最終話 探求VII

天沢ミオに自分の目のことを話したのは、いつで、何がきっかけだったのか。

天沢ミオを姓で呼ぶようになったのは、いつで、何がきっかけだったのか。

天沢ミオの思考や容姿に特別な好意を抱くようになったのは、いつで、何がきっかけだったのか。

天沢ミオを手離すと後悔するだろうと思うようになったのは、いつで、何がきっかけだったのか。


レイはすでにどれも思い出せない。


限りなく入ってくる情報と過去に得た情報を、その体では整理しきれないからだ。



万物流転は終わらない。

始まりがないから終わりもない。


その中で宇宙は消滅したり誕生したりを繰り返した。



宇宙は何順もした。



ある宇宙に、天沢ミオと同じ思考をする哺乳動物がいた。


そのみてくれは天沢ミオではなかった。


天沢ミオではない。


ある宇宙に、太陽と同じ恒星を、地球と同じ公転周期で公転する惑星があり、そこに天沢ミオと同じ容姿の生命が誕生した。


それは人との関わりをあまりに嫌った。


天沢ミオではない。


ある宇宙に、天沢ミオと同じ思考をし、同じ容姿である生命が誕生した。


それには親以外の家族がいなかった。


天沢ミオではない。



時間遡行を繰り返すうちに、レイの肉体は素粒子レベルで散ってしまい、残ったのは、天沢ミオを手離すことのない自分がいる宇宙を探す魂だけだった。


だから、流転する宇宙を観測し続ける魂は、天沢ミオを定義し直す必要があった。


思考、容姿、アイデンティティー……それこそ無限に存在した。


しかし、ついに無限の旅路の最果てに天沢ミオをみつける。

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