他人の目もある。そんな環境から抜け出せて、抜け出させてあげることが出来て嬉しいのだろう。
そんな二人を見ていた讀賣が二人の頭を撫でる。
「よかったな、リーナ、ルーネ」
「うん!」
「はい!」
二人は讀賣と見つめあう様に上を向く。
そんな二人を抱きしめると、投げ捨てる様にして二人を突き飛ばす。
「「キャァ!?」」
あり得ない、という顔をして突き飛ばされる二人が見つめる先に居たのは、ナイフを持って特攻してくる女の奴隷を組み伏せている讀賣の姿だ。
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