第10話幼女との出会いは突然に
次の日の放課後。
僕が甲斐甲斐しくも栄華部の部室に足を運ぼうとしていたとき、部室棟の一階と二階をつなぐ階段の踊り場で、あまりこの場に似つかわしくない光景を目にした。
ちなみに踊り場って踊るのダンサーと階段の段差がかかって出来た言葉ってどこかで聞いたけど流石に嘘だよな?
されはさておき、別に似つかわしくない光景といっても踊り場でダンサーが踊っていたわけではない。(むしろ、それは似つかわしいのか?)
端的な答えとしては幼女だ。
幼女が高校の校舎にいたのだ。
ふりふりとした可愛いネイビーの春物のワンピースを着て幼女が立っているのだ。
静止して、周りをきょろきょろと見渡している様子から見るに、何か困りごとの可能性が高い。
当初、早めのサンタさんからの贈り物かとも考えたが、流石に僕も高校生だ。
もう流石にサンタさんも来てくれないだろうと結論に至り、この答えは、二十秒ほど熟考して脳内で破棄された。
そんな有意義な脳内会議をしている間に、幼女の方も……失礼女の子の方も僕に気付き、女の子のパッチリお目目と僕のどんよりお目目の視線が重なる。
さて、ここでもう一度脳内会議だ。議題『幼女とのファーストコンタクトを成功させよう!』です。
これはとても大事であることだと、日本全国の心優しき幼女愛好会の男性諸君は、わかってくれるだろう。
決して僕はロリコンではないが。
さて、脳内会議とはいったものの、ここで僕が取れる選択肢はある程度限られている。
おそらく、学校内の誰かの関係者か、可能性は薄いが単純に校内に迷い込んだかのどちらかだろう。
どちらにせよ、取れる選択肢は『①優しく声をかけ、事情を聴いてみる。②素知らぬふりをして通りすぎる。』大雑把になんの面白みもなく考えれば、せいぜいこの二通りだろう。
僕の脳内選択肢位は、別に僕の学園ラブコメを邪魔したりしないので安心です!
今の状況に補足を加えるぞ。
僕は、女の子のいる踊り場よりまだ少し低い位置にいるので、踊り場に設置された窓から入る西日も手伝って、後光の指す天使に見えないこともない。
天使とは表現したが、決して僕はロリコンではない。
君は、天使に出会ったとき素通りできるか?
答えは否だろう。
これはロリコンとかそうでないかなんて、低い次元の話ではないんだ。
朝、友達に会ったら挨拶しよう。
そのくらい当たり前のことなんだ。
だから僕はロリコンではない。
さて、ここまで僕がロリコンではないということを、哲学的視点と科学的視点から証明できたと思うので、満を持して声をかけさせてもらうとしよう。
僕は、なるべく相手を怖がらせないために、片手を優しく上げて声をかけ………待てよ?
僕は第一声としてなんと声をかるべきなんだ?
ここで、また脳内会議。
というより人間には、必ず取り付けられているロリーター対応器官から全身にインパルスが走る。
この子は本当に非合法ロリか?
皆様も知っておられるように、ロリには合法と非合法の二通りが存在する。
合法とは、そのまんま実年齢が本当にロリのことだ。
ロリの定義は難しいが、僕の感覚で言うと十二歳以下ぐらいから四歳以上といったところだろうか、言われなくてもわかっていると思うが、全国のロリコン紳士の皆様(僕は違う)に忠告しておくと、この子達をお互いが了承の上であっても、彼女たちを己が欲望で汚すのは犯罪である。
そして、言葉のとおり、非合法ロリと対をなすのが合法ロリである。
彼女らは見た目こそ幼く、まるで幼女のようであっても、実年齢は立派な分別のつくお年だということだ。
近年、脱法ハーブのごとく法の抜け道を作り上げ、この合法ロリは、今やアニメやゲームの世界では大人気だ。
特にロリ教師やロリババァといったジャンルもあって、大人の言葉使いとのギャップから、合法のほうがいいのではという声も上がっている。
もちろん「手を出してはいけない」「遠くからひっそりと見守るだけなんだ」とそんな背徳感こそが、ロリの真骨頂だろうと頑として合法ロリを、認めない一派もまだ多く存在する。
彼らの美学もまたわからなくもない。
また、非合法派の中には、「どうせ合法は二次元だから」と、ややリアリスト方の意見もあり合法派の弱みでもある。
確かに、三次元の合法ロリとか言われている連中は、肌のハリやあどけない表情が非合法には遠く及ばないものが大半だ。
僕も、たまにアニメで出てくる合法ロリを見ては「こんな生き物いないだろ」と思う気持ちがないでもない。
さて、一般常識を軽くおさらいしたところで、目の前にいる子をもう一度見てみよう。(次回は「ロリ巨乳について」と「ロリ、ショタ、ペドの共存について」と「合法ロリ派の中で毛が生え揃っていてもいい派といけない派、むしろそれがいい派」の三本になります。なお、三本目はR指定が入りますのでご注意ください)
校内で、私服ということはロリ高校生の線は、まず消しといていいだろう。
ならば、ロリ教師の線は?
あのパッチリお目目が成人にできるか?
甘え袖から見える未成熟な指先、汚れ知らないあどけない表情、水も弾くハリのあるお肌、何より僕のこんな汚れた視線にも、一切、訝しむ様子のない真っ白なハート。
決定だ。
彼女は非合法なのだ。
それを認めようとしたその時、僕の—いや、全国の男の中に眠る『男の子の心』が否定する。
それは、自分が、本当にパイロットやプロ野球選手になれると信じて疑わなかったあの心。
宇宙人やネッシーはいないとは思っていても、心のどこかでいたらいいなと思うあの心。
小学生の時、中学生になったら彼女ぐらいできるだろうと思い、中学生の時、高校生になればさすがに彼女くらい、高校生の時、大学に行けばさすがにねぇ、大学生の時、社会人に全ての希望をつなぐあの心。
みんなの心のどこかで、三次元に合法ロリ教師がいてほしいというあの心。
確かに、受け取ったよ。
さぁ、ここまでくればもう考察なんていらない。せーの、
「おっ、お若いですねー。おいくつですか?」
「……………………」
失敗か?
どちらにせよ第一声が女性の年齢を聞くなんて失礼すぎたか?
万が一、億が一ロリ教師の場合を考えて、敬語を使ったが、そこが不信感を与えてしまったかもしれない。
それに、本当にロリ教師だったとしても、タメ口で話すことで「年上になんて言葉遣いしてんだ、コラ!」っていうロリ教師に怒られるという、原始人の食べる骨付き肉やサッカー部の不器用なマネージャーの作るサッカーボールおにぎりなどといった、漫画の定番パターンに持ち込めたかもしれないのにこれは二重の意味で失敗か?
しかし、幼女(法の網にひっかるかは不明)が、体をもじもじとさせながら、こっちにも移っていまいそうなほどの緊張を隠さず、一生懸命と言う単語がぴったりな感じで、僕との対話に挑戦しようとする。
「……………えっと……その……十歳です。…………小学五年生です」
パアアァァァァァー←脳内にお花畑が広がっていく音。
やっぱり、そうだよね。
どっからどう見てもぴちぴちの小学生だよね。
僕は、やはり合法なんていないのかと思う一抹の寂しさと、そんなことよりなぜこんなところにこんな幼いた気いけな小学生が?
という疑問が吹っ飛ぶほどの、ほっこりポイント(心を豊かにしてくれるポイント)をもらって、脳内がお花見を始めてるまである。
脳内のお花見の宴も、たけなわになってきたところで、ここは高校生らしく、ビシッと目の前の迷える子羊を、助けてあげなくてわならない。
「えっと、迷子かな? どうして君はこんなところにいるの? お名前は?」
「えっ………あの、その、ここに用事があってきました。でも迷子になっちゃって、その、あの名前は……菜な凪なぎって言います。」
うん、うん、中々最近では珍しいぐらい礼儀正しい子だ。
僕の質問が若干多かったせいで、混乱させただけかもしれないけど、まだ少し緊張しているように見える。
まあ、小学生にとっては、高校生なんて大人みたいなものだから、ここはできる限り言葉に気を付けてあげないといけない。
「そうなんだ。菜凪ちゃんね。僕は敬馬っていうんだ、よろしくね。それで菜凪ちゃんはどこに行きたかったのかな? よかったら、お兄ちゃんが連れて行ってあげようか?」
僕も入学したてなので、それほど学校内に詳しいわけじゃないけど、最悪深会先輩に聞けばわかるだろう。
「場所は、よくわからないんですけど、……深会さんと言う方に会いに来ました。この建物のどこかにいると思うんですけど、知りませんか?」
おや?
おやおや?
深会さんと言ったか?
この子は、深会先輩の関係者なのかな?
部室棟は、そこそこの広さがあるので、初めて来た人は、大人でも迷ってしまうかもしれない。
菜凪ちゃんが迷ってしまうのも無理はない。
菜凪ちゃんの日ごろの行いの賜物なのか、今まさに深会先輩のもとに向かおうとしていた僕に出会えたのは運が良い。
僕としても、菜凪ちゃんの目的地に連れていく手間が省けた。
「丁度、お兄ちゃんはその人のところに行くところだったんだよ。一緒にいこっか?」
その言葉に、菜凪ちゃんの表情がパッと明るくなる。
「えっ! いいんですか。ありがとうございます」
うん、うん、一日一ロリ善(一日に一回幼女にいいことをしよう‼ いいことと言っても「ねぇ、お兄さんといいことしない?」いいことではないの意)
道中と言う程、長い道のりでもないが、栄華部の部室に向かうまでの間に、菜凪ちゃんが深会先輩とどういう関係なのか聞いてみた。
「菜凪ちゃんってさ、深会先輩とどういう関係なの?」
途端、菜凪ちゃんの表情が曇った、というより気難しい顔になった。
「あれ? 聞いちゃまずかった?」
「いえ、……あのそういうわけではないんですけど、なんというか私にもよくわからない関係みたいな、……でも、菜凪にとってお姉ちゃんのような存在です」
「へー」
深会先輩のことを思いながら話す菜凪ちゃんは、どこか嬉しそうだ。
少なくとも深会先輩に対して、好意的ではあるようだ。
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