第弐話
1
やはり、一発殴るか…。
いや落ち着くんだ、俺。
お前は根性のあるやつじゃないか!
こんなアンポンタンに些細なこと言われ怒ってどうする?
冷静に、冷静に、深呼吸……。
「で、少し気になったんだが、初期リス地点に何があるんだ?」
少し話を変えようと、そんなことを言った。
「もちろんそこには、天界とこの世界を繋げるゲートがあるの。だから早く見つけないと戻れなくなるわよ」
「マジかよ」
と言う事はどちらにせよ、早く初期リス地点に戻らないといけないのか。
でも待てよ。ここは夢。
そこまで焦る必要はないはずだ。
それならこの世界をしっかり楽しまなければなるまい。
とりあえす、この世界の通貨を手に入れなければ……。
「女神様、ちょっとお金貸していただけますか?」
「え? なんでよ。何する気よ」
「いえ、俺も早く見つけるためにお金が必要なんですよ」
「はぁ? 手伝ってくれるのはうれしいけど、そんな事にお金なんていらないでしょう?」
こいつ意外に手強いな……。ちゃらんぽらんな奴だと思っていたが金対してはうるさいんだな。
「お、お願いしますよ、女神様」
「えー、どうしよっかな~。何でも言う事聞いてくれるなら良いかもしれないなぁ?」
「何でもと言うと?」
「じゃあ、今ここで這いつくばって私の足を舐めなさい。そして毎日私に貢物を私に譲渡したくさん奉公しなさい」
こいつマジでふざけんなよ。黙って聞いてりゃ、バカみたいなこと言いやがって。
ここは少し強引だが強気にいってみるか。
「おい、早く金出せよ! 金貸してくれたら理由を言ってやるから」
「嫌よ、それに何よその態度は? それが人に物を頼む態度なの?」
「あーもー、頑固だな! 早く金出せよ!」
と言った瞬間、背後に気配を感じた。
「君、こんなところで何をしているのだね?」
振り返ると二人大男がいた。
「見たところそこのお嬢ちゃんを脅しているように見えたのだが、おじさんたちに説明してくれるかな?」
あっ、これヤバいやつだ。
2
どうしてこんなことに……。
俺は今留置所の中にいる。
どうやらあの大柄な男はこの国の衛兵だったらしい。
そして偶然俺が美少女を脅して金を奪う、つまり恐喝していたところを現行犯で逮捕したらしい。
おい、ちょっと待てよ!俺は別に悪いことはしてないはずだ。
ただ暗い裏路地で少女を壁際に追い込み『金出せ、早く金出せよ!』って言っただけ……だ……。
あれっ? これどう見ても恐喝なんだけど……。
あああああ、やってしまったああ。
これどう考えても恐喝だよね。
どうあがいてもこれやっぱり、恐喝だよね。
どうしよう……。やっぱり裁判とかにかけられて、有罪になったりして懲役何年とか言われるのかな?
俺まだピチピチの十七歳なんだよ! まだこれからの現役高校生なんだよ!
それなのにこんなところで、俺の輝かしい人生に悪歴がついていまったら、今後の人生に大きく響いてしまうじゃないか!
あれちょっと待て、違うじゃないか俺。
ここは夢の中。
変な心配はしなくていいはずだろ?
と言うか折角の異世界を楽しめなくなったじゃん。
それにここは夢なのだから金なんて別にあってもなくても一緒じゃん!
「おい、兄ちゃん。さっきからなんだよ。ブツブツ独り言を言って。少しうるさいから静かにしてくれねぇか?」
突然したその声の方を見ると部屋の端でこちらを見ている13歳ぐらい金髪美少女がいた。
この子、俺がこの部屋に入ってきたときはいなかったような……。
もしかして、俺を助けに来てくれた天使様なのか……。
「おい、なんだよ。そんなにジロジロ見んなよ、うっとうしいな。なんか用でもあるのかよ」
なんだこいつ、初対面の人になんて態度なんだ!
とは言ってもここは異世界だからな、ここの少年少女たちは厳しい生活を虐げられているから故のことなのかもな……世界は残酷だぜ。
「なに一人でカッコつけてんだよ! さっきまでは人生オワタみたいな顔してたくせに、急に目の前に神様でも現れたかの様な顔かと思ったら、然も俺は今すごく良いこと言ったみたいな顔をして……お前傍から見ると、気持ち悪いぞ」
「うるせぇよ! さっきからなんだよ。ストレートすぎるだろ。もっとこうやわらかく表現できないのか!」
「汚らわしく醜いお顔をしておられましたわね」
「ただの悪口じゃなねぇか!」
「なんだよ、文句があんならさっきまでの自分の行いを思い出してみろよ!」
えーと、あー……。
「はい、私が間違っておりました。すいませんした」
「わかればいいんだよ。で、あんたは誰なんだ? 見るからにここの奴じゃないだろ?」
「え、あ、俺か? 俺は、直人。鷹橋直人だ」
「タカハシ? また変な名前だな。私はガウナ。同じもの同士よろしく」
「同じもの?」
「お前も私と同じく犯罪を犯したって事だろ? ほら、恐喝とか言ってたし」
「あれは、まあいいよ。俺もお前一緒ってことで……」
本当は衛兵の勘違いを否定したかったがもう疲れていたので、言い返す元気もなかった。
そしてそのまま少し休もうと三角座りの状態で頭を下げ目を閉じていると近くで何か大きな音がした。
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