秘密の恋心。

誰にも言っていないこの恋心。

誰にもいいいたくないこの恋心。

言ってしまえば、君の魅力がばれそうだから。なんて、嘘。

ただなんとなく、誰にもいいたくない。言い出しにくい。君への恋心。秘密の恋心。


「ねー、彩雨さぁ、好きな人いないのー?」

「あー、私も気になってたー」


仲のいい友だがそう言って話しかけてくる。

さっきまでほか二人の恋バナだったのに、いつの間にか矛先はこちらに向いていた。

そこに、たまたま通りかかった君が話に加わってくる。


「なになにっ、恋バナ?俺も聞きたーい!花谷好きな人いんの?」


君が笑顔でそんなことを聞いてくるからドキッとする。

もちろん、誰にも言わな言って決めた恋心。秘密を守り通す。


「………いない。(お前たよバーカ。)」


だるそうに机に肘をついて答える。何気なく彼の方を向く。でもすぐにバレないようにそらす。バレたくないから。


「へー、いないんだー?」

「彩雨モテるのになぁ。」

「もったいなーい。」


口々に三人が会話をする。

勝手に言ってろー。私はモテないぞ。


「へー、やっぱ花谷モテるんだ。可愛いもんなっ」


唐突に彼が言い出した。

一瞬自分の耳を疑う。それでも、紛れもなく、彼は私のことを可愛いと言った。

キラキラ切らした眩しい笑顔でこっちを見て、確かに可愛いと言った。

ふーん、私って可愛いって思われてんだ。顔に出てないかな。心の中で一人ガッツポーズ。


「じゃあさっ、あんたはどんなのがタイプなのよ?」

「えっ、俺ぇ~?」

「気になる~」


うわっ、ナイスな質問。

でも正直あまり聞きたくない。私みたいなのがタイプじゃないとか言われたらショックだから。

少しだけ顔を伏せる。バレないように。ポーカーフェイスを作って三人の方を向く。


「好きなタイプは………、花谷みいなのかな。」


思わず耳を疑う。今、花谷って言った?

自分の名前が出たことにびっくりして、ポーカーフェイスが崩れていないか心配になる。


「なんか、いっつもクールでかっこいいじゃん。でも本当は、違うんじゃないかなって気になってるんだよな。」

「確かにクールだよねぇ」

「でもこれが彩雨だと思ってるしなぁ。」


口々に友達二人が話し出す。

すごいなぁ。勘づいてたのかな。

どんどん好きになっていく。


「あれ?彩雨耳赤くない?」


やばい、ポーカーフェイスが崩れた。


「………トイレ」

「いってらっしゃーい」


慌ててトイレに行くふり。

もちろんポーカーフェイス。

流石に、顔に出でしまったのかな。


「やっぱ好きだなぁ、花谷彩雨」

「「え?!」」

「なんでもねぇ」


最後の方の会話は完全に聞こえなかった。

早く、あの場から立ち去りたかった。

ポーカーフェイスが完全に崩れてしまえ前に。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る