第4話

 未だに讀賣は気づかない。

 自分の心が読まれている事に。

 ケルプが軽い足取りで讀賣の横に立つと讀賣にしゃがむように手招きする。

 「ん? どうしたの?」

 しゃがむみケルプのほうに耳を傾ける。

 讀賣はこのとき気づかなかった。

 ケルプの笑顔が変わっていたことに。

 そしてそのまま讀賣は気づくことなくケルプの顔が耳の横に行き完全に顔が見えなくなってしまう。

 そしてケルプは囁く。

 「エデンの中じゃ誤魔化しは意味はない。この私を欺いたこと、後悔するといいですよ」

 全身から汗があふれ出す。

 壁に吸い込まれているときみたく本能が逃げろと警告している。

 足に力一杯をこめると後ろに飛ぶ。

 だが、今はケルプに肩をつかまれたままで、その行為は無意味に終わる。

 ケルプ自身を軸になるようにし、飛んでいく讀賣をケルプは掴み地面へと叩きつけた。

 「ガハッ」

 喉からは血の味がいやというほど流れてくる。

 肺から一気に空気が抜けたことで過呼吸になっている讀賣にまたがりケルプはいう。

 「ここ最近人が来ても私のことを馬鹿にしていく人しかいない。でもアナタが来て意外とよさそうだなって思いましたけど、見てみればこれです。頭にきちゃいました」

 ケルプ笑顔になる。

 それは最初合ったときとは違う、悪魔のような、いや、悪魔そのものだ。

 すこしの間をあけると、ケルプ続けるように言う。

 「アナタを幼女に好かれなくしちゃいます」

 「え?」

 讀賣は気の抜けた声を出す。

 顔からは血の気がスッと引く。

 それは理解してしまったからだ。

 会社での教育で、相手を見抜く力も重要視されていた。

 人の本質を見抜けぬ者はこの業界では生きてはいけないと。

 実際に仕事では嫌というほど実感した。

 同僚がそれの鍛錬を怠り厄介物を掴まされクビになる、そんなことも良くあった。

 だから讀賣はいついかなるときも、誰だろうとその警戒はしていた。

 警戒をしていたからこそわかってしまった。

 ケルプは嘘を吐くような人物ではないことを、すでに見抜いている。

 そしてそれと同時に何かとんでもない本章を裏に隠しているということも。

 「では転生をしてもらいます。では、よき人生を」

 「ッ待ってくれ!」

 必死に手を伸ばす。

 またがれて動かない体を左右に振って向けだそうともする。

 だが、それは叶う事は無い。

 そしてケルプは悪魔のような笑顔で言う。

 「いや、ですよ」

 その瞬間、讀賣は光に飲まれ意識を手放した。

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