第6話 俺とお風呂と14歳とお風呂

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 学校から帰ってきた。


 クリスマスイブは休校日にしてくれないかなほんと。

 朝から学内に沸いた急造カップルを一々視線で呪うの疲れるんだよね。


「セン、起きてるか?」


 部屋の扉を開ける。


「あ、戻ってきたかトール! 妾お腹すいた! あと湯浴みがしたい!」


 コタツに包まって俺の漫画を読んでいたセンが俺を見て起き上った。

 よし、登校する前に言いつけた事を守ってたみたいだな。

 大人しく部屋に居てくれたか。


「ああ、爺ちゃん近所のジジババとカラオケに行ったらしいから今なら風呂入っても大丈夫だぞ。その間に飯作ってやるよ」


 婆ちゃんが死んで寂しそうだった爺ちゃんが最近覚えた趣味がカラオケだ。

 老人会の人達と週3ぐらいで行っている。

 なんでも会長候補だとかなんとか。


「やった! でも、妾一人で湯浴みできない……入れて欲しいなー。入れてくれないかなー」


 ええい、チラチラと俺を上目で見るんじゃないよ。


「わかったわかった。入れてやるよ。でもお前俺に胸触られるの嫌なんだろ?」


 お前が嫌がる基準が分からん。

 そういやコイツ、裸を見られる事に関しては別に嫌がってなかったな。


「胸はダメ。触っちゃいけないところはもちろん触っちゃダメ。これ常識でしょ?」


 どこの裸族の常識なんですかねぇそれは……。


「よく分からんから髪だけ洗ってやるよ。体はなんとかしろ」


 こう見えて面倒見の良い男なのだ俺は。

 従兄弟にちんまい奴らを何度か風呂に入れたこともあるしな。


「か、髪はギリギリなんだなーこれがー」


 どないせぇっていうんじゃ。

 髪がダメな理由がわからん。


「あーもう、じゃあ風呂やめようぜ」


「あ! 嘘ごめん! 髪を洗ってくださいお願いします!」


 素直にそういえば良いんだよ。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「あーさっぱりしたー! ご飯も美味しいし異世界ってすごいな!」


 髪にタオルを巻いて俺の作った簡単な飯をモリモリ食べるセン。

 卵焼きとウインナーぐらいでそこまで喜ばれるとは思ってなかったぜ。


 風呂は特に言う事は無い。

 全裸の幼女の髪をわっしゃわしゃと洗ってやって、浴槽に100数えるまで浸からせただけだ。

 俺は別にロリコンでは無いので。無いので。

 ん? この歳の子だとロリコンでも無いのか?

 なんだっけ、ペドだっけ。


「んじゃ、いろいろ聞きたいことがあるんだ説明してくれ」


 まぁ良いや。それより考えなきゃいけない事が沢山ある。

 なんだかんだで半日保護しちゃってたからな。

 そろそろコイツを警察に連れて行くかどうか決めないと誘拐犯になっちまう。


 とは言ってもだ。

 あの砂の化け物を目の当たりにしちゃったから、コイツの事情が俺の考えてる常識とかけ離れてる事はもう理解している。

 問題はその事情に俺が何をしてやれるか、だ。


「んー? 妾はこことは違う世界から来たんだ。こう見えても魔王なんだぞ?」


 ……まぁ、何度か『こっちの世界』だの、『異世界』だのって単語が出てたからな。

 そこに関しては、驚いては居るもののそこまでじゃない。

 昨今のラノベなんかは空前絶後の異世界ブームだ。もしかしたらなー程度には俺も考えてた。

 まぁ、本気じゃなかったけど。あるわけないって思うじゃん普通。

 異世界なんて。


 んで、その次の単語がちょっと気になる。


「魔王?」


「そう! あ、このタコみたいなの本当に美味しい! トールもっと!」


 良いから話を続けなさい。


「お前がちゃんと説明できる良い子なら作ってやる。んで魔王って、魔王か?」


「魔王だよ?」


 RPGのラスボスでおなじみの?

 いや、最近のRPGで素直に魔王がラスボスしてる奴ってそういや少ないな。

 諸悪の根源。

 黒幕だったり噛ませだったりで大忙しのあの魔王?


「なんだ。お前悪い奴だったのか」


「は? なんで魔王だったら悪い奴になるの?」


「だって魔王つったらあれだろ? 世界征服を企んでたり、人類殲滅を目論んでたりする魔物の王様」


 魔の者って時点で悪い奴じゃん。


「なんかすっごい偏見持たれてる気がする」


「違うのか?」


 あれ? 俺もそこそこオタクだと思ってたんだけど。


「魔王っていうのは、魔族の住む国を治める者のことだよ? 自分とこの国の統治でみんな大忙しなのに、わざわざ世界征服なんかするわけないじゃん。土地があっても物資も食料も無いとかそれどんな苦行?」


「はぁ」


「それに人類殲滅とか。人類がどれだけ居ると思ってんのさ! そんな目的で他国に宣戦布告なんかした日には、逆に攻め込まれて国が滅ぶよ!」


「異世界のことはわからんが、そうだろうな」


「まぁ、特に何もしてないのに突然攻められて、滅んだ国の魔王がここに居るけれど……」


 へ?

 滅んだ? お前んとこ?


「それは、なんでだ?」


「なんかさー。良く分かんない理由でいちゃもん付けられてさー。大軍で包囲されてさー。ウチって自慢じゃ無いけどちっさい国だったのね? 父上もご立派に戦われてたんだけども、勇者とか言う頭おかしい奴らが少数で国に入り込んでて、あっという間に父上殺されて、んで軍も国民も散り散りになっちゃって……それが一年前」


 お前、そんな重い話をそんなアッサリ言わないでくれる?

 めちゃくちゃ反応に困るんだけど。


「それで、セリーナーーーーーあぁ。妾の従者のメイドなんだけど、すっごい頭が良いのね? そのセリーナに連れられて国を脱出して、異界の門っていう遺跡まで逃げてたの。他の従者もあと二人居てね? ユウとユカっていう、妾と同い年の剣士と暗殺者が」


「センと同い年って、大丈夫かそれ」


 めちゃくちゃ幼いだろそれ。

 聞いてる分だと女しか居ないみたいだし。


「ん? トールと同じぐらいだよ?」


「は?」


 何が?


「だから、妾とユウとユカは14歳」


 んん?


「誰と、誰が?」


「妾とユウとユカ」


 あれ?


「セン、お前いくつ?」


「何度言わせんだ! 14歳だってば!」


 は?


「はあああああぁああああああ!?」


 俺の目の前にいるこの銀髪褐色ロリが!?

 14歳!?

 俺と二つしか違わないっていうのか!?


「って! お前さっき!」


 一緒にお風呂入ったじゃんか!!

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0から作ろう魔王軍! 〜常勝無敗の暗黒騎士伝〜 不確定ワオン @fwaon

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