第2話 聡明な女性と店主
「いや、もう本当にすみません」
僕のご主人は婦人に何度も頭を下げる。誠意は十分伝わるが少々厚かましくも思えてくる。僕はご主人がそういう目的でアレをやってる訳では無いことが分かるから、むしろ微笑ましいのだが。
「いいわよ、気にしなくて。
むしろ悪いことしちゃったわね。閃光石、弁償するわ。」
婦人は本当にあっさりしていてわざわざ心を読まなくても全て正直に話していることがわかる。
「そんなとんでもない。あ、あのお店です。」
ご主人は商店街のひろい裏道のこじんまりした入口のお店に入る。夫人も僕もついて行く。
「いらっしゃい。坊主」
口調は柔らかいが厳つい身体のおじさんが低い声でそう話しかけた。背筋がぞわっとするような図太い声だ。
「やあ、スピットさん。僕の頭は坊主に見えるかい?」
「そう意味ではないよ。ってお客!お客さんかい、坊主!」
婦人の方におじさんが目を向けると驚き、そして目を輝かせてカウンターをドンドン叩く。一方婦人はちんぷんかんぷんになっている。話についていけていないようだ。最も僕もいまいちのみこめていないのだけど。
「まあまあ落ち着いてよ。それだとまた逃げられるよ?」
「そうだよ。聞いてくれ、坊主。
こないだ新規の男の客が来て、嬉しくて手を焼いて歓迎したんだ。そしたらその男、『お前はそういう趣味なのか?!』なんて言ってきて、全く失礼しちゃうよ。」
「お前を初めて見たやつはオカマかなにかに思えるだろうさ。まあ、そんなことより仕事をしてくれよ。この
身振り手振りしながらおじさんをなだめてそう尋ねると頭を抱えながらおじさんは
「いやいや、分からないよ。そのひとの家の廊下の照明なんて見てない訳だし。模型とかはないのかい?」
と答える。
「ああ、それなら先代があるよ」
先程まで必死に再生させようとしていた発光石をまるごと取り出す。
「それを最初から出してくれよ。」
呆れた表情で石を受け取りジロジロと見ている...のだが、どうも恐ろしい顔にしか見えない。
「この純度でいいかい?お客さん。」
「レビットです。石にはあまり詳しくないので...」
とご主人に目配せすると優しい表情で
「純度はどれだけ反射するかに関わるんです。高ければ高いほど光を何倍にもして反射します。しかし明るすぎるのも考えものだとと思います。」
と教える。婦人は考える素振りを見せるがすぐになにか思いついたようで口を開く。
「前のと同じで...と言いたいところだけど、いまの照石を純度があってないせいで反射しきれなかったから発光石が壊れたんじゃないかって思ってるですよ。だから、前のよりも少し高いものにしてもらいたいです。」
この婦人、案外頭がいいのかもしれない。
それを聞いたご主人とおじさんはにっこり笑って
「ご用意しますよ。聡明な
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