晴れのち曇時々雨

お元気ですか?

私はたった今、あなたのおかげで死にました。

とてもいい笑顔をありがとうございます。


はあ、今日も大好きな笑顔を拝むことができてしあわせである。

学年も学科も違うかはなかなか会うことが出来ない私と先輩の唯一の接点。

委員会という接点。

半年だけしかない委員会という接点。

それでも私は、先輩に近づこうと必死なのです。


「はぁ……。今日も先輩素敵だった……。」

「まぁーーーだいってんの。あったの今朝でしょ?もう夕方よ?」

「だってぇ、先輩素敵なんだもん♡」


本当に先輩は素敵な人。

とても優しくて、笑顔が可愛くて、背も高くて、頭が良くて、運動は……。

でも!!本当に素敵な人で、告白され続けてるとか……。

まぁ、全部断っているらしいんだけどね。

彼女はいないらしいけど、好きな人がいるのかな?


「あ、三上。」

「され、先輩?!」

「ちょうど良かった!ごめんけど、手伝ってくれない?」

「はい!!」


先輩は教授に冊子作りを頼まれたらしい。

結構な量がある。

これは時間かかるな……。


空いている教室を見つけ、適当な場所へ座り先輩と向かい合って作業をする。

教室に響くのは紙をめくる音と、ホッチキスの音だけ。

あと、私の心臓の音。

静かな環境で、先輩とふたりっきり。

緊張しないわけがない。


「ふー……。ちょっと休憩しよっか。」


半分位終わったところで先輩が声をかけてくださる。

何この量。半端ないんだけど。既に一時間くらい経過していた。

これは、一人でやるのも二人でやるのも厳しい。

教授は鬼なのかな……。


「教授鬼だろこれ……。すぐできるから〜とかいって、できねえじゃん……。」


先輩も同じ事を思っていた。

ちょっと笑いそうになった。にやける顔を抑えるのに必死。


「ごめんね三上、こんなに多いとは思わなくてさ。」

「大丈夫です!暇なので!」

「はははっ、ありがと」


キュンっ

先輩の笑顔本当に素敵……。


「三上はさ、好きな人いる?」

「えっ!?何ですか急に!」


目の前にいます!!!!!!!!!!!

なんて言えるわけないけど。


「いや、なんとなくね。」


ここで、先輩が好きっていてしまえば、この関係は壊れてしまう気がしてならなかった。

まるで、先輩から、私の気持ちを拒絶されているような。

まるで、人類からの好意を拒絶しているような。

そんな気がした。


「俺ね、ずっと忘れられない人がいるの。もう何年も前に付き合ってた人なんだけどね。今は結婚してるけど、それでもずっと、忘れられないんだ。女々しいよね。」


先輩が今まですべての告白を断ってきた理由がわかった。

忘れられない人。

もう結婚してるけど、ずっと好きな人。

それは、私たちのような愛じゃ、勝てないのかな。


「女々しくなんか、ないです。素敵ですよ。ずっと思っていられる人がいるなんて。」

「そうかな。いい加減次の恋しろって周りには言われるんだけどね。」


でも忘れられない。

心が頭に追いつかない。

そんな感じなのかな。


そんな話を聞いて、涙が出ない私は、本当に先輩が好きなのかな。


「私、いままでずっと、先輩のことが好きだって思ってました。」

「え、俺のこと?」

「そうです。でも、今の話聞いて、全然涙が出ないんです。全然悲しくないんです。ちっとも、心がギューーってならないんです。」


きっと私は、まだ本当の恋を知らないから。


「だから、先輩が羨ましいです。その人の事を思って、そんなに悲しそうな、辛そうな顔になるくらい、その人のことが好きなんですから。本当の好きを知ってるんですから。」

「三上……」

「先輩。今からその人に告白してきたらどうですか?玉砕するのは分かってますけど、前に進むために。気持ちを伝えたらどうですか?」


なんでこんな事を言っているのかなんてわからない。

私に恋愛の知識なんてないし、語る資格なんてないのに。

でも、口から言葉は飛び出していった。

もう後戻りはできなかった。


「……そうだな。気持ちをぶつけるのは大事だよな。ありがとう三上。ちょっと俺行ってくるわ。」

「いてらっしゃい先輩。私待ってますから。泣きたくなったら来てください。」

「かっこいいなぁ三上は。行ってきます。」


先輩はそう言うと走って教室を出ていった。

なんだか私もすっきりした。

まあ、問題は、この山積みの資料なんだけどね。

先輩が戻ってくるとは限らないけど、一人で片付けるかな。



私の恋は、これからのようです。

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