第14話

 結果だけを言えば良好、完璧で、その全ての工程が滞り無く行われた。

 でも、讀賣の心は醒めないままだ。

 「いくぞ、ルーネ……レギーヌ」

 刻印を掘り終わった二人に早速命令をする。

 逆らえば刻印が作動し、体中に焼けるような痛みが押し寄せる。

 ルーネは檻を身を屈ませ抜け出すが、契約をしただけの奴隷、ギレーヌはそうは行かない。

 「おいギレーヌ」

 呆れたように名を口にするが、顔を見ようとはせず、そっぽを向き震えるだけだ。

 「大丈夫ですよ、ニーヤ様。そろそろですので」

 「……はぁ」

 ため息をつくと、先ほど立ち上がったばかりの檻に座りなおすと、手の甲に描かれている刻印を撫でる。

 その刻印はギレーヌを奴隷にしてから腕のほうに伸びるように伸びている線がある。きっとリーネのものだろう。

 すると、突然に、手の甲にある紋章が煌めき始める。

 「きましたねぇ」

 カーサワが輝く紋章を見ると、気持ち悪い声で讀賣に伝える。

 それと同時にギレーヌのほうに植えつけられている刻印も輝きだし、途端に苦しみだす。

 「っく――!」

 刻印から体を這うようにして六本の同じ色をした線が浮かびだす。

 その線は枝分かれをするように体中に浮かびだす。

 「あぁ……あぅ」

 激しく喘ぎ声をだすと、急にその刻印の侵食は止み、逆に戻るようにして消え始める。

 「……これは?」

 刻印の不調と睨んだ讀賣はドスの利いた声で訊ねる。

 声を聞いたカーサワは驚いた顔をし、笑い声をもらす。

 「知らないのですか? これは奴隷が従うためのもので、従うともういらないのですよ、なので」

 「もう用はないから止んだ、と?」

 「はぁい」

 カーサワは刻印による強制命令を終えたレギーヌの首輪につけられてある鎖を引っ張ると讀賣の元まで持ってくる。

 それを受け取ると、地べたに座り込んでいるギレーヌを見ると細く微笑む。

 「さぁ、行くぞ」

 「ぁい」

 はっきりと発音をしないレギーヌを睨むが、あまり意味がないと判断すると、くいっと鎖を引っ張る。

 すると犬みたくついてくるレギーヌを確認すると、ルーネの手を握る。

 「いこっか」

 「……うん」

 怖い印象を与えないようにと笑顔を浮かべるが、ルーネは暗い表情で従い歩き出す。

 この時、リーナの心にある疑問が浮かぶ。

 何故私とギレーヌとで扱いに差があるのか。

 そして、その言葉を不意にも口に出してしまう。

 「なんで私とギレーヌじゃ扱いに差があるんだろう」

 その言葉を聞いた讀賣は足を止める。

 差別、それは讀賣自信が一番嫌ってきたものだ。

 差別によって人は迫害され、差別によって人は孤独になる。

 その象徴ともいえるのがイジメだ。

 讀賣はイジメによって大人や同学年を嫌うようになったのだ。

 なのに、何故そんな事を自分は平然としてのけているのか。

 そう考えると、ある言葉が脳裏に浮かび上がってきた。

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