出会い
それから、数日後。
「瑤華(ようか)様、やっと天涼(てんりょう)ですね」
ようやく半分ですよ、と鳶色の髪の少女が言った。
「ずいぶん人が多いのね」
多くの人で賑わっている露天商。右を見ても左を見ても、人で溢れている。
腰まである長い桜色の髪の少女は、大きな翡翠色の瞳を丸くした。
「ここ、天涼には外国からの商品が入って来ますからね」
長身の青年は鋭い目を、中央の白い大きなテントの方へ向ける。
「見せ物小屋が、あるようです」
「咲耶(さくや)、見せ物小屋とは?」
「姫様が、好むようなものではないでしょう」
そう言って、咲耶は肩を竦める。
「俺は、馬車を宿に預けてきます。気分転換に、観光でもしていてください」
咲耶は手綱を掴むと
「尚香(しょうこう)、姫様のことを頼む」
「はい、お任せください」
「あ、これ可愛い」
「瑤華様、走ると迷子になりますよ」
「大丈夫よ。小さい子供じゃないんだから」
「なら、いいですけど」
「尚香は、心配性ね」
青色の硝子で作られた髪飾り、精巧な模様が掘られた小物入れ。
「どれも、見たことないものばかりですね」
「あ、これは」
瓶の中に入れられている透明な丸い球を見て
「竜玉に似ていますね」
瑤華が言った。
「でも、ちょっと小さいような」
「お嬢ちゃんたち、飴玉を見るのは初めてかい?」
「あめだま?」
「食べ物ですか」
首を傾げる瑤華と尚香を見て
「飴玉を知らないとは、よっぽどの田舎から出て来たんだな」
店主は二人に瓶の中の飴玉を渡すと
「よし、特別サービスだ」
「綺麗ですね」
「食べるのがもったいないわ」
「こうやって、口の中で溶かすんだ」
店主が食べるのを真似て
「甘い」
「初めて食べますね」
ありがとうございます、とお礼を言って店を離れる。
「やっぱり、南部から見たら西部の人間って田舎者なのね」
回りを見てみれば、おしゃれな服ばかり。
「動きやすい服、選んだつもりなのに」
女の子らしさにも気を配るべきだった。
考え込んでいる瑤華に
「瑤華様、危ない」
尚香の声。
「きゃっ」
前から歩いてきた少年とぶつかり、倒れそうになった瑤華を尚香が支える。
「気をつけろよ」
印象的な赤い瞳。
「ご、ごめんなさい」
少年は鼻を鳴らすと、早々に去ってしまった。
その姿は、急いで逃げるようにも見える。
「瑤華様、大丈夫ですか」
尚香は唇を尖らせると
「あいつ謝りもしないで」
「いいのよ。考え事していた私も悪かったわ」
こうして、瑤華と尚香は宿へ向かった。
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