1-2 占い
僕は一体何をしているのだ。ネット配信者を使って占いなんて、恋する女子高生そのものじゃないか。占いに頼るのか、情けない。しかし、飛鳥さんが気になる。前から気になっていたが、さらに気になる。これが非リア充の宿命、そして今後も続くであろう呪い。あーあ、非リア充世界大会があるのならば、間違いなくセミファイナルまでは行けるだろう。むなしい。
それにしても、いつになったら僕の番になるのだ。かれこれ、1時間は待っているぞ。占いの待ちは3人と聞いたがそんなにかかるものなのか。
「次で、四人目かな、えーとアイルさん」
完全に飛ばされている。配信開始したてのユーザーの配信に、4番目に来たのに。完全に僕より後からきたアイルっていうリスナーにいつの間にか占いの権利が回っている。ここは、コメントでしっかりと意思表示をしないと。
「なるほど、アイルさんは復縁したいのですか。待ってくださいね」
………………。
読まれねえええええ!!一向に読まれる気配がねえ。
「あ、メルメル、アイテムありがとう」
お、その手があったか、アイテムを送れば、配信者の注意を引くことができるのか。アイテムを送ると同時に、メッセージで占いがすっぽかされている旨を伝えればよいんだな。
「アイルさん頑張ってね、応援しているよ。冷静に、周りの変化をしっかりつかんでね」
…………………。
「じゃ次は、ミントさんかな。今日はいろんな占いが出来て、パンダ嬉しいな」
…………………。
全然見えてねええええええええええええええええ!!こいつ、絶対に見えてねえ!!お前の顔面パンダにしてやろうか!!コラ!!
しかし、いやがらせする、メリットもないし、俺だけメッセージ読まれないって。俺、リアルでもネットでも影薄いのかよ。
そもそも、占いなんかを望んでいる俺は何なんだ。少し、女子に話しかけられたくらいで、何なんだよ根暗のくせに。ああ、もう自己険悪にいつも陥ってしまう。
考えてても仕方ないか。しかし、気になる。一時になったらもう解かずにはいられない性格。ここでも出てしまうこの性格。どうすればよいんだ。占いをしたいが、影の薄さでまず、土俵にすら立てない。
僕は、自分の衝動を抑えることができす、ネットに住んでいらっしゃるあの先生に聞いてみる。検索エンジンにそれなりの語彙を打ち込んでみたが。特に、解決に直結する有力なサイトはない。
ネットサーフフィンを始めてから、3時間ほどが経過した。占いと検索して、それなりの占いはあるのだが、誕生日や星座などといっちゃっちいものばかり。だいたい、同じ誕生日や同じ星座の人間なんか、この世に何人いると思っているのだ。おれが知りたいのは、朝のニュース番組で取り入られる、朝の占いなどではない。ラッキーアイテムなんかどうでもよいのだ。
半ば、あきらめていた頃、ふとあるサイトに目が釘付けになる。それは、生年月日、星座、名前そしてタロットを引いて占うサイト。このサイトのすごいところは、チャットではなく電話で占い、なおかつ一対一というものだ。さすがに、影の薄い僕でも占ってもらえるだろう。
値段は……30分、2000円!?何なんだ、この値段は。こんなんやってられない。そもそも、占いなんか知るか。そんなん、なんの科学的根拠はないじゃないか。
僕はパソコンを軽くテーブルの端へスライドさせてた。
……………
……………
しかし、当たらないとも言えないしなあ。うーん、実際に世界では双子のテレパシーとか?科学的には証明できない事が起きてるわけだし。別に、占いを信じている訳じゃないんだけど、ただ、わずかな可能性を捨てるのは、学士を目指すものとしていかがなものかと思ってのことだけであって、
「もしもし、占ってほしいことがあります」
「何ですか?」
「実はですね」
「なるほど、占ってみますね」
「はいよろしくお願いします」
「脈ありかもしれませんね。しかし、次会うときは、熊のキーホルダーを持っていくと良いでしょう。さらに、服装も華やかなスカジャンがいいかと、背中にはそうですね、龍とか?あと、サングラスも忘れずに」
こいつ完全に俺が非リア充なことを知っていて、むちゃくちゃなラッキーアイテム言ってやがる。絶対こいつ楽しんでるよな。僕が、スカジャンにサングラス、そして熊のぬいぐるみ?世界観がわけわからない。急に非リア充がしゃしゃり出て、ワイルドぶって、さらにギャプを萌えを狙っているというばかりの、熊ちゃんのキーホルダー。
完全に大学生活だけじゃない、人生終了のコンチェルトが奏でられてしまう。
「ラッキーアイテムって必須ですか?」
「必須というより、言いう運気が逃げてしまい、恋愛に発展しなくなってしまいますよ」
これが占いにはまる第一歩なのか。しかし、さすがに大学生、それくらいの思慮の分別はある。ラッキーアイテムなんてくそくらいだ。
翌日、僕はスカジャンを張り、サングラスを被り、熊ちゃんのストラップをつけて登校したが。誰一人、その衣装に触れる者はいなかった。
だが、僕は醜いアヒルの子にすらなれない。
もう、占いなんて信じない。
たぶん
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