春と夏。
私は、本当に弱い。
弱い、というか、意気地なし、というか……。
もう新しくなって三ヶ月たつ。
もうすでに三ヶ月。
一新して、三ヶ月。
なのに、
私には、
友達が、
いません。
…いないことはない。
いるのはいる。
けど、他クラス。
しかも、遠い。
私はEクラス。
友達は、Bクラス。
棟が違うからなかなか会えない。
そしてあの子は、私なんかと違ってとてもコミュ力が高く、誰にでも話しかけていく。
すぐに友達を作ってしまう。
私なんかとは大違いで……。
幼馴染でなかったら、友達なのが不思議なくらいで……。
いつまでも見捨てないでいてくれてありがとう……。
でも、私もそろそろ自立(?)しなければならない。
あの子はあの子で部活に入ったから、私は放課後いつも一人で。
いつまでも終るのを待って、一緒に帰るようでは成長しない。
だから、頑張ろうとしたのに、
結局誰にも話しかけられず放課後ぼっち……。
ダメだなほんと。
今日は一緒には帰らないって言ったから、一人で帰らなきゃ……。
ガラガラ
「あれ?春さん。一人?」
「ひゃい!!!!!!!」
カバンを取り立ち上がろうとすると、教室のドアがあきクラスメイトに声をかけられた。
たしか…彼は…うちのクラス人気NO.1の……
「日夏くん…。」
「どしたの?今日はいつものやつ一緒じゃないんだね。」
「あ、うん…。」
どうすればいいのでしょう……。
私みたいな地味女が日夏くんとお話しているなんて……。
明日日夏くんのファンの方々にこのことがバレたら……。
そんなの無理だ耐えられない。
早く帰ろう。
日夏くんの横を通り抜けようとすると、
「あ、私はもう、帰るので……。」
「あ、待って!」
グイっ
腕を引っ張られ、軽く日夏くんにもたれかかるような形になってしまった。
あ。これは。死んだ。
「最近、不審者出るらしいから、えっと、その、近くまで送るよ!!!」
……このお方は何をおっしゃられているのでしょうか。
あの、人気NO.1の日夏様が?この地味女を?送るって?????????
明日から死ぬのでやめてください。
なんて言える訳もなく。
「ちょっとまっててね。」
そう言って彼は自分の机からカバンを取り、私に帰ろと声をかけ歩き出した。
まあ断れる訳もなく。
一緒に靴箱まで歩きましたけども。
どうしよう、何を話せばいいの?
コミュ障辛い。
てかさ?さっきペラペラ喋ってたあの勢いはどこにいたの?
教室出るあたりからものすごく静かなんだけど?
なんで?気まずいんだけど。
「あ、春さん家ってどっち方面?」
「えっと、△□駅方面。」
「そうなんだ!一緒だね!」
マジですか一緒ですか死んでいいか。
いや、あの、てことは、通学の度に見かけるじゃないですかヤダー。
△□駅に着き、改札へと進む。
なぜ同じ方向へ来る。
「電車通?」
「あ、はい、えと、〇×駅です。」
「え、一緒。どこ中?」
「△中…。」
「隣か!!俺〇中!」
同じ学校じゃなかったよかった!!!!!!!!!!!
一緒とかハゲるから!!!!!!!!!
マジ無理だから!!!!!!!
てか最寄りまで同じかよオワタ。
次から使う駅変えようかな無理だな目の前だもの。
てかさっきからコイツはなんなの。
私のそんな情報知ってどうするこら。
この時間、正直中途半端な時間で電車にいる人もまだまばら。
一時間遅かったらきっと部活帰りの生徒で埋まってるんだろうな……。
「あ……あのさ!!春さんって……いま、付き合ってる人とか、……いる?」
何言ってんだこいつこのコミュ症春にいるわけねぇだろ????????
「いないよ」
てか私にそれ聞いてどうする。
あなたとは住む世界が違うんですぅー。
ほっとけっつーのよ。
もうすぐ〇×駅につこうというところで、彼から発せられた言葉。
「あー、その、よかったら、その、……俺と付き合いませんか。」
は???????????????????
なにいってんのこいつ。
正直耳を疑った。
そのあと私の頭を。もしかして:突き合って もしかしなくても:
そのあと疑ったのは、日夏くんの頭。
私のどこを好きになったの。
そんなに接点ないし。ただのクラスメイトなのに。
どこを好きになるの。いつ好きになるの。
わけがわからない。
「あ、その、いきなりごめん。実は俺、ずっと前から、春さんのこと知ってて……。」
日夏くんはどうやら常連さんらしい。
うちは小さなお店を経営している。
小さな小さな雑貨屋と、その隣にある、こぢんまりとした喫茶店。
本当に、常連さんしか来ない小さなお店。
まぁ、そこそこ人気らしいんですけどね。
そのお店で私は、いっちょまえに、一つ、作品スペースを設けてもらっている。
たまにだけど、ちょっとしたアクセサリーやら小物を作っては販売している。
それは私のお小遣い。
そして、私の密かな趣味。
このことを知っているのは、幼馴染と両親だけ。
あまり知られてはいけないことだった。
たまたま日夏くんが喫茶店に来た時に、見てしまったらしい。
私の作品と、私が作品を愛おしそうに並べる様子を。
そのとき私はうっすら笑っていたらしい。
その笑顔に惹かれて、私の作品に惹かれて、ずっと探していたとか。
「……、ごめん、引いた、かな。」
引くわけがない。
知られてしまった驚きと、自分の作品を見られた、自分の恥ずかしいところを見られたような気恥ずかしさと、私の作品を気に入り、買って、い今も大事に使っていてくれているということへのうれしさとがせめぎ合って、苦しい。
なんだこれは。
心臓がうるさい。
今までにないくらいうるさい。
私は、どうすればいいの。
「いや、だった?」
「……、嫌ではない。驚きと、恥ずかしいのと、嬉しいのとで、ごめん、いっぱいで、頭パンクしそうで、」
「どこか喫茶店でも、行く?」
「いや、大丈夫。ちょっと、静かなとこ行きたい。」
流石に駅ではうるさすぎて頭が片付かない。
どこか、静かなとこ。
「そのまま、目つむって俺についてきて。」
改札を出てそう言われ、手を握られる。
人の体温って、すごく気持ちがいんだな。
手をつないでるとかいう恥ずかしさまで頭がたどり着かず、そんな馬鹿みたいな事を考える
。
どこに連れて行かれるのかわからない。
知っている町とは言え、知らないところはたくさんあるし、私たちは高校生で、未成年で、未熟で、いろいろ危なくて、なのに、今はそこまで頭が追いつかず、そのまま身をゆだねていた。
潮の香りと波の音に気がつき目を開ける。
目の前に広がる蒼と橙と白。
夕方の海。
「俺、考え事するときはここに来るんだ。。この時間だと、すごく綺麗だし。誰もいないから。」
あぁ、確かにここは、頭の中を整理するのにちょうど良さそだ。
「好き。」
「え?」
「俺、春さんが好き。今は、それだけわかってくれれば。」
「私も、たぶん好き。」
私にはまだ、恋愛の好きがよくわからない。
けどなんとなく、幼馴染や、両親に抱く好きとは違う感を、日夏くんに対して、抱いている。
この夕焼けを見て、そう思えた。
「こんな私でもよければ、付き合ってください。」
「……、もちろんです。」
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