第6話 マサラチャイ

 底冷えする冬の夜。雪こそ降らない地域であるものの、霜でも降りそうな寒さ。まるでガラスのように冷たく固まった空気が、私の頬に当たる。


 溜まっていた残業を片付けてから帰宅したら、もうこんな時間だ。背骨すら固まって動かなくなるのではと思うほど、芯まで冷えている。


 遅めの夕飯を食べる前に、温かい飲み物が欲しいと思ったので、『マサラチャイ』を淹れようと思う。スパイスを入れたミルクティーの事で、身体を暖めるには最適だ。


 縁の左右が注ぎ口になっている雪平鍋に、少な目の熱湯とたっぷりのアッサム茶葉を入れ、蓋をして3分蒸らす。蓋の隙間から、アッサムの香りが漂って出てくる。


 3分経ったら、砂糖を多め、カルダモン・シナモン・クローブ・ナツメグ・ジンジャー各種のスパイスを耳掻き数杯程度入れる。スパイスの量は、その日の気分で微調整。


 スプーンで混ぜて砂糖が溶けたら、ミルクをタップリと注ぐ。前に入れた熱湯の倍量は普通らしい。


 コンロのツマミを捻って火をつけ、強火でミルクティーを温める。少しの時間で沸いてきて、鍋はだの所のミルクティーが、フツフツと音を立ててきている。あまり沸かし過ぎるとミルク臭くなってしまうので、このくらいで火を止める。


 さらに蓋をして、1分蒸らす。待ち遠しいが、美味しく紅茶の成分を出すためだ。我慢我慢。


 熱湯で温めた大きめのマグカップに、茶漉しを置いてミルクティーを注ぐ。雪平鍋の縁の注ぎ口から注ぐのだが、多少は鍋の底にミルクティーが回ってこぼれてしまうのは、折り込み済み。そこはキッチンペーパーで拭いて処理する。


 こうして、スパイスの香りのする『マサラチャイ』にありつく事が出来た訳だ。少しすすると、ミルクのコクと紅茶の香り・スパイスの風味と砂糖の甘さが一気に口の中に広がり、身体が芯から温まるのがわかった。


 ホッとひと息つけた所で、暖房がやっと部屋を暖めきった所だった。さて、夕飯の準備をするか。

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