第3話 拳打

 人差し指から小指までの四指を、関節ごとにしっかりと折り畳む。折り畳んだら、その上に親指を折り曲げて乗せる。親指は、打面よりも前に出ないよう、しっかりと折り曲げる。


 少し緩めたり握り絞めたり、交互に繰り返して一番しっくりくる握り具合を確かめる。


 左手を前、相手の眉間に向け、右手を後ろにし、顎の斜め下あたりに配置する。


 右足の爪先の蹴りを膝~腰に伝え、腰から背中~肩へと回転を連動させ、右肩から肘へと力の方向を絞る。2度3度とゆっくり身体を動かした後、実際に当てるつもりで右拳を繰り出す。


ボッ!


 まとった道着が風圧を受け、乾いた破裂音を放つ。


「ふむ。こんなモノかな」


 肩を回して膝を屈伸し、自分の体調と動きを確認する。いつものルーティンワークだ。


「さ、今日の練習を開始しよう。はい整列!」


 道場内に響きわたるように声をかけ、全員を整列させる。さあ、今日も頑張るか。

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