姿なき歌姫……?
その歌姫は、誰も姿を見たことがない。
その歌姫は、歌声しか知らない。
その歌姫は、お昼にしか出てこない。
その歌姫は、この高校の誰かという噂………。
「〜♫〜♫〜♫」
「あ。ねえ歌姫の声聞こえるよ。」
「ホントだ!どこから聞こえるんだろうね。」
「ねー。」
『姿なき歌姫』
うちの高校の七不思議の一つ。
ずっと前から語り継がれている。
『うちの高校には、姿なき歌姫がいる。』
誰もその姿は見たことがない。
お昼休みの時間しかその声は聞こえない。
4時間目の終わりを告げるチャムがなると、どこからともなく聞こえてくる。
チャイムが鳴ると、もう聞こえない。
良く耳を済まさないと聞こえない。
そんなうちの高校の、『姿なき歌姫』
それを、私は、暴きたい。
話を聞いていく限り、ばあちゃんがこの学校に通っていた頃にはもう聞こえていたらしい。
てことは、だいたい70年前。
………人間じゃなくね?
そう思っていたが、どうやら代替わりしたかもしれないという噂を聞き、これは人間かもしれないと思った。だから、調査する。
「ていっても……、手がかりないんだよねぇ。」
マジ詰んだ。
とりあえず音楽室。
「ま、誰もいるわけないんですけどね…って嘘でしょ。」
誰もいないはずの音楽室には人影があった。
が、見覚えがある。
この人影は……。
「さぁ〜え〜きぃ〜。」
「あ?なんだよ神木。」
同じクラスの佐伯だった。
なんでこいついんの。吹部とかじゃないじゃん。
合唱部でもないでしょ。
「何してんの?」
「神木こそ。ま、どうせ姿なき歌姫探してたんだろうけど。」
「そうだけどっ」
なんかムカつく。
なんでわかんのこいつ。
「歌姫探しなんてやめろよ。どうせいないんだから。」
「いやいるから。絶対いるから。絶対正体暴くから。」
あって聞きたいことがある。
どうしてこんなところでずっと歌っているのか。
どうして昼休みだけなのか。
おばあちゃんのために、歌を歌ってくれないか……。
それが聞きたいの。
「目的は?」
「何が。」
「歌姫探す目的。」
音楽室はダメだった。
次は、放送室。
一人で探したいのに、勝手についてくる佐伯。
てか、佐伯には関係ないし。
「あんたには関係ないし。」
「……わかんねーだろそんなん。」
わかるよ。
これは、私の自己満足だし、おばあちゃんのためだし、これは、私だけの問題だから。
放送室につくも、鍵は空いていない。
内側から閉めれるもんね〜。
窓は、小さい。しかも上の方。
くっそう身長……。
「ほれ。」
「ひょわっ!!あ、見えた。はずれか……。」
窓が覗けなくてどうしようか悩んでいたら、佐伯に持ち上げられた。
ヒョイっと。
脇の下に手をい入れられて。
そんな軽々持てるもんすか……。
男子と女子だけどさ。
身長差あるけどさ。
お前ほっそいくせにさ。
「……つかさっさと下ろせや?!」
「あ。悪い。」
相変わらずの無表情で何を考えているのかわからない。
なんなのこいつ。
マジ調子狂う。
「重かったっしょ。」
「いや、軽かった。羽でも生えてんのか?」
「いや生えてねーよ人間だから私。暗にチビって言いてえのかあぁ?」
「……。」
手を見つめるな何か言えよ!!!!!!!
くそ……。
もう知らない。次。
次は、
キーンコーンカーンコーン
「あ。」
「ああああああああああああああああああああああああああああああ。」
チャイムなっちゃったじゃん!!!!!!!!!
佐伯のバカ!!!!!!!!!!
って叫ぼうと佐伯の方を見ると、既に佐伯はいなかった。
えっ、えっ、あいつはやくね?!
次の授業誰だっけ?!
やっべ、はせせんだ。
今日のところは諦めて教室に帰ろう。
はせせんはダメだ。
後日、佐伯に話を聞くと、あの日、佐伯は音楽室には行ってないという。
じゃあ、私が会った佐伯は…………。
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