先輩はちょっとかっこ悪い。けど、好き。

あの人がいるから、バイトを頑張っていられたのに。

あの人には、恋人がいた。

フリーだと思っていたのに。

勝手に裏切られたような感じで、一人傷ついた。


話したことはない。

ただ見てるだけ。

声は聞いたことがある。上司と喋っていた。


とても素敵な声で、すぐに好きになった。

でも何か接点がある訳では無い。

ただ自分のバイト先と、あの人の職場が近かっただけ。ただそれだけ。


しかも、相手は社会人。

大して私は学生。

なんて声をかければいいのやら。


普通に告白なんて出来やしない。

だから眺めているだけ。ただそれだけ。


そんなある日、あの人が女の人と仲良さげに話をしていた。

綺麗な女の人。ナイスバディで、美人で、それでいて可愛くて。

私なんかと比べ物にならないような人だった。


私は失恋したのだ。

さよなら私の愛しい人。


あの人と目が合ったから、ニコッと笑って、うまく笑えた気はしないけれど、その場を逃げるように去っていった。



あの日からしばらくバイトには入っていない。

たまたま休みが重なったのだ。

あの人に会わなくて住むからいいんだけどね。


バイトもないし、とぼーっとしていたら、


「ごめん!!今日ヘルプで入ってくれない?!」


と店長から連絡が入った。

急な欠員が出たらしい。

断ってもいいけれど、行かないと店長が困る。


……仕方ないから行くか。


「行きます。」


と、一言返信して支度をし、バイト先へ向かう。

こういう時車って便利だなって思う。

車を10分ほど走らせたらすぐにバイト先についた。

ぃまさらになって憂鬱な気分。

車を止めて深呼吸。


いざ、いを決して、出陣!!


ガチャ


「お疲れさまです。」

「おつかれー!!急にごめんね!!!」

「いえ、大丈夫です。」

「あの……。」

「!?」


背後から声をかけられ振り返ると、あの人がいた。

私の片思いの相手。

まだ傷が癒えていないというのに……!!

というより、どうしてここに……?


「……ごめん!!ヘルプの話嘘!!こいつがどうしても話がしたいっていうからさ……。」


まじかよ店長。はめやがったな。

ものすごい形相で店長を睨みつける。

この人に会いたくなかったのに……。

話があるとか知らないし。


「ごめんね、店長さんに嘘ついてもらってまで呼び出して。君とどうしても話がしたくて……。」


店長はこの間に事務所を出た。

空気を読むな。むしろいてくれよ。私の心が持たない。


「大丈夫です。何でしょう。」

「あー、あのね、この前女の人といるところ……、みたよね?」


私が一番聞きたくない話だった。

というか、なんでそんな話をするんだろうこの人。

全く私には関係ないのに。


とりあえず、無言でうなずく。


「あのね、あの女の人、……俺の姉なんだ……。」


はいはい恋人ね……って、え?姉??今姉って言った???

頭がパニックになった。

言ってることが理解出来なかった。


「君にだけは勘違いして欲しくなくて……。」

「なんで、ですか?」

「ん?」

「なんで、私には勘違いして欲しくないんですか?」


(別に、関係ないのに。)

それだけは言わなかった。

言った後、辛いのは私だから。


「それは、その。……君が好きだから。」


再び脳が理解することを放棄した。

お願いだから働け。

「好き」っていった?

いま、「好き」っていった?

は????


「ああああ本当はちゃんと言いたかったのに……。

かっこわるい……。ごめんね?」

「……なんで謝るんですか。というか、私も……好きですし、あなたのこと。」

「……まじで?」「……まじで。」


あ、やばい。顔真っ赤だ。すごい真っ赤だ。はずかしい。顔見られない。


「……俺と、付き合ってください。」

「…………はい。」


こうして、私たちは付き合うことになった。

こっそり覗いていたらしい店長に、これでもかってくらいお祝いされた。


そのまま2人で、デートに行きました。おしまい。

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