第4話 俺と雷と魔術と触手
「な、何なんだよあれぇ!」
「トール来てる来てるぅ! もっと速く!」
走る走る。
早朝の森をセンを抱き抱えて、木や草や枝を掻き分けて全速力で走る。
慌てて茂みから引っ張ったせいで所々穴の空いたカーテンにぐるぐる巻きのセンがやかましい。
『対象に警告。暁の魔王を引き渡してください。私は怪しい者じゃありません。型式番号44326号
「怪しさしか感じないんだけど!?」
背後から迫り来る巨大な人型の何かが、木々を薙ぎ倒しながら追ってくる。
『対象に警告。十秒後に貴方も捕縛対象とみなします。私に搭載されている性的拷問兵装は対女性用ですが、男性にも使えないわけではありません』
「わぁああああ! 何されんの俺ぇ!?」
よく分からないんだけどお尻が怖い!
『現時点をもって貴方を捕縛対象とします。大丈夫です。痛みの先には快楽が待ってます』
その先は一生知らなくて良い場所だふざけんな!
「せ、セン! お前が逃げてるって言ってたのアレのことか!?」
「ずっと追われててやっと逃げ切ったと思ったのになんかもっと怖いのが追って来たぁ! 助けてセリーナ! ユウ! ユカ!」
センは俺の頭の横で泣きわめく。
人の話聞いちゃいねぇ!
『小マナ転換炉、稼働。人型魔族捕縛魔術兵装、【
「嫌ぁ! 何そのいかがわし過ぎる名前の兵器! 妾に何する気!? やめてぇ!」
完全に同意だ! くそぉ唸れ俺の
「ヒィ、ヒィ! セン! 頼むから少し説明してくれ! アイツは何なんだ!」
「何だって言われても
「だからまずゴーレムって何なんだよ! 人工精霊って何の事だ!」
チンプンカンプンだ!
「説明は後でするから今は逃げてぇ! 妾がお嫁に行けなくなっちゃう!」
「言われなくても逃げらぁ!」
俺もお嫁に行けなくなっちゃう!
『対象の言動を全否定。逃すわけがありません』
「わぁああ! なんかぶよぶよしたふっとい触手が来たぁ!」
触手!? 触手って何!?
疑問に思う間も無く、俺の左頬を何かが掠めて通り過ぎた。
ヌメヌメとした水気のある透明な太い触手。
それが数えられるだけで4本、ビタンビタンと波打ちながら地面を這い回っている
まるで意思を持つかのように動き回りながら俺の目の前にある太い木の幹に絡みつき、真ん中からバキバキとくの字に折り曲げた。
「う、うわ」
血の気がサーっと引いていく。
し、死ぬ! なにあれ死んじゃう!
「あわわ、
「何!? 聞こえないんだけど!?」
こっちは必死に逃げてるのに何遊んでんだこのチビ!
「いいから走って! あとちょっと眩しいよ!」
俺に抱き上げられたままのセンが砂巨人に向けて手をかざす。
眩しいったってこんな朝方に何をーーーーーー、
「雷光、
「うおっ、まぶしっ!」
耳を
「わぁ! 近くに放ちすぎて耳がキーンってするぅ!」
「ああ!? 何だってぇ!?」
耳鳴りがひどくてお前が何言ってんだか聞こえないんだけど!
つか何だ今の!
「あ、やった! 右足壊した! 今の内にさっさとアイツから離れよう! トール頑張れ!」
「俺もうわけわかんなすぎて泣きそうなんだけど! お前今何したんだよ!」
「初級の雷撃の魔術でアイツの足吹っ飛ばしたの!
魔術? 雷撃?
「ちっくしょうお前が何言ってんのかさっぱり分からん! 後でちゃんと全部説明しろよな! 俺のロータリーエンジントップギアぁ!」
とにかく今は俺の家に向かって全力疾走する事だけを考えよう!
「わぁ! ちょっ、ちょっと待って! 頭ガクガクし過ぎて気分がーーーーーーおえぇ! は、吐きそう!」
「お前吐いたら怒るからな!」
お袋と親父になんて説明しよう!
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