第9話

 お姉ちゃんを買う? もしそれが本当だとしても買った後に何をするの? 確かにニーキさんはいい人だけど、それは仮面をかぶってるだけなのかも。お姉ちゃんは私が守らなきゃ。でもこの人には嘘を吐きたくなしい。どうすれば……。

 買っても得をしないって事を伝えれば。

 その考えに至ると、リーナはあからさまに笑顔になり答えた。

 「多分買えると思います。でも、買ってもニーキさんに得はないと思いますけど?」

 「それじゃあちょっと聞くけどさ、君のお姉ちゃんは幼女?」

 質問を質問で返されたことに驚いているの顔をしかめる。

 だがここは冷静にと大きな深呼吸をする。

 「私ほど子供ではないですけど、お姉ちゃんは9歳でまだ幼女に分類されると思います」

 そのことを聞いた讀賣はにやりと笑う。

 リーナはその笑顔を見ると無意識に背筋が伸びる。背筋が凍ったように戻らなくなり声も出すこともままならない。

 「じゃあ幼女、救いに良くとしますか!」

 「え?」

 唖然として口をあける。

 あほ面というべきか、年相応と言うべきか悩ましいような顔で讀賣のことを見つめる。

 そんあリーナに讀賣は手を伸ばす。

 「ほら、どうした? いかないのか?」

 「い、いきます! でも」

 言葉を続けようとすると、急に茂みに隠れるようにしてしゃがむ。

 讀賣もそれに続くようにしゃがもうとするが、どうやら遅かったらしい。

 ガラガラと音を立てて進んでくる馬車の操縦士と目を合わせたからだ。

 「ん? 何だ、お前」

 中年で小太りのおじさんは馬車から飛び降りるように地面に降りると、特徴的な髭をいじりながら讀賣に近づく。

 隠れているリーナを気遣ってか、讀賣もおじさんのほうに足を進める。

 「こんにちは。私、奴隷商のカーサワと申します」

 「どうも、俺は讀賣新聞だ」

 讀賣は差し出された手に少し警戒をしていると、カーサワは手を引っ込める。

 「私の職業柄、あまり定住、ということが難しいということでこうして奴隷を売買しているんですよ。どうです? 見ていきますか?」

 「ああ」

 魔石を獲られないようにと腰にある小さなバックから腹の下辺りにつけているポーチに移動させる。

 讀賣は一度リーナの居るほうを眺めると、カーサワが案内する馬車の荷台の暗幕の中に足を進める。

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