十四 潜入! ネオ・デレーラ城。

 ガサリ。ガサリ。下草を掻き分けて、薄暗い森の中を歩く一団がありました。言わずと知れたカリン達です。


 ご休憩のつもりが、ガッツリと熊のベアー宅で過ごす事になってしまったカリン達一行。ギラギラと白く輝いていた太陽は、赤く染まって西に沈み掛けていて、鬱蒼と茂った森に帳が降りようとしていました。


「参ったでち。迷ったかもしれないでちよ」


「「ええっ!?」」


 カリンのメイド仲間シルビアと、ベアー宅に不法侵入をし、尚且つ置いてあった蜂蜜を食べてしまった窃盗犯のネズミっ娘、ミイが驚きの声を上げます。何しろ、通って来たルートを大きく外れてベアー宅にお呼ばれされたのですから、迷ってしまうのも当然といえました。


「ん? 姉ちゃん達何処へ行きたいの?」


 カリン達の最後尾で、腕――いえ、前足を頭の後ろに回して悠々と付いてくる小熊のブルーインが言いました。


「南の海岸に行きたいのでちよ」


「ああ、だったらソッチじゃないよ。こっちこっち」


 ブルーインは、海岸方面と思しき方向を指差しました。


「有難うでち。助かったでちよ」


「でも、どうしてブルーインくんが付いてくるの?」


あんちゃんから、シカンしろって言われてるんだ」


「し、視姦?!」


 ブルーインの言葉に、シルビアは大事な所を腕で隠します。その際、形の良い胸が僅かながらたゆんとしました。が、監視の間違いかと思われます。


「うん。姉ちゃん達に何かあったら助けろってさ」


「それは嬉しいけど……ブルーインくん戦えるの?」


「何言ってるの姉ちゃん。ボクあんちゃんより強いよ」


 兄と聞いてシルビアは中二熊のオルソを思い浮かべ、ああ確かにアレよりは強いよねと思っていました。


「ウルス族にも協力して貰えるとは、心強い限りでちよ。お菓子を奮発しなきゃならないでちね」


 ブルーインはやったあ。と、はしゃぎまわりました。作るのはカリンではありませんので大盤振る舞いです。


「ところでカリンさん。私は一体何をすれば良いのでしょうか?」


「奴等の位置を教えてほしいのでち。どの建物に居て、その建物はどんなモノか。詳細を聞きたいのでち」


「はあ」


「心配しなくても、戦いには参加しなくて良いでちよ。わたち達でやるでち」


「ボクもやるよ」


 小熊のブルーインは前足同士をパンパンと叩きながら言いました。お菓子をご馳走してくれると聞いて、やる気満々の様です。


「アテにしているでち。……さあ、海岸が見えたでち。皆揃っているようでちね」


 砂浜には焚き火が起こされ、それぞれが夕食の準備に取り掛かっているのが見えました。ただし、準備をしているのはお店のマスターのみで、エリザ王女は体育座りで海を眺めていて、ドラゴンコンビは焚き火を眺めてボケっとしているだけでした。



「お、お帰りカリンちゃん。何か収穫は……」


 お店のマスターは、カリン、シルビアと視線を移し、次に見た人物で視線移動が止まります。


「マスター。何をボケっとしているでちか? マスター。マスター!」


「お? おお、すまねぇ。つい……な」


 何がついなのでしょうか?


「で、何だい? カリンちゃん」


「焦げてるでちよ」


 カリンの指摘に、お店のマスターは慌ててフライパンを火から外しますが時既に遅しでした。


「あっちゃぁ、コイツはもう駄目だな」


 お店のマスターの側に置いてあった麻袋に、まっ黒焦げの食材を入れます。その様子を見ていたカリンに、エリザ王女がザザザッ。と、走り寄ってきて抱き付きました。あまりにも強く抱きしめるので、大きな胸部が潰れたシュークリームの様になっていました。


「な、なんでちかエリザ」


「カリンさぁん、マスターさんって非道いんですよ。私が調理を手伝おうとしているのに、追い出すんです」


 体育座りで海を眺めていた理由は、お店のマスターによって調理場を追い出されていたからでした。


「い、いや。ちがう、違うんだ。カリンちゃん」


 カリンからの視線を感じたお店のマスターは、先程焦げた食材を入れた麻袋をカリンに見せます。


「手伝ってくれるのは有り難いんだが、手に入れた食材の殆どがこう・・なっちまって……」


 袋の中身は原型が分からない程焦げ付いたナニカで一杯で、炭化した香りが風に乗ってカリン達の鼻を擽ります。


「うっわ。何をどうしたらこうなんの?」


 シルビアの直球台詞に、エリザ王女の肩がピクリ。と、震えます。袋の中身をよくよく見れば、底が抜けた鍋なんかもありました。


「エリザ。あんたまさか調理に魔法を使ったでちか?」


 ピクリ。カリンに抱き付いたままのエリザ王女の肩が震えます。カリンはやっぱりか。と、確信しました。


「だっ、だって魔法で調理する料理人も居ると聞きましたわ。だから私は彼等に習って、こうして――」


 簡易テーブルの上に置いてあった何かのお肉を串にぶっ刺します。


「――こうしてっ」


 香辛料を適量振り掛けます。


「こうっ!」


 ぼんっ。と、何かのお肉は消し炭になりました。魔法の腕は超一流でも、調理の腕は壊滅的な様です。


「……エリザは調理禁止でち」


 カリンからのお達しに、エリザ王女の目尻には光るモノがありました。確かに魔法を用いて食材を切ったり焼いたりする調理人もこの世には居ますが、アレは調理免許ライセンスを持っているプロであって、素人が見様見真似でどうこう出来るシロモノではありません。ましてや、王族であるエリザ王女は、料理を作った事もありませんので当然の結果といえるでしょう。


「ところでカリンちゃん。この方達は……?」


「ウルス族のブルーインくんと、ラッテ族のミイさん。森の中で出会ったでちよ」


 カリンはその経緯をかいつまんで話します。


「……なるほどな。龍の背に乗ってきた一団……か。確かに怪しいな」


 赤龍は魔王崇拝の者によって懐柔させられたとみていますので、やって来た一団が魔王崇拝者の可能性が高いのです。


「いい匂いだね」


 小熊のブルーインが調理台を覗き込みます。


「おお、姫サンがデカイ魚を釣ってくれてな、今ソテーしている所だ。あっちじゃ串焼きにしているよ」


 お店のマスターが焚き火を指差すと、ブルーインのお腹がググゥ。と鳴りました。


「はっはっは。良いタイミングで鳴ったな。んじゃ、ゲストも居る事だし、メシを食って作戦会議といきましょうや」


「やったあっ!」


 小熊のブルーインは大喜びしました。



 僅かに残る陽の光が、もう間も無く海の彼方に吸い込まれます。ザザン。ザザザン。と寄せては返す波。その青から黒へと変貌を遂げてゆく波打ち際で、女の子が一人膝を抱えて黄昏ていました。言わずと知れたエリザ王女です。


わたくしはただお役に立ちたかっただけですのに、あんな事言わなくてもいいじゃありませんか」


 膝に顎を乗せプクッと頬を膨らます姿は、なかなかに可愛いモノがあります。


「姫サン……」


「……なんですの? わたくしは要らない子なのでしょう?」


「誰もそんな事は言ってないゼ?」


 お店のマスターはそう言いながら、エリザ王女の横に座って、王女と同じく海に視線を向けました。


「姫サンの思いは十分に分かってるつもりだ。だけどな、食材に対する感謝ってのも忘れちゃダメだ」


「感謝……ですか?」


「ああ。確かに、魔法を使って料理を作る調理人が居る事は知っている。しかしそれは、オレからしてみれば邪道だ」


 エリザ王女は足を崩して、お店のマスターの横顔を見つめます。膝で圧迫されて窮屈だった王女のおっぱいがたゆん。と、解放されました。


「自分の手で捌き、料理として完成させる。それが食材に対しての感謝だとオレは思っていてね、だからウチの店じゃ魔法は使っていない。でも、美味いだろ?」


 お店のマスターの言葉に、エリザ王女はコクリ。と、頷きました。王女の頭の中に、ふわりと柔らかい食感で、蕩ける様な甘い香りが鼻を抜けてゆく、あの至高のひとときの記憶が蘇りました。マスターのお店で出されるメープルワッフルは、週四で食べに来る程の美味しさなのです。


「だから魔法なんてモノに頼らずに、自分の手で作って貰いたいんだ」


「自分の手……」


 エリザ王女は、突き出た大きな胸の前で手を広げてそこに視線を落としました。そしてその手の片方を視界外から現れた別な手が掴みます。トクン。と、王女の心臓が高鳴っ――たかどうかは定かではありません。


「姫サンは凄い人だ。オレなんかが理解出来ない様な魔法を扱える。呪文の詠唱なんてモノ、オレなら覚えらんねぇよ」


 呪文詠唱。とはいいましても、彼女の場合はモジモジしながら喘いでいるだけです。


「それを全部覚えている姫サンなら、料理なんてモノすぐに覚えれるさ。オレで良ければ教えてやるよ」


「ほ、本当ですか?!」


「ああ、姫サンさえ良ければな」


「あ、有難う御座いますマスターさんっ。わたくし頑張りますっ」


「お、おう」


 シッカリと握られたエリザ王女の柔らかい手と、焚き火の炎に照らされてキラキラと輝く瞳に、お店のマスターのハートが撃ち抜かれたのは言うまでもありませんでした。




「龍の背に乗ってやって来た一団は、街の中心部に建つネオ・デレーラ城に居座っています」


 食事を終えて一息ついた頃、カリン達は魔王崇拝者と思しき一団に急襲する算段を始めました。


「厄介な場所に陣取ってんな」


「それは間違いないんでちね?」


「ええ、私はソコに来る様に。と、言われましたので」


 カリンはフム。と、考え込みました。魔王崇拝者とドンパチする分には構わないのですが、街を戦場とするのにははばかりたい所です。


「王様はどうしているのでちか?」


「噂でしか聞いてないのですが、なんでも民を捨てて国外に出た。とかで……」


 カリンはしばし考え込みました。


「どうするんだ? カリンちゃん」


「正面突破でちね」


 カリンはニヤリ。と、悪役の顔を披露したのでした。


 カリンが考えたプランはこうです。深夜、お城の正面から堂々と近付きます。当然、見張りが居るでしょうから、そこでエリザ王女の出番です。ネズ耳カチューシャを付けた王女が奉仕者のフリをして見張りに近付き、眠りの魔法を掛けてやります。王女の呪文詠唱はアノ時の声と同じですので、見張りは欲情していると思い無警戒で眠りの魔法を受け入れるに違いありません。頬を赤らめてモジモジしてやれば尚良しです。


「嫌ですよそんな役!」


 即却下されました。他の人達は、なかなかに巧みな配置だ。と、感心していましたが、『喘ぎの魔術師』と、いう二つ名を返上したいエリザ王女にとって不服な様です。


「私がやろっか?」


「アンタじゃダメでち」


 一同のダークホース。シルビアが名乗りを上げましたが、カリンによって即却下されました。一応彼女も魔法を扱えますが、『音属性』という非常に珍しい系統の魔法で、目標を内部から破壊する事が得意です。そんなモノを使った日には、永眠する事疑いありません。何より色気がありませんので却下となりました。


「ではご主人様マスター。私が」


「ミュウと黒龍さんは、相手方の龍が現れた時に引き付けて欲しいでち」


 龍を相手取るには龍が最適なのです。現在こちらには二匹の龍が居ますので、互角以上の戦いが出来るでしょう。となると……適任はエリザ王女しか居ません。


「お願い出来ないでちか?」


 カリンの頼みでも承諾しないエリザ王女。首を横にフルフル。と可愛い仕草で振って拒絶します。


「じゃあ、これならどうでちか?」


 カリンは第二プランを王女に提示します。カリンの第二プランとはこうです。


 見張りに近付くまでは変わりがありませんが、矢面に立つのはラッテ族のミイさんにやって貰います。彼女がモジモジと発情している間に、その後ろに隠れているエリザ王女が眠りの魔法を掛けるのです。シルビア以上エリザ王女以下のスタイルを持つ彼女ならば、見張りもムラムラと油断するに違いありません。


「戦う事は出来ませんが、それくらいなら……」


 ミイの承諾は得ました。後はエリザ王女だけです。一同はエリザ王女をジッと見つめて、無言の圧力を掛けてあげます。


「わっ、分かりましたわよ。やれば良いのでしょう? やれば」


 圧力に負けたエリザ王女は、投げやり的に承諾しました。これで入口の見張り対応は完璧な筈です。


「で? 中の奴等はどうするんだい?」


「極力、物音立てずに始末したい所でちが……」


「それなら良いモノがありますよ」


 言って黒龍は『何処からともなく』からソレを出しました。どうだ、驚いたか。と、言わんばかりのドヤ顔の黒龍の手の上に乗った、逆三角形の形を成した白と紺で迷彩塗装されたソレを見た一同をざわつかせます。


「これって……」


「そうでちね」


「疑いありませんわ」


「パンツじゃないかっ!」


 ミュウの拳が黒龍の頭を上から下へと打ち抜きました。


「す、すみません。コレは島の女の子達が使っていたヤツでした」


「「「使用済み!?」」」


 むしろそっちで驚きました。


 黒龍は縞パンを丁寧に折り畳んで『何処からともなく』へ仕舞い込み、再び『何処からともなく』から別なモノを取り出します。


「こっちが本命です」


 取り出されたソレは、紛れもなく武器でした。先程のもある意味武器と言っても過言ではありませんが、恐らくこちらの方が殺傷能力は優れていると思われます。


「クロスボウでちか」


「その通りです」


 クロスボウ。弓の一種で、専用の矢を板ばねの力で弦により発射する武器です。引き金を持っていて狙いが定めやすい。と、いう特徴があります。


「これならば静かですし、楽に仕留められる筈です」


 黒龍は弦を引き、矢をレールにセットして引き金を引きます。ガシュリ。と音がして放たれた矢は、行為・・室の壁面に突き刺さりました。


「これなら私にも出来そう」


 言って伸ばしたシルビアの腕をカリンは掴みます。


「出来ればシルビアには関わって欲しく無いでちよ」


「え、どうして?」


「今回は魔物と戦う訳じゃないでち。相手は人間なんでちよ?」


 シルビアはまだ十六です。人生が始まったばかりの無垢な彼女に、カリンは人を殺める重荷を背負わせたくは無いと思っていました。そういう意味ではエリザ王女も同じなのですが、体型も能力も攻撃的なので致し方ない所です。


「…………分かった」


 カリンの想いを分かってくれた様で、シルビアは渋々と頷いてくれました。その様子を一同は柔らかな表情で見ていたのでした。



 ネオ・デレーラ城。ラッテ族が住まうスクィーク王国の中心部に聳り立つ白亜の建物で、高さは五十ルメト幅は百ルメトの建造物。街中にはあまり高い建物が無い為に、街の何処からでも見えるようになっています。城の周囲には水を湛えた堀があり、跳ね橋によって入城を制限しているようです。その橋の袂にカリン達一行は居ました。


「でっけぇなぁ」


 お店のマスターは、頭まですっぽりと被ったローブをクィッ。と持ち上げて呟きます。


「やっぱり見張りが居ましたね」


 エリザ王女はラッテ族のミイさんの陰から橋を見つめて呟きます。見張りは黒っぽいローブを纏い、手には槍を持っていました。


「予定通りいくでちよ」


 そう言ってカリン達は歩みを進めます。現在、カリン、エリザ王女、お店のマスターは、灰色のボロいローブを頭からすっぽりと被り、奴隷商のフリをしています。これならば相手に怪しまれないだろう。と、いう思惑からですが、傍から見れば怪しい事この上ないです。現にお城の入口で見張りをしている者の警戒心が、最高レベルに上がっています。


「あ、あの。これ恥ずかしいんですけど……」


 ラッテ族のミイさんは、その役を嫌がったエリザ王女の代わりとして、呪文詠唱喘ぎ声の隠れ蓑で同行していますが、流石にそのままでは色気が無いので黒龍が用意した、限界まで正面・・にスリットが入ったスカートと、限界まで開かれた今にも溢れ出ちゃいそうな胸元が大きく開いた上着を着ていて、ちょっとした動きで限界を突破しそうなコーディネートをしています。行為・・室から出てきたミイを見て、エリザ王女は承諾しなくて良かった。と、思いました。一方で、お店のマスターが前屈みになりながら、猛り狂う暗黒面との戦いが始まるというハプニングもありました。


「とても似合ってますわよ」


 やっぱり止める。などと言い出さぬ様、エリザ王女は心にも無い事を言いました。


「ああ、すっごくキレイだ」


 ミイの横に並ぶお店のマスターは、ほんの少し前屈みになりながら双丘渓谷をガン見して言いました。


「お喋りはそこまででち。やるでちよ」


「待て! こんな夜更けに何用だ!?」


 カリンが言い終わるとほぼ同時に、見張りから誰何の声が掛かりました。


「言付け通りに追加の娘を連れてきたんでちよダンナ」


 カリンは声色を低くして答えました。


「何? 追加の娘だと? ……そんな話は聞いていないがな」


「なんでも、昼間来た娘じゃ物足らないからってぇ話でちよ。だから急遽、グラマラスな娘を見繕って来たんでさぁ」


 グラマラスと聞いて、見張りの男はミイに視線を向けました。今にも限界を突破しそうなその風貌に、ゴギュリ。とした音と共に男の喉仏が上下しました。


「と、兎に角確認して来るから、ここで待て」


 言ってその場を離れようとする男にカリン達は焦ります。と、その時でした。


「ぁ……んんぅ。はぅ……ん……」


 突然耳に届いた嬌声に、男は驚き慌てて振り向きます。


「な、なんだ? どうしたんだその娘は?」


 背後で呪文の詠唱をするエリザ王女に合わせ、ミイさんはモジモジしながら身体をクネらせます。頬を赤らめて悶えるミイ。限界を突破しそうな容姿でのその破壊力は半端ありません。現に、隣に居るお店のマスターも若干前屈み気味です。


「ああ、ちょっと薬を盛ったんでちよ。最高の状態で召し上がって頂きたくてね。ククク……」


 カリンは意味ありげにニヤけました。


「さあダンナ。通してくだせぇ。娘の準備が整いつつあるんで、早いとこ届けにゃならないでち」


「わ、分かった。ついて来い。妙な真似はするなよ?」


 言って男が場内へ一歩踏み出した時です。


眠り姫の誘惑スリーピング・フェアフュール!」


 エリザ王女の呪文が炸裂するのと同時に、バタリ。と、男が床に倒れました。


「ふーっ、『確かめて来る』なんて言い出した時にはちょっと焦ったゼ」


「普通の眠りの呪文と違う様でちが?」


「ええ。これなら朝まで何があっても起きない筈ですわ。すぐにバレては意味が無いでしょうし」


 一同は床でイビキをかく男に視線を落とします。


「幸せそうな顔してんな」


「この呪文は、掛けられる直前の強い思いが夢になって出てくるので、恐らく……」


 エリザ王女の予想通りに、男は現在ラッテ族のミイと夢の中でイイコトをしている様子です。それは彼の下半身が物語っていました。


「それじゃ、その辺の草叢にでも隠して潜入するでちよ」


 ガッテンだ。と、返事をしたお店のマスターとエリザ王女は、男の体を持ち上げます。が、エリザ王女だけは横を向きながら運んでいました。上半身は重いのでお店のマスターが持ち、比較的軽い下半身をエリザ王女が担当したのですが、張ったテントをガッツリと拝める位置だったのでした。

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