「ここに高橋様を呼んだとはどういうことなのですか?」

「最近、ちょっと暇だったから遊び相手が欲しかったからかな」

「そんな理由で高橋様を殺し、ここへ連れてきたのですか⁉」

「そうよ。だって暇だったんだもの」

と、女神様とエヴァという人が言い争っている中エヴァが俺の方を見て喋りだした。

「ねえ、あなたって異世界に興味はない? よかったら一緒に異世界に行かない?」

「エヴァ、あなたは何を言ってるの?」

 異世界か……。

 行けるのであれば行ってみたいが。

 しかし、色々と大丈夫なのだろうか?

 言葉や文化、俺のいた日本と一緒の可能性は極めて低いだろう。

 だが、せっかくここへ来たのだ。

 どうせ覚める夢ならたっぷり楽しんだ方がいいに決まっている。

 そんなふうに考えていると……。

「じゃあ、早速行きましょう!少し眩しくなるけど我慢してね」

「「「「えっ?」」」」

 俺を含めエヴァ以外の者が同時に驚きの声をだした。

「エッエヴァ、何を勝手にきめているのですか⁉その世界は……!」

 女神様が何か言おうとしたが、目の前が急に真っ白に輝きだしたと同時に辺りが静かになってきたせいかでよく聞こえなかった。

 2、3分前までは冷静に話をしていた女神様は今では慌てふためいていることだけは、はっきりとわかった。

 何か話しているようだがもう何も聞こえない。

 いつの間にか辺りは目を開けられないほどの光になり俺は目を閉じていた。

もちろん目を閉じているので、何が起こっているかわからないが何やら風のようなものが肌で感じることはできた。

どのくらいの時間が経ったのかわからないが、徐々にその風や辺りの光が弱まっていることを感じた。

そして目を開けると――。


「「おおぉぉぉぉ‼」」

 今見ている光景に俺とエヴァの口からそんな声が漏れた。

 目の前には木造や石造、レンガ造りの家々が並び、決して広くはない道に人があふれ返っている。

 その道の隅では露店などが立ち並び、商売をしている。

 人々を見れば中世ヨーロッパ風の服装で街中を歩いている。

 時々、馬車や鎧を身に着けた騎士なんかの姿も見る事ができる。

 まさしくここは、中世ヨーロッパ風の異世界だろう。

 なぜそんな簡単にここが異世界だと信じたかというと、そこには人間以外に犬や猫のような姿をした人や、エルフ、ドワーフなどが普通に歩いているからだ。

 ここが異世界か……。

 少し信じがたいがどう見ても本物だ。と言っても実際に本物を見たことは無いが。

「ようこそ、私の世界へ!」

 突然俺の隣にいたエヴァが俺に話しかけてきた。

「私の世界? ここお前の世界なの?」

 エヴァの言った言葉が気になり俺は思わず聞き返した。

「ええ、そうよ。ここは私の世界。と言っても先日、もともとこの世界を担当していたどっかの神が行方不明になったらしくて、その代わりを私がやることになったの。だから厳密に言うと私の世界ではないけど、まあいいよね!」

 良くないだろ!と、俺は心の中で突っ込んでいた。

「て言うか、まだ俺は異世界に行くか行かないかっていうことを一言も言ってないんだけど」

「まぁいいじゃない。結局異世界に来ることができて嬉しいんでしょ! ね!」

 うん、ここに来ることができて後悔はしていないのだが。

 していないが……。

 まあいい。

「で、これからどうするんだ? 暇だとか言ってたし俺がお前の遊び相手になればいいのか?」

「うん、それもいいわね! でもまずは観光をしましょうよ。まだここがどこかわからないでしょ?」

「それもそうだな、じゃあ案内よろしくな」

「……? 何言ってるの? この世界のことなんて私、何にも知らないのよ。だから案内なんて出来るわけないじゃない」

「は? ここお前の世界なんだろ? なんで知らないんだよ」

「言ったでしょ、ここを任されたのはつい先日のことなの。そんな短い間に覚えられることはたかがしれているわ」

 つまりこいつはこの世界のことをろくに知りもしないで俺をここに連れてきたのか!

 なんかこいつダメな奴に思えてきた。

 いや、多分こいつは確実にダメな奴だろう……。

 おぉ、神様! これが夢ならどうか早くこの夢が覚めますように……!

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