第8話
讀賣の木霊が鳴り響くのは、大樹などが生え大人大の雑草などが辺り一面に生い茂る森だ。
そこに居るのは、先ほどから生気の抜けたような顔の讀賣と、それを不思議そうに見つめるリーナ。
そして先ほど讀賣が不意にとはいえ倒したA級魔獣の魔石だ。
「元気出してください。こうして魔石も手に入ったことですし」
うれしそうに魔石を見つめるリーナ。
どうやら魔石は怪我を治すことの出来る薬草や、薬を作り出すことが出来る茸よりも基本高額で取引されることがあり、しかもその魔石はA級ときた。その取引値段は一個だけで楽に奴隷を買うことが出来るらしい。
すると讀賣は思い出したかのようにつぶやく。
「奴隷って命令ならなんでも聞くの?」
その質問には当然リーナは嫌な顔をするが、助けてもらったのだから答えなければならない。
リーナは少し間を開けると、質問に答える。
「まあ一応何でも聞いてくれます」
でも、と続けるが、すぐに口を閉じる。
すると何故か顔を暗くさせ俯いてしまう。
「どうしたの?」
「実は、私……」
何かを告白しようとするが、その言葉の次に続く言葉が出てこない。
そればかりか体が震えてすらいる。
そんなリーナを心配したのか、讀賣は優しく話しかける。
「別に無理をしてまでは聞こうとはしないよ。それに命令が聞いてくれるって分かっただけで十分だし」
「あの! あまりひどい命令はしないであげてください!」
轟雷が響くかの如くリーナが声を張る。
周りに居た小鳥たちは声に驚き飛び立つ。
リーナの周りには魔力がもれているのか砂嵐が発生している。
「お、おい」
安心させようと方に手を伸ばすが、周りに漂っている魔力にはじき返されてしまう。
リーナはスカートのすそを引っ張るように力が入れられており伸びている。
だが、そんなことはお構いなしというくらいに次第に漏れ出している魔力が強くなり、油断すれば讀賣が飛ばされてしまうほどの強い風が吹き荒れている。
すると突然と讀賣はその場で立ち上がる。
「リーナ……ッゴメン!」
一気に突進するかのようにリーナに抱きつく。
勢いのおかげか、それとも突進してくる讀賣に驚いたせいかは分からないが、魔力の漏れが弱まりリーナに抱きつくことが出来た。
リーナはその事実に戸惑うが、すぐに受け入れる。
「私、お姉ちゃんが居たんです。今はもう奴隷になっちゃいましたけど」
自称するかのようにリーナは言う。
だが、讀賣の耳にはそんなことは一切入ってこない。
入ってくるのは一つのみ。
『幼女の体やわらけぇ』
変態的思考だ。
地球では一切と触れることが許されなかった幼女の体。
それが今触れることを許され、そして受け入れらてすらいるのだ。
そんなことを考えているとはいざ知れず、リーナは言葉を続ける。
「それでいろんな命令を与えられて人間不信になっちゃったんです」
その言葉で讀賣は現実に戻される。
顔を顰め、聞き返すようにたずねる。
「はい。私と以外が近づいても威嚇するしかできなくなってしまったのです」
抱きついていたリーナを離すと讀賣は腕を組む。
「その状態で命令しても聞いてくれるの?」
「はい、一応はですけど。でも命令の量が多ければ多いほど歯向かわれることが多いです」
すると讀賣は魔石を見て考えるそぶりをする。
魔石とリーナに視線を交互に当てると、顰めていた顔を明るくさせる。
「この魔石で君のお姉ちゃんは買えるかな?」
「……え?」
リーナは急に顔を青く染め上げると、口をもごもごとさせる。
そしてそれにつれるように後悔しているような顔付きにも変わっていく。
「なんか俺、変なこと聞いたかな?」
そう聞く声は、お姉ちゃんをどうすれば救えるかと言う考えに遮られ、届くことはなかった。
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