第3話
「別に怖がらなくても」
と頬を膨らませて拗ねるのは、先ほどまでとんでもないほどの威圧を放っていた
差し出された手を讀賣が掴むと、まるで大男に引っ張られるようにいとも簡単に持ち上げられる。
讀賣は体制を元に戻すと、顔を正面に向ける。
すると、立ち上がらせるためとはいえ近くにケルプの顔があり、また倒れかけてしまう。
「フフッ。讀賣さんはあわてんぼうさん、なのですね」
恥ずかしくなり顔を逸らすが、颯爽と本題にはいるケルプから離れる事は出来ない。
「特典ですが、普通の三つと、エデンに入れた事。そして私が気に入った事で、倍の六個特典を選んでください。そして転生する世界はどうしますか?」
迷う暇も無く、その問いが耳に入った瞬間に口が開く。
「もちろん幼女と恋が出来る世界で! ああ、ようやく俺の恋が叶うんだ!」
マニュアルらしき本と睨めっこをしていくと、一枚の紙を急に切り取る。
突拍子もない行動に驚き声をかけるが、ケルプは済ました顔でその紙を差し出す。
讀賣は自分がやった事にされないかと戸惑っていると、先ほどの行為を説明するように言ってくる。
「これを切り取ったのは、一つの世界に転生者は一人しか行けないんです。なので何かの手違いが無いようにと切り取っているだけなので、別に心配しなくても大丈夫ですよ」
と讀賣に優しく説明をする。
すると讀賣は納得したのか、疑心暗鬼ではあるがその紙を受け取る。
その紙には、恋愛という項目が書かれておりそこには結婚の年齢は関係なしで、成人男性と初潮前の子供が結婚する事も珍しくは無いらしい。
その理由は、その世界は子供のときが一番美しい時期で、それを過ぎると美しくない、とまでは行かないが、子供のときのような輝きや美貌は失うらしい。
だが、讀賣にはそんな事は関係ない。
『幼女と愛し合えればいい』
ただそれだけだ。
「この世界でお願いします」
意識をしていたわけではない。ただ俺の本能が俺の思考、俺の神経を動かして言っただけだ。
「わかりました。ではこの紙に特典を書いてください。その語に私が修正を加えるので、もしかしたらアナタの望む特典からすこし外れたり、何てこともあるので、自制を働かせてくださいね」
そう念を押してケルプは言う。
だが、讀賣はそんなことはお構いなしという風に自分の欲をさらけ出して書いてゆく。
異世界で、かつ魔物との戦闘がある世界でどう幼女からすかれるか。
それはきっと力だろう。
地球でお金が求められる、それなら争いがある世界では力では?
その結論にたどり着くのは容易なことだろう。
だが、たどり着いたからなんだ。力がもらえる特典を選ばなければいけない。
ならば一つ目はこれだ。
『強い武器(剣、斧、槍、拳、弓、杖、盾)を自分の中に内包して欲しい』
そして次だ。
武器があれば次はそれを扱うだけの技量だ。
『それぞれの武器のスキルや必殺技、そして奥義みたいなのを全部使える』
『そしてそれらを扱えるだけの技量や体力』
これで技は揃った。
ならば次は体だ。
技術や武器があっても、動体視力や反射神経は何にも変わらない。これじゃあ技を避けられたらお終いだ。
だからこれだ。
『とりあえず身体能力を上げて欲しい』
こればかりは変に変えられたら困る。自重くらいはする。
それにすこしあがればそれだけも強くはなれるし、訓練しだいではすぐに強くもなれる。
あとは、どうするか。まだ半分しか決まっていないし、多少趣味も入れても問題はなさそうだ。
ならばこうだ。
『内包している武器は俺が名前を呼べば出てくるし、名前を呼べばどこに合っても俺の手に嵌るように飛んでくる』
『とりあえずお金』
『雷と炎の魔術が使える』
これで六つ。
願いは書いた。
ならばもう俺は何も望まない。
そう決意すると、緊張した手つきで紙を渡す。
目を通すと、すこし不思議に思ったのかケルプは讀賣にたずねる。
「幼女たちに好かれたい、などの望みはないんですね」
その言葉を聞いた讀賣は激しく動揺をする。
それを望めば幼女ハーレムなんて簡単になるのだ。
だがもう書ききった以上どうしようもない。
ならばすこしでもケルプの評価を上げるだけだ。
「特典の力で好かれても何にも嬉しくはありませんよ。だってそれは俺が望んだ事です。自分の力でかなえないでなんになる、ってなんで俺熱弁してんすかね」
自称風に言ってみせる。
だが、未だに讀賣は気づかない。
自分の心が読まれているという事に。
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