第2話もしも彼女が冴えていたら①

加藤恵

彼女には俺達のサークル、blessing softwareが制作しているゲームのヒロインのモデルとなってもらっている。

外見、容姿はそこらの女子高生よりも高く、性格を除けば普通に可愛い女の子

そう、性格を除けば。

彼女は性格に少し......だいぶ?いや、少しの方がいいか......コホン、少し性格が普通の女の子とはズレているのだ。前日に「キャラが死んでるんだ!」とか「中途半端だ!」とか散々酷いことを本人の目の前で包み隠さずに言ってしまっても次の日に向こうからしかけて来てくれるほど(少し怒っていたらしいが特に気にするほどでもない、という)なんか......いろいろズレまくっている女の子なのだ。

そんな冴えないフラットなフェイスな女の子がある日を境に急に冴えだしたのだ......


「おはよう、倫也くん」


「ああ、おはよう加藤(名前で呼ぶなんて珍しいな)」


「あれぇ?もう、恵って呼んでって言ったでしょ?」


「はぇ?」

......うん?こんな子だっけ?

......あ〜、また詩羽先輩が加藤にいろいろ仕込んだな...

「あー、詩羽先輩には新作の小説の仮案いいと思いますって伝えてt......」

しかし、次の言葉でおれの予想は打ち砕かれる

「なんの話?もうずっと前から恵って呼んでっていってるじゃん、倫也くん」


「か、加藤?ほんとに加藤か?実は妹だったりしない?」


「わたし妹も姉もいないよ、そんなのが通用するのはエ〇同人誌だけだよ...」


「わー!わー!加藤さん!?こんな所で〇ロ同人誌なんて言っちゃダメ!」


「周りに聞こえる程じゃないよ。あと、恵、だよ」


「いつもの加藤はどこ行っちゃったんだ......」


「だから恵だって......」


「あー...すまん!恵ごめん!」

なんだこれ

〜キーンコーンカーンコーン〜

「さ!サークル活動だよ!倫也くん!」


「そうだな、詩羽先輩や英梨々相談しないとな」


「もう!まだ完全にシナリオ作りは終わってないんだよ!英梨々だって待ってるし!」


「......あれ?かt......すいませんそんな睨まないでください。恵っていつから英梨々のことを英梨々って呼ぶようになったっけ?」

たしか澤村さん、じゃなかった?


「えー、最初から英梨々だよ?」


「最初って?」


「倫也くんの家で『なにが萌ゲーバトルアニメだぁぁぁあ!!』の時からだよ」

そうだっけ?いや、あの時の俺ん家ではまだ絶対澤村さんだった...

「倫也くん?」


「あ、ああ、ごめん。視聴覚室行こうか」


かくかくしかじか

「本人が一生懸命ヒロインになりきろうとしてるんじゃないの?」

と、俺達のサークルのシナリオライター、表向きは1度も順位を一位から落とさず、美人と言える顔、見事な曲線に育っている胸、学校2大美女の1美女、しかしその正体はデビュー作『恋するメトロノーム』で全5巻、50万部も売り上げた売れっ子高校生作家、霞詩子先生。本名、霞ヶ丘詩羽(先輩)

そんなうちの優秀(すぎ)なクリエイターが

「やっとゲーム作りに誠意を持って手伝ってくれてるんじゃないのかしら?そう捉えておきましょう、記憶の変化なんて、巡璃じゃないのだし」

と、仰っている

確かに記憶喪失や改変などは現実ではめったに起こらないので、その可能性はないと思っていたが......

「でもやっぱり変なんですよね、俺のことを倫也って呼んだり恵って呼んでくれとか英梨々のことをいきなり澤村さんから英梨々って呼ぶようになったり、顔の情緒が増えたというか、加藤独自のあのなんともいえない......」


「そこら辺にしておきなさい、なにか重要なものに触れそうだわ」

......さーせん

「というのは半分冗談なのだけれど、まぁ確かにあの表情や、態度、ちょっとやそっとじゃ変わらないように思えるわ。」

半分なのか......というツッコミは控えて

「ですよね......」

と、おもむろにか加藤の表情をスケッチしている英梨々に目を向けた


おっと、あいつの紹介がまだだったなあそこで絵を書いているのは......

(彼女の紹介はどうでもいいわ)

いや......あの当然のように脳内に直接話しかけてこないでください詩羽先輩、はじめて見る人だっているわけですし......

(あら、随分メタい発言をするものね)

できればしたくないですけどね、

では改めて。

絵を描いている彼女は澤村スペンサー英梨々、英国人の父と日本人の母をもらうハーフだ、シャープな顔立ち、金髪ツインテール、スレンダーな体型ながら比較的平らな胸(ひんぬ......)、うちの高校の2大美女の1美女、一般人から見てもオタクから見ても充分かわいい人物......だがその正体は高校生にして18禁の同人誌を描き、ネットの評価ではトップクラスの実力を持つ天才イラストレーター、柏木エリ。英国人のオタクと腐った(BL好きということ)母親の間に生まれたのがあの純オタクのエリート、ちなみに昔からよく遊んでいた、いわゆる幼馴染というやつだ、大丈夫、幼馴染はめったに起きない(これフラグな件)


「英梨々!今日はどんな表情をすればいい?」


「あ、あの加藤さん?どうしたの?熱でもある?」

まぁ、疑いたくなる気持ちもわかるけども 、そんなベタな疑い方を口に出さなくても......

「別にないよー、変なだなぁ英梨々は(笑)」


「いや、あなたの方がおかしいと思うんだけど......」チラッ

こっちを見るな、こっちを

「英梨々?」


「あ、あぁ、ごめんなさい。えっと......じゃあ『バレンタインにチョコを渡したいんだけどなかなか言うタイミングが見つからずにモジモジしてる』表情をお願い」

おいおい、そんなシーンあったっけ?

「わかった」バレンタインニチョコヲワタシタイケドハズカシクテイイダセナイカオ

うわ、なんだあの加藤の表情、かわいi......じゃないかわいい

サラサラカキカキ「......うん、ありがとう。だいたい描けた」チラッ


「ん?」

(どうしたのこの子?)

的なジェスチャーをしてきたので

(いや、わからん。今日の朝からこんな調子だ)

というハンドサインを返しておいた

(ふーん、ほかにもいろいろ頼んでいい?なんか描きやすいから)


(もちろん、こんな積極的な加藤、明日には消えてるかもしれないからな)


「じゃあ次は『あれ?電池切れてる、百均に行こうかどうか悩ましいなぁ』って表情お願い」

......ほんとにそんなシーンあったか?


〜♪


「あ、もう最終下校の時間ですね」

時計をみるともう短針は七時を指していた。

俺が長針を見ないのは皆さんのお察し

そういえば今日の活動は1度も話しかけられなかった英梨々と恵(口で加藤と言ってしまわないようにここでも恵と言っておこう)の方に目をやると


「あ、もう最終下校の時間ね」


「やっぱり英梨々にスケッチしてもらうのはジッとしてても楽しいよ♪」


「そ、そう?そう言ってもらえると描いてる立場としても嬉しいけど......」


「ね、これから倫也くんの家で続きしない?明日は休みなんだし」


「な、なんで倫也の家でするのよ。続きしたいなら私の......いえで、すれば...わかったわかった、そんな顔しなくても。じゃあ倫也に聞いてみよ」


「......なんか倫也って呼び捨てしてるの仮に幼馴染でも、いや、幼馴染感をだしててちょっと...... 」


「あなたほんとうに加藤さん?」


かt......恵きっての要望でスケッチの続きをうちの家でしたいとの事なので英梨々と2人でうちの俺の部屋にいるわけなんだけど

「ねぇ、倫理君、お風呂借りていいかしら?」

なんで泊まることになってんだ......

それと、

「なんで詩羽先輩まで?あ〜、わかった『あの2人が行くのだから当然私も行くに決まってるでしょう?』ですね、わかります(いろいろわからないけど)」


「いえ、違うわよ。正しくは『あの2人もイクのだから当然私もイクに決まってるでしょう?変態君』ね」


「余計ダメじゃん...」

まぁ両親は福岡に旅行兼出張らしいから火曜日まで帰ってこないけど、高二男子の家に(部屋に)美少女3人ってのはいろいろまずいんじゃなかろうか(ほんとうの倫理的な意味で)

「風呂ね、はいはい行ってらっしゃい」


「あなたもどう?倫理君」


「霞ヶ丘詩羽。」


「ちっ、邪魔が入ったわね」


「風呂借りていいかしら?の辺りからずっと背後にいたのよ」

英梨々ってこんなステルスな子だっけ?

「え〜なに?みんなでお風呂?」

すると今日イチおかしい恵がふざけてるのかネタなのかわからないが

「ならみんなで入ろうよ!」


「あらぁ、仲いいこと。女同士、裸の付き合いでもしてきなさい」

と、俺


「え〜、倫也くんもだよ?」

へ?

詩羽「へ?」

英梨々「へ?」

恵「ん?何か変な事言った?」


......この子一体どうしちゃったの

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