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市庁舎一階に戻り、アンナと合流する。アンナはエリオットが何をしていたのか、と聞いてこなかった。単純にエリオットの行動に興味がないらしい。
ヴァレンシュタインとハンスは、すぐに屋敷へと戻っていった。
「これからどうする?」とエリオット。
二人は市庁舎の前に立っていた。
「ドミニクの部屋に行く。何か手がかりがあるかもしれない」
「さすがだな」
「舐めてんのか? こっちは高利貸しだ。ロンドンまで取り立てに行ったことだってある」
「それじゃまた教会か」
歩き出した。
「信仰心がない。キリスト教徒なら一日に百回行っても、まだ行きたいって言うはずだろ。篤い心を持て、軟弱者」
「極々一部だろ。教皇庁のやり方が好きな奴のほうが少ない。あれは腐ってる」
街に教会の鐘が響く。正午だ。
■
都市兵が囲むフラウエン教会に戻った。周りには野次馬。持ち場を奪われた物乞いたちは広場の隅に追いやられていた。群集を抜ける。既に話はついていたのか、エリオットとアンナは中へ入ることが出来た。
「ドミニクの部屋に案内して欲しいんだが」
アンナは回廊で、祭服を纏った男を捕まえる。この惨劇に疲れていた顔ようだが、アンナの顔を見ると精気を取り戻したようだった。
「アンナさん。無事だったんですね」
「お前も生きてて何よりだ」
「知り合い?」とエリオットが聞いた。
「昔の客。ローレンツだ。お前と違ってきっちり返した」
「初めまして」とローレンツが挨拶をしてきた。
「エリオットです。どうも」
それからアンナを向き、「聖職者から利子を取ったのか?」と質問した。
キリスト教にあって利子という制度は悪だ。
「真実を言うはずないだろ。察しろ」
アンナは答えてくれない。「ローレンツ、案内だ」
どうやら利子は取ったようだ。
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