7-7

「毒を買って何をするつもりだ。また俺たちを殺すつもりか」

 店を出るなりエリオットは言った。

「誰に盛るかは大きな問題だ」

「あいつ何しにここに来たんだよ」

 歩き出す。行き先は特に決めていないが、ヴァレンシュタインの泊まっている屋敷になるだろう。

「ニュルンベルクの為ではなさそうだな。惑星の書を私から奪った。そこまでなら治安維持の線も捨てられなった。薄い線だが惑星の書はあるべき場所に戻り、街からは魔女が消える。平和だ。だがどうやら奴はお前を殺そうとした。そうなると誰が次の魔女に備える? 誰もいない。他の魔女を呼ぶか? だが魔力を魔力で制するのは次の厄介を生む」

「つまりなんだよ」

「街から私もお前も消えれば、惑星の書だけが残る。もしそれにヴァレンシュタインが手をかければ、もう奴を止めるものはいない」

「ヴァレンシュタイン卿は力を欲したのか」

「奴は魔力に溺れたのかもしれん。毒を調達したのも、その計画の一部だろう」

「計画って?」

「それを確かめる。そこを抑えれば、私たちにも活路が見出せるかもしれない。そこが奴の弱みだろう」

 屋敷へと急いだ。


   ■


 双子の天使館は北京人の男が言ったとおり、すぐに見つかった。ヴァレンシュタイン以外にも数組の来賓が泊まっているらしく、館の前には警備兵が立っていた。

「正々堂々と正面から行くか?」とエリオット。

「お前は本当に嫌味な奴だ。モテないだろ」

 アンナは腕を組みなおした。

 はす向いの宿屋の前で時間潰す振りをしながら、様子を窺っていた。

「上から行くぞ」

 アンナは言った。

「上?」

「屋根だ」

「登るのか?」

「四軒隣の家が屋根を修理してる。梯子があるだろ。お前はそこから上がれ」

エリオットは目線をずらす。梯子があった。

「あんたは?」

「私は飛び乗る」

 超人だ。

「どうした?」

 返事をしないでいるとアンナが言った。

「いや」

「疲れてるな。さっきの薬、飲むべきだったんじゃないか」

「飲んでも同じだよ。俺はもう疲れ切った」

 梯子へと歩いて向かう。

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