第2話
「く、そぉ!」
その声が響きわたるのは、先ほどとは違う場所。
先ほどのような異彩が囲う場所ではなく、木造建築で、どこか現実離れした場所だ。
そして讀賣はそこの椅子に座っていた。
先ほどのような興奮状態からはすこし落ち着き、五感が正確に感じ取れるようになる。
感じるのは射し込む日の暖かさ。吹き込む風の抑揚感、優しい木の匂い。そして目の前に座ってティーポットを手に取りコップに注いでいる可愛らしく、讀賣のドストレートにはまる美しい
「あなたは?」
馳せる心臓を落ち着かせながら声をかける。
すると幼女は華やかな笑顔でこちらを振り返る。
「讀賣新聞さん。今日でアナタの人生は終わりました」
理解が出来ない。
舌足らず、なんてことはない。ただ、出てきた言葉が可笑しなだ物だからだ。
きっと誰だって人生が終わりました、なんていわれても信じれるわけが無い。それに幼女だ。
「でもこんな幼女になら人生終わらせられても言いかも」
不意に口からこぼれる言葉。
そんな気持ち悪い台詞にも関わらず、幼女は笑って流してくれる。
「では、アナタに質問をさせていただきます」
断る理由なんて無いので頷く。
それを確認した幼女は咳払いをし口を開く。
「アナタには二つの行く道があります。一つは古来から伝わる輪廻転生。記憶を消して輪廻の輪に戻ってもらいます」
うん、わけがわからないねぇ。
だが、流石の讀賣でも幼女が必死にマニュアルらしき本を読んでいるのを邪魔するほど無粋ではない。
いや、邪魔をするわけが無い。
ただ微笑ましい笑顔で幼女を眺めるだけだ。
「そして二つ目。アナタに輪廻の輪を抜けてもらい異世界に転生することです」
「ふぇ?」
腑抜けた声が場を制する。
流石の讀賣でも、興味には勝てなかったらしい。
異世界転生。それは讀賣が寝ている間も願った事だ。
この世界では幼女との恋は応援してもらえない。でも異世界ならばどうだ。
会社の同僚に話したりしても本気で相手にもされなかったり、キモがられたりなど、誰にも応援されない。
愛は自由なのに、そう願っても何も変わらない。ただ世界は独断と偏見だけで讀賣の思想を壊すだけ。
願っても叶わない。そんなものが選択肢にあるのだ。多少たじろいでも仕方が無いだろう。
「転生する世界ってどうなるんですか?」
讀賣が会社で得たものの一つでもある会話術、貰える
きっとその経験が無かったらなにも考えずに転生を希望していただろう。
「えーっと……あっ! ありました。現在この真理に存在する
「星々の流星って?」
するとまたマニュアルみたいなものを見る。
だが、そこには書いてなかったようでポイっと宙に投げる。
投げられた本は地面に落ちる事は無く、宙でポンと甲高い音を立てて煙になる。
普通ならばありえない光景に驚くはずなのだが、どうにも冷静なままで、まるで
「こっちに……あった」
先ほどのように探し物が見つかったのだが、喜ばず、逆にイヤな顔すらしだす。
「どうしたの?」
そう言い歩み寄る讀賣に新しく取り出した本を差し出す。
そこには幼女じゃなくても躊躇うほどの量がズラっと書き並べられているページが目に入る。
「おお」
あまりの貫禄に声を上げてしまうが、既に文は読み進められている。
これも会社の訓練のたわものだろう。
お得意様の話に返事をしながら気配りをし書類を読み進めなきゃいけない。そんな苦行の前ならば朝飯前どころか自然に出てしまうほど造作もない事だ。
「えーっと、要約すると宇宙は雫で、それらが飛び交う世界があって、その中で飛び交う雫のことだね」
もっと深く行けば、宇宙には必ず恒星と生命体が生息する星があるらしい。
そしてその生命体は人種が基本で、人やエルフ、ドワーフや小人族などが世界の中心を回している、らしい。
讀賣からすればそれは御伽噺のようなものだろう。
だが、それは現実だと知らしめるかのように目の前の幼女から羽が生える。
「私はその中でも最高位の種族に属する天使。天使九階級、その中の天使階級の上位に位置する智天使のケルプです」
風が吹いたかのような威圧が場を押さえ込む。
「エデンに入ってきた人、最近居なくて退屈だったんですよ」
するとケルプは艶かしい笑顔で、腰が抜け地面に座り込んでいる讀賣を見つめる。
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