第18話 彼の見る夢

ノルウェーの研究所は寮や自然公園が併設されていて広かった。

レイは北欧だし、こんなもんかと納得した。

広大な敷地に、十分な研究設備、満足な食事……寒いことを除けば、何も不満はなかった。

研究者たちは、レイの目に理解があり、最大限の配慮を提供し、とても頼りにしていた。

そこはレイが万物の理論を記述するのに、快適な設備が整っていた。

同時に、レイの目を狙う者から、匿うようにもなっている。


言い換えればここは、レイの命を保証するかわりに、レイを万物の理論に縛りつける椅子になっているということだ。


所内Wi-Fiは規制が厳しく、ミオに通話どころかメールを送ることもできなかった。

だからレイは手紙を描いた。

もちろん検閲された。

当たり障りのない内容だけが投函を許された。

小包は送ることを許されなかった。

ノルウェーのおいしいお菓子なんて、特に思いつかないので、それは大したことではなかった。


問題は、ミオからの手紙が一切無いということだ。


ただ、一通を除いては。

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