3-1

「どうしてあんなことを」

「お前は豚か。さっきから鼻息が荒いぞ」

 荷物を持ち、街の外にある厩まで歩く。

 窓にかけているランタンに火が灯り始めた。街は暗くなり始めている。

「それにどうして俺があんたの荷物まで持たなくちゃいけないんだ」とエリオット。

 おかげで両手が塞がった。

「騎士道精神って奴だろう。有名な精神だ。誰もが憧れるし、お前はそれを手に入れた。私の荷物と一緒にな」

「俺は騎士じゃない。商売人だ」

「ラウファー商会は潰れたはずだ」

「まだ生きてる」

「時間の問題だ」

 街の城壁まで来た。一日の終わりを告げる教会の鐘が鳴った後だ。既に街の扉は閉じられている。門番が扉の横に二人。さらに夜警が見張り台で仕事にあたっていた。

「ヴァレンシュタイン卿から話が来ていると思う。アンナ・ファン・デ・ブルグとエリオット・ラウファーだ」

 アンナが門番に話しかけた。石弓を持ち、腰には剣を下げている。

「話は聞いてますぜ。今、開けますのでお待ち下させぇ」

 門番は仲間に声をかけた。しばらくすると、街を守る扉がゆっくりと開いた。僅かな隙間だ。

「全部開けると噂になっちまいます。ちょっとの隙間ですが、お二人なら通れると思いますぜ」

「ありがたい」

 アンナは門番に金を渡す。

「どうも。うへへ」

「なんだか貴族になった気分だ」

 エリオットは歩き出す。

「馬鹿な男だ」とアンナ。

「今、なんて」

「ありがたいお言葉をいってやったんだよ」

「聞くのはやめとく」

 二人は身体を横にして、扉の隙間を通り抜けていく。

「戻って来る時は昼間にしてくだせぇ。夜に来られても外から人を入れることはできませんぜ」

 二人の背中に声をかける門番。

「明るいうちに戻るよ」

 アンナが無言なのでエリオットが代わりに返事をした。

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