(「・ω・)「アルパカー

「アルパカ見たい。」


「は?」




唐突に、仲のいい男子が言い出した。


しかも授業中。いきなり何をしだしたかと思うと、私の手を取りカバンを持って教室を飛び出した。



「おい!お前ら!戻ってこーい!」



先生の声が後ろから響いて聞こえてくる。


私は未だに状況が飲み込めていない。



靴箱について靴を履き替えさせられて、また走り出す。


え、今どこに向かってんの……?



「ちょ、どこに、むかっ、てんのっ……!」


「えー?駅!」


「え、ええ?」



駅についたらICOCAで改札をくぐり抜ける。


そしてやっと止まった。


文化部の私には駅までダッシュはとてもきつい……。


飲み物が欲しい……。



「ほれ、ポカリ。」


「……。」



「ありがとう」と言いたいけれど声は出ない。


喉がカラカラ。水分を欲している。


ここからどこに行くんだろう。


ていうか、授業……。



「あ、電車きたぞ!」


「えっ?」


「いくぞ!」


「えっ、えっ?!」



連れて乗り込まれた電車は、どっちの方面に行くのか全くわからない。



そういえば、とケータイを見れば着信もメールもたくさん。


ああああああ友達からもクラスメイトからもたくさん……。


私がサボることなんて今まで無かったし……。


めちゃくちゃ心配されてる……。



「かしてっ」


「あっ」



みんなに返信をしようと思ったらケータイを奪い取られ電源を切られた。



「あぁっ!」


「ぼっしゅー。」


「ちょっ、なんでっ」


「いーからいーから」



そう言うと彼のカバンに私のケータイはしまわれてしまった。


これは、帰ったらすごいお説教な気がする……。



「……ねぇ、」


「ん?」


「……どこ行くの?」


「動物園。」



冒頭の言葉を思い出す。


そういえば、「アルパカ見たい。」とか言い出してたっけ。


でもなんで私まで……。



そんなことをぐるぐる考えていたら動物園の最寄り駅についてしまった。



「さ、行くよー。」


「ひゃっ、ちょっ!」



やっぱり手をひかれてダッシュで改札を抜ける。


なんでこんなに走るんだろう……。


私そんなに体力ないんだけど……。




「ついたっ!!まってて!」



動物園につくなり門の前に置いていかれた。


すごく疲れた。もらった飲み物を飲み干す。


まだ体は水分を欲している。


どこかに自動販売機は……。



「はい、ポカリ。と、入場券。」


「あ、ありがと……。お金は」


「いーよ、気にしないで。」



お金持ちなのかな……。


思わずそう思ってしまった私は悪くない。


というか、実際お金持ちなのかな……。


門を入ってすぐにいる動物達はスルーしてどんどん奥に進んでいく。


アルパカに一直線なのかな……?



「アルパカみーっけ!」



やっと目当ての場所についた。……ようだ。


目をキラキラと輝かしてアルパカを見ている。


こーゆーところは、子どもみたいで、可愛らしいところだ。



「ごめんね、いきなりこんなところに連れてきて。」


「あ、うん……。」


「たまたまね、見つけたんだ。『ここの動物園のアルパカの前で告白すると、そのカップルは永遠に幸せになる。』っていうジンクス。」


「……。」



……そのジンクスと私を連れ出す理由はどうつながるんだろう。


私にはさっぱりわからない。



「思い立ったが吉日。おれの座右の銘ね。だから、連れ出しちゃった。ごめんね?」


「うん、全然いいよ。」


「それで、その、もうわかってるかもしれないけど、」



ごめん全然わからない。


そんなことを思いながら彼を見つめる。


耳が真っ赤。そして相変わらず童顔だなぁ。


なんて呑気に考える。



「俺、お前が好きなんだ。」


「………………え?」


「お前が好きだ。付き合ってください。」



顔をこれでもかってくらいに真っ赤にして私への思いを告げる。


私のことが、好き……?


頭の中で好きという言葉がぐるぐるまわる。


好きって、なんだっけ……?



「おーい……、大丈夫かー……?」


「……ごめん。全然処理できない。」


「頑張って処理して?」



すき、好き、スキ、suki……。


私を、好き……?



頭がやっと追いついて理解ができた。


私のことを好き。


付き合って欲しい。


そう言っていることを。


理解出来た途端、顔がすごく熱くなる。


どうしよう、え、どうしたらいいんだろう。



「……処理できた?」


「……できた。」


「返事、聞かせてくれる?」



返事。そっか、付き合って欲しいって言われたんだから、それの返事をしなきゃ。


えっと、付き合って欲しい。だから、yesかnoか。


えっと、えっと……。



「……俺のこと嫌い?」


「嫌いじゃない。」


「じゃあ……、好き?」


「……好き。」



口をついて出ていた。


勝手に出ていた。


『好き』と言っていた。


そしてやっと私は気持ちに気づいた。


私は彼が好きだと。







彼からケータイを返してもらい、電源を入れる。


と、同時にたくさんのメールと着信。


そして、充電が落ちた。



「あ、充電落ちた。」


「げ、まじで?みんなからの連絡で?」


「うん……。」


「やべえな、早く帰ろっか。」


「そうだね。」



そう言うと、どちらからともなく手をつないだ。





学校につくともう既に放課後で校内に残っている人はまばらだった。


が、私のクラスだけは全員残っていた。



「おかえりー!!」


「もー!連絡つかくて心配したんだからねー!!」


「ご、ごめん……。充電切れて……。」


「無事でよかったー!!!」



「お前!!成功したのか?!?!」


「うん、ばっちり」


「すっげぇなおい!!」


「でも授業抜けてくか?!普通!!」


「思い立ったが吉日。俺の座右の銘。」


「いやあほすぎるだろ(笑)」



クラスメイトは暖かく迎えてくれた。


女子はすごく心配していてくれたようで、泣いている子もいた。


連絡出来なかったのがとても申し訳ない。



男子は理由や事情を知っていたようで、成功したとかそうゆう話をしていた。


そんななか、担任の方を見ると般若のような顔をしていた。



「お前らとりあえず、説教な。」


「はい……」「はーい……」



担任につれられ生徒指導室に向かう。


すごい怒られるのかなぁ……。



「……お前ら。」


「はい。」「はい……。」


「……よく無事で帰ってきた。ったく、二度とするなよーこんなこと。」


「はーい!」「はい……。」


「上手くいったのか?」


「もちろん!!」


「おめでとう。」


「ありがとー先生!」


「ほれ!さっさと帰れ!」


「はーい!」



担任の先生も事情を生徒に聞いたらしく、そこまでお咎めはなかった。


警察にも親にも連絡はせずにいてくれたらしい。


学校でもそこまで大騒ぎにならなかった。


担任の先生がはからってくれたらしい。


先生ありがとう。



「よし、帰ろっかー。」


「そうだね。」




END


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