第1話 荒治療

「ああ、あなたがルベルトさんですか!」

40代ぐらいの女性が木の古家の近くでそう話しかける。

「はい。本日はご依頼ありがとうございます。たしか...照明の不具合についてでしたよね?」

女性に駆け寄り猫を下ろし確認する。

「あら、猫ちゃん。かわいいわね。

そうなんですよ。照明の照石が点滅するようになっちゃって」

しゃがんで猫の頭を優しく撫でて女性は家に案内する。

「失礼します。レビットさん。ねこは大丈夫ですか?」

「?

ああ、家ね。大丈夫よ、入れてくれて」

その返事を聞くとほっとしたようにねこを抱き抱えて家に入り、女性のあとを追いかける。

「ここの照明がね...」

廊下の壁についている照明を指さして女性がそう言うと

「ガラスのカバーを取りますね」

と言ってねこを下ろしてガラスのカバーを上に抜く。中には鉄の皿に剥き出しになった照石が置いてあった。

「照石はまだ大丈夫そうですね」

「そうなんですよ!照石はちょっと前に変えたばかりですし」

「そうですか。」

少し考えた顔をしながら鉄の皿を取り出して奥の石を確認しだす。

「原因はこっちの発光石かも知れませんね」

「発光石?」

「光を反射する石ですよ。少し濁ってきてますし、これを取り替えた方がいいかもしれないですね。」

奥の壁に沿って取り付けられている薄い石を指先でぽんぽんと叩く。ねこは『もう僕はいらないね』と言わんばかりに家の外に出ていく。それを目で追いながら会話を続ける。

「そうですか。」

「あ、でも、直せるか試してみますね」

コートから青い小石を取り出す。

「それは...閃光石ですよね?」

「そうです。これで直らない場合もあるのですが、廊下の灯りがつかないままだと危ないですよね。本日中に対応した方が良いと思うのでこの方法を使うことにしました。これで直らないようなら新しいものに交換した方がいいと思います。

...すこし、目を瞑ってください」

そう言うと女性は頭を後ろにして目を閉じた。頑丈なバックからゴーグルとトンカチを取り出した。ゴーグルをはめて鉄の皿があった場所に閃光石を置いてトンカチで強く叩くと、石がピキっと音を鳴らし割れる。それと同時に目が壊れそうなほどの光を放つ。

数秒後、青い小石は灰色の小石に変わり、奥の発光石の濁りは変わらない。


ゴーグルを外してしょんぼり顔をしたご主人の元に家の外から駆け寄る。


「荒治療すぎましたね...」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る