近付く二人(1)
「ほんとに、大丈夫です。」
二日間の休みを得て出勤した黒谷が、デスクに座ってそう言うと、頭を抱え込んだ。
そして、思わず溜息を吐いてしまって、しまったと思った。
「大丈夫か?」
間髪入れずに訪ねてくる渡辺に、黒谷が苦笑いを浮かべて「大丈夫です」と、言う。
これで三度目だ。
朝からまるで、腫れ物に触るようにして気を使われている。
それに加え、朝からやたらと沙羽の視線を感じていた黒谷は、今も背中に刺し続けるその視線が、気になって気になってしょうがないのに、恐ろしくて振り向く事もできないでいた。
きっと、此方を見ているに違いない。
事情は聞いていたが、改めて、どうしてこんな事になってしまったのかと思うと、また、ため息を吐きそうになって慌てて呑み込んだ。
「遥貴の奴…」
微かに口を動かすと、蚊が鳴いた様な小さい声を溢した。
そして、黒谷は、顔を上げ気を取り直すと仕事に取り掛かった。
そんな黒谷の後ろでは、あからさまに熱い視線を黒谷へ送っている沙羽に、3係のメンバーが、どう声を掛けるべきか迷いながら作業を進めていた。
沙羽の目の下には、薄らと隈が出来ていた。
黒谷が休んでる間、沙羽は、乖離性同一性障害の事を調べていたからだ。
乖離性同一性障害とは、所謂人格障害の事で、世間では多重人格と言われるそれだ。
沙羽はコンビニでの事を信じて疑わず、ただ只管、もう一度あの日姿を現した、雨の日に出会った男に会いたいと願うばかりだった。
どうやったら、彼を呼び出すことが出来るのだろう。
せめて、名前くらい聞いておけばよかった。
沙羽は、そう思ってため息をついた。
そんな沙羽を見兼ねて、痺れを切らした田中が咳払いをする。
仕事をしろ。と、言いたそうな目をしている田中に気が付くと、沙羽もそれに、分かってるわよ。と、云った顔をして答えると、仕事に手をつける。
だが結局、午前中の間の沙羽の仕事はあまり捗っていなかった。
午後になり、みんなが昼食を取るために動き始めると、沙羽の意識は、より黒谷へと集中した。「黒谷、昼一緒に行かないか?」
後ろの方で黒谷に話し掛ける渡辺の声がして、沙羽が作業を続けながら、耳を傾けた。
「あー、俺は、休んでた分の仕事、進めておきたいからコンビニで済ませるよ。」
「そっか、分かった。あまり無理するなよ。」
「ありがとう」
渡辺が謝辞を告げる黒谷の顔を覗き込んで黒谷の目をまじまじと見つめる。
「え、なに?」
「今日はしてきてないのか?コンタクト。」
そう言って、渡辺は更に身を乗り出して黒谷の目を覗き込んだ。
「コンタクト?」
「そう、ブルーライトカットのやつ。なんだっけ、あぁ、スゲーコンだよスゲーコン。」
「………スゲーコン?」
渡辺が身を引くと、ポケットに手を入れて立った状態で黒谷を見る。
「そう。今日はしてないんだな。スゲーコン。結局、この前の落としたやつは見つからなかったけど、知り合いに話したら、スッゲー興味持っちゃって。だけど、よくあんなの目に入れられるよな。痛くないのか?」
ほんの数秒、黒谷の視線が宙を漂い、あぁ、まあな、と空返事をすると、硬い表情筋をどうにか動かして渡辺に笑顔を向けた。
「まあ、いいや、その話はまた今度で。今日は調子良さそうだけど、無理はするなよ。」
そう言って黒谷の肩を数回叩いた渡辺は、昼食を取りに行くため、部署を後にした。
みんなが思い思いに昼食へと出かけて行く。
辺りが静かになる。
黒谷はまた一つため息を吐いた。
まったく、スゲーコンって一体なんなんだ。朝から妙に気を使われるし。検査の結果はどうたったかなんて言われても、何のことだかさっぱり分からない。
両肘を突いて、顔を覆った。
外に出よう。外の空気を吸って気分を変えよう。コンビニで済ますと言ってしまったけど、何処か出かけよう。
そう思った黒谷は、席を立って部署を後にした。
背後でずっと黒谷を見つめていた沙羽には気付かずに。
会社を出た黒谷は、一人、近くの喫茶店にいた。
体調を気遣う恋人の瑠奈とのメッセージのやり取りが一段落つくと、珈琲を口にして、そして吹き出しそうになった。
何気に目をやったその横の席に、沙羽が座っていたからだ。
テーブルの、既に口が付けられて量が皿の半分に減ったオムライスを前に、此方に向かって手を振っているのだ。
「え、江崎さん!?いつから、そこに?」
黒谷が咳き込みながら沙羽に尋ねると、沙羽は
「えーと、さっき来たところです。」と微笑んだ。
嘘だ。
黒谷は思った。
沙羽の目の前のオムライスが、そう裏付けている。
きっと、気付かなかっただけで、会社から付いて来たのだろう。
黒谷は微苦笑を浮かべながら沙羽に目をやると、ある男からの言付けを思い出した。
「頼む。これを渡してくれ。」
その男が黒谷の腕を掴むと、手にメモ紙を握らせた。
その紙に目を落とした黒谷は、そこに書かれた文字の羅列に目を通す。
沙羽さんへ。頭にそう書かれてあった。
「何だこれ。」
「これを江崎沙羽に渡して、基は、ただ一言、『見覚えないメモがあって、知らないか?』って言うだけでいい。」
「はぁ?」
黒谷はあの初日の強烈な印象を与えた沙羽を思い出して、その手に握らされたメモとその言付けに対して疎ましげに顔を歪ませた。
「正直に話して、自分で渡せばいいだろ?」
そう抗議の声を発してみたものの、その男は「お願いだ、頼む。」と言って聞かず、黒谷を送り届けると直ぐに車を発車させて、帰って行った。
「あ、私の事はお構いなく。」
沙羽の言葉に、とりあえず軽めの会釈を以って返事とした黒谷。
食事を再開させ咀嚼しながら、このなんとも言えない感覚に囚われながらしゆいする。
隣から皿にスプーンの当たる音がして、沙羽がオムライスを口に運んでいる事が伺えた。
面倒だな。そう思ったが、頼まれた事に断れない性格の黒谷が、閉口していたその口を開いた。が。
「もう直ぐゴールデンウィークですね。何処か出掛ける予定はあるんですか?彼女と一緒にとか。」
そう切り出したのは、沙羽の方だった。
話を切り出そうとしていた黒谷は、沙羽の思わぬ質問に意表を突かれた。
「え、あぁ、はい。忙しくて全然予定立てれてなかったんだけど、向こうに行きたい所が色々とあるみたいで、張り切って計画立ててくれてます。」
「へぇ。楽しそうでいいですね。」
「江崎さんは?予定は?」
黒谷が聞き返して、沙羽はピタリと身動ぎを止めた。
しまった。
自分にとってはお決まりの極自然な会話の流れだと思って聞き返したのだが、どうやら触れて欲しくない所だったらしい。
黒谷は慌てて、それに継ぐ言葉を探した。
「そういえば、ゴールデンウィークは雨って言ってたし、出かけても大変なだけだから、この際、出掛けるなら屋外か、いっそのこと、うちでのんびり過ごすのもいいかもしれませんよね。」
黒谷は必死に笑顔を貼り付けたが、どうしてこんなに気を使っているんだ、俺は。と思うと、その笑顔が自嘲の色を帯びたものに変わる。
「雨……」と沙羽が呟いた。
「ええ。この前の雨みたいには強く降らないみたいですけどね。」
皿に残っていた、この店自慢のハンバーグカレードリアを口に運ぶと、沙羽の方へ視線を向けて、黒谷はぎょっとした。
「そうなんですね~。雨か~。ああ、あの雨の日が、ついこの間の事なのに、とても懐かしく感じるわ~。」
そう言って、泣いているのだ。
「え、江崎さん!?急にどうしたんですか!?」
「ううん、いいの、気にしないで。ただ、今頃あの人は、どうしてるのかなと思ったら、泣けてきちゃって。こんなに近くにいるのに会えないなんて。」
「な、何の話ですか。それ。」
黒谷の顔が引きつっていく。
店にいる店員も他の客も、どうしたのかと此方を伺っている。
勘弁してくれ。
黒谷は、その顔に苦笑いを貼り付けて、周りの人間に会釈をした。
近くにいるのに、会えないーー。
まさかと思った黒谷の脳裏に、また、あの男の顔が浮かぶ。
その男が言うのだ。
「その時の流れで、乖離してる事になってしまったから。あ、乖離性同一性障害ね。」
それを聞いた黒谷は、愕然となった。
一体、どんな状況を経たらそうなるのか。
全く以って、解せないでいた。想像すらできない。
更にその男は、知らぬ存ぜぬを通してくれと言う。
そんな無茶な……
何故こんな面倒な事になってしまったんだ。
「きっと、あの人も何処かで聞いてるはず。私は待ってるから!いつでも!私が貴方を支えるから!大丈夫!待ってるからぁぁ!」
「お、落ち着いてください!江崎さん!何を言ってるんですか?どうしちゃったんですか?」
目の前で号泣しだした沙羽に声を掛けた黒谷だったが、次の言葉で逡巡してしまった。
『あの人って?一体、誰に言ってるんですか?』
その言葉が出てこない。
確かに、こんな所で泣き喚く様な、こんな沙羽には、なるべくなら関わりたくはないと思う。
知らぬ存ぜぬを通して、これ以上の面倒ごとに巻き込まれなければ、それに越した事はない。
しかし、この流れでは、普通は聞き返すところだろうが、ここを突いてしまって、本当にいいのだろうか。そう思った。
もう、ほんと、勘弁してくれ…
黒谷が改めてそう思うと、渋々
「大丈夫ですか?一体何を言ってるんですか?あの人って?」
と問い質した。
「いいの、ごめんなさい。ちょっと感傷的になっちゃっただけだから。お構いなく。」
少し落ち着いたのか、沙羽は声のトーンを下げてハンカチを目に当てる。
お構いなくって言うのなら、もう少し自分の言動を考えてくれないか…。
黒谷はそう思うと、早くこの場から立ち去ろうと、話しを切り出した。
「そういえば、これがうちにあったんですが、見覚えなくて…。」
そう言って、言付けられた物をテーブルに置いて指を指す。
「これって、江崎さん宛でしょうか?書き置きみたいですが…、どうゆう訳かうちにあって…。」
黒谷は、返事を返さない沙羽の顔を恐る恐る覗き込んだ。
沙羽はその書き置きされたメモを見つめながら、目を潤ませて口をあけ、言葉に出来てない声を詰まらせながら上げている。
鼻水もでてるし、口の中で噛み砕かれたオムライスは丸見えで、黒谷は顰めたその目を背けると、再び顔を痙攣らせて苦笑いを浮かべた。
何ともいえない罪悪感と、後味の悪さもあり、沙羽のその表情に、この沙羽の顔が夢に出てきて魘されるのではないかと思った。
「こ、こ、こ、これは、あの人が私に!?ありがとうございます、黒谷さん!間違いなく私宛だと思います!」
「いえ、だけど…どうして俺のところに江崎さん宛のものが、あるんでしょうね…」
黒谷はそう言いながら、残ったドリアを一気に口に押し込んだ。
早くこの場から立ち去りたかったからだ。
「あ、そっか、そうですよね~。どうして…なんでしょうね。何かに…紛れてたとか?」
「え?あ、まぁ、そんなところでしょうか…。」
「そう…ですか…。」
ぎこちない会話に黒谷は、沙羽に気を使われている事を察して、この状況の滑稽さに含み笑いを一つ吐き、コーヒーを飲み干した。
きっと、あの男の意に叶っているのだろう。
乖離性同一性障害と云う彼の意図してるものは、しっかりと沙羽に伝わっていることが伺えた。
「とりあえずそれが、収まるところに収まって良かったです。じゃあ、間違いなく、お渡ししましたからね。じゃ、お先に。」
そう言って黒谷は席を立つと、そそくさと店を後にした。
残った沙羽がメモを手に、口にあるオムライスを咀嚼し呑み込むと、そこに書かれてある文字を何度も読み返した。
「連絡取れるなんて、思ってもみなかった…。やだ、嬉しい…」
沙羽がそう呟くと、渡されたメモを掲げて仰ぎ見た。
「………さん三番診察室へどうぞ。」
E区にある沙羽の勤める会社から、南南西に向かって車を三十分程走らせると、D区沙羽の住むマンションがある。
そして、それより西、沙羽の会社から西南西に同じ距離を車で走ると、同じD区で今度は宮内総合病院が見えてくる。
その病院を一歩入ると、広い受付フロアがあり、ゴールデンウィークを前に駆け込む患者が行き交っていた。
待合室には患者を案内するアナウンスが流れ、それに従い移動する患者や、慌ただしく走り回る看護師達で為された喧騒の中を進むと、エレベーターがあり、そのエレベーターで三階へと進めば外科病棟がある。
宮内遥貴は担当患者の手術を終え、たった今、手術室から戻って来たばかりだった。
手術は簡単なもので特段問題もなかったのだが、遥貴の表情は暗く冴えなかった。
「宮内先生。まだ院長室行かれてないんですか?院長、かなり機嫌悪いですよ。早く行った方が…」
同じ外科医の中島晋吾が、心配そうに話しかけてきた。
遥貴は徐にため息を吐くと、中島に「わかった。ありがとう。」と告げた。
「なんか、最近、色々と立て込んでるみたいで、大変そうですね。大丈夫ですか?今度、久しぶりに飲みに行きましょうよ。もうここ随分と、宮内さんと飲みに行けてないですもんね。」
中島が、顔色の冴えない遥貴を励ますように笑って言った。
「……ああ、そうだな。落ち着いたら、また一緒に飲みに行くか。」
自分に気を使ってくれた中島に、遥貴はありがとうと肩を叩くと、「行ってくるよ。すまなかったな。」と言って、エレベーターに向かった。
中島に詫びの言葉を口にしたのは、自分のせいで、きっと呼んで来いと怒鳴られたに違いないと思ったからだった。
遥貴はまた溜息を吐いて、一体今度は何を言われるのだろうか…と、そう思った。
きっと、黙って休んで連絡も寄越さなかったからだろう。
どうせ俺は用済みの人間なのだから、もういっそのこと、縁でもも切ってほっといてくれればいいものを…。
「勝手な人間ばかりだな…」
遥貴は、溜息まじりに小さく言い捨てた。
自分は保険。同じ外科医で、姉の婚約者の力量を見定めているのだろう。
そう思うと、心が凍てつくのが分かった。エレベーターを六階に上がると、廊下の左にカンファレンスホールが、中央には緊急時や避難時の為の医療物資の倉庫があり、そして、右の廊下の奥に院長室の扉がある。
暫くその扉の前で佇んでいた遥貴が、重たい木製で出来た扉をノックした。
「失礼します。」
遥貴は扉を開き、中へ入って行った。
「やっと来たか。遅いじゃないか。全く。」
この宮内総合病院の院長であり、遥貴の父親である宮内政春だ。
その声は、既に苛立を含んだ棘のある口調だった。
手に持っていた書類をデスクに置くと、背後にある窓の外を覗きながら徐に立ち上がった。
「すみません。オペが二件入ってたので…」
「朝一に呼んだだろうが!言い訳はいい!」
政春は、遥貴の方を振り向く事なく怒号を飛ばし、苛立を露わにした。
そして、政春は遥貴の方に視線を移して更に怒鳴った。
「なんで急に休んだりしたんだ。連絡もしないで。どうゆう事だ!」
「それは、体調崩して….。それに、連絡は入れました。」
「私にだ!私に!何故、連絡してこない!俺に恥をかかせる気か!息子の事も把握し切れていなければ、息子は、体調管理すら出来ないのかと言われるのは、この私なんだぞ!分かってるのか!」
「……すみませんでした。」
だが、政春の怒りは鎮まらなかった。
「たまたまお前の患者のオペがなかったからいいものを。周りが迷惑なんだ!それ位もわからないのか!だいたい、最近弛みすぎだぞ!それに、お前は宮内の人間である事を忘れてないだろうな!宮内の名に泥を塗るような真似をするんじゃない!」
遥貴は黙って俯いていた。
只、一切の感情を削ぎ落としたような、光のない目をして、目の前の床をじっと見つめた。
政春が、『それに、お前は宮内の人間である事を忘れてないだろうな!…』と言った所で遥貴は、鼻で笑いたくなった。
お前も、ではなく、お前は、と強調する辺りが、実に短気で、どんな事でも言ってやらないと気が済まないと言った政春の性格を如実に現していると思ったからだ。
「聞いてるのか!」
「はい、勿論です…」
遥貴は、宮内家の養子だった。
宮内家には、息子がいなかったのだ。
遥貴の母で、政春の妻の篤子は、遥貴の姉である亜子が幼い時に卵巣癌を患った。
ステージ2b期。
外科療法で左右双方の卵巣と、卵管、子宮に至る癌を摘出。そして、その術後、周辺の臓器に進展した癌細胞には化学療法を行った。
癌は無事に克服出来たものの、子供が出来ない体になってしまったのだ。
政春も篤子も、当時は、純粋に息子が欲しかった。
卵巣と卵管を摘出する事に、躊躇い、決心がつかなかった篤子だったが、「子供が出来るかどうかより、篤子、お前の命に代えられるものは他にないんだ。お前が大事なんだ。」と言う、政春の言葉に泣く泣く決心を固めた。
しかし、やっぱりどこかで諦めきれなかった二人は、養子を迎える事に決めたのだ。
それが、遥貴だった。
何れは跡取りに。最初は政春もそう考えていたようだ。
だから遥貴も亜子同様大事に育てて貰えた。
遥貴本人もここまで育ててもらった事に感謝している。
だが、二年ほど前から亜子に外科医の恋人が出来た。
政春が亜子の恋人の前田晃一を贔屓し、遥貴への態度を変え始めたのがこの辺りだった。
姉の亜子は、遥貴が養子に迎えられた頃から、年の近い遥貴を嫌っていた。
遥貴にとっては、跡取りになれるかどうかと言う問題も、そんなに気にして固執した事など一度もなかったし、亜子の事にしてみても、嫌われるような事をした覚えはない遥貴だったが、だからと言って、遥貴も亜子を嫌い、邪険にしようと思った事もなかった。
ただ、悲しかった事は確かだった。
一気に蚊帳の外に押し出されたような、疎外感に苛まれた。
もう用済みだと、レッテルを貼られたのだ。
ここには、もう、自分の居場所はなくなってしまった。そう思うと、だんだんと虚しさが湧き出てきた。
「聞いてるのか!」
眉間に深い皺を作り、顔を顰めながら遥貴に叱責していた政春が、拳でデスクを叩いた。
部屋に衝撃音が響く。
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