第6話


あれから5日、有野は一度も姿を見せない。少なくとも誠二が【リーチ】でログインしている間は一度もオンラインになる事は無かった。


恐らく高校生になるための準備で忙しいのだろう。理由なんかどうでもいいが思いつくとしたらそれぐらいしかないし、現に誠二も親が家に居ないため自分で高校で使う物を買いそろえているが面倒くさい。


少々気になるが今は目の前の【ドラりん】の育成を始めなければならない。この目の前にいる【ドラりん】はペットで開始5日目でようやく捕まえる事が出来た。


事は5日前に遡る。


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誠二はカタカタとパソコンで調べ事をしていた。

パソコンはこのゲームをするために買った物で、今まで調べ事は本でやっていた誠二には慣れない代物で、ネットの中でしか分からない情報があると分かってからは少しずつまだキーボードを慣れない手つきで操作し、検索を掛けていた。


今回も【ペット使い】になったのはいいがどうすればいいのか分からないため、検索を掛けている。


【サガミネ ペット使い やり方】


どう検索していいのか分からずありきたりなキーワードで回線を回すと一番上に《ペット使い 攻略》

と書かれたサイトが出てきた。開いてみると大抵の情報が出ていて便利だなぁと思いながら読んでいるとどうやらペットにするためのモンスターを倒さなければならないらしく、それでも確率でペットに出来るか否か決まるらしい。


戦闘下手な誠二としてはこの上ないぐらい面倒くさいが、次の文章からその面倒くささは少しだけ緩和された。


育成も出来るらしくそのためには仲間にしたペットに敵を倒させなければならない。


これに関しては願ったりかなったりというべきか、半分放置で育成が完了するらしい。ただそのせいかかなりレベルの上がる速度が遅く、一定のレベルを超えたペットは進化と言い、ステータスが大幅向上する代わりレベルが降り出しに戻る機能まである。


最後にデメリットとしての所を読むと、1次職までしかなれないという点と、育成に時間が掛かる事。ここまでは聞いていたが次


一々ペットに指示をしなくてはならない。


うーん、面倒くさそうだ。


多分放置というのはペットに「付近のモンスターを狩れと言えば自動でやってくれる」という事なのだろうが、戻らせるためにも指示をしなくてはならないみたいだ。


何故面倒くさいかを例を挙げるとすると、ペットは戦う、つまり相手も攻撃をしてくるという事で回復手段を持っていなければ永遠狩り続けて死んでしまうという水の泡が生まれてしまう。


サイトの方にもペットは死んでしまうので気を付けましょう!と太い赤文字で入念に注意警告をしている。


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それから頑張り【ドラりん】を倒していったのだが1体倒すずつ倒す事には成功するが効率が悪い。それにペットの確率は1%未満と100体倒しても仲間に出来るかどうかという結構きつい条件で苦戦を強いられていた。


更には言った通り高校の準備のため、自転車で店を回ったりその度本屋に立ち寄って予定が狂ったりしたせいで今もギリギリ遅れている。

予定では入学式の10日前ぐらいに完了すると気分が良いためそれまでに終わらせておきたい。


こそこそINして遊んでいるとようやく現在【ドラりん】をペットにする事が出来、レベルも6になった。

スキルはどうせ1次職になるからとサイトには適当にしても良いとあったので、使い勝手が良かった【クイックステップ】をレベル5にした。これでマックスまで振った事になる。


試しに使ってみると使用MPが1に、ステップ時の距離が少し伸びたように感じられる。


(これ・・・違和感ないな。)


前使った時は何か意識が引っ張られたように感じていたのだが、レベル5にしたらまるで瞬間移動のように、気が付けばそこに居た状態になっていた。

結構連続で使うと気分が悪くなっていたのでレベル5にした甲斐があったかな?と少しは満足感が得られた。


草原に沸いている【ドラりん】にペットの【ドラりん】を戦わせてみる事にした。


見た目は同じだが、ペットには自分の付けたニックネームが上に表示されている。誠二が付けたニックネームは「茶柱」。妙に親父臭い。


ニックネームは非常に重要で指示をするときにこのニックネームをまず呼んでから指示しなくてはならない。そのためカッコイイ名前にしようと長く、複雑な名前にすると指示が遅れてしまう可能性がある。


茶柱は必死に戦うと、ギリギリの所で勝利を納め、レベルが上がり些細だがステータスもアップした。

ただ体力的に連戦はきつい。


体力は継続的に回復するがそれまで待っている訳にもいかない。

瞬間的に体力を回復するには方法は二つ、ポーションを買い体力を回復させるかか、回復効果のある料理を買い食べさせる事で回復させるかだ。


前者はただ体力を回復させるのみだが料理は様々な特殊効果がつくため、今誠二が最も効率良く育成するためには料理を買った方がいいのだがこの料理が結構高い。


料理は料理人しか作れず、その料理での効果は攻撃力を上げたり、防御力を上げたりと唯一無二の存在のため需要が大きい。そのため、今の誠二の所持金では2000Gまでのちょっとした効果のついたものしか得られない。


それでは払っても殆ど意味がないと判断した誠二は、150gのポーションを3つ買い、一個使うと体力は残り1割だったのが7割まで回復し、もう一戦ぐらいできそうだ。

ただこのままだと自動的にレベルが上がってくれるまでに所持金が尽きそうだ。


「よしいけ茶柱。」

「がうっ!」


深く考えず戦わせて、今度は比較的早めに勝てた。

誠二は計算していなかったためいくらレベルが上がったとはいえギリギリになるだろうと予測していたのだが、体力も戦う前のゲージの半分ほどしか減っていない。


「そっか、攻撃力も上がったから前よりもダメージを受けずに勝てたのか。」


ただ残り必要経験値を確認すると次までにあと5体は倒さなければいけなさそうだ。理不尽過ぎる!


次にレベルが上がる頃にはポーションが付き、レベルも上がったがまだ管理しないと厳しそうだ。

回復してくれるペットが欲しいが遠くにはいるにはいるらしいがそこまでレベルも高くないし、そこまでいけば金銭的に余裕生まれるだろうし必要無さそうと判断する。


今度はポーションを五つ買うと店のプレイヤーから話しかけられた。


「さっきも来てたよな。ペット使いって珍しいからちょっと聞きたい事あるんだけどいい?」

「見て分からないのか?今ペット育ててるんだよ、忙しいの。」

「そんな事言わずに頼むよ!少しだけ!少しだけだから・・・!中級ポーション二個おまけするから!」

「・・・少しだけだぞ?」


誠二は始めは渋っていたものの中級ポーションをくれるという言葉に目が眩み、了承した。


中級ポーションというのは、初級ポーションと比べると回復量が高いポーションの事で値段は高いが体力が増えてくると回復するのにも手間がかかるためお話一回で2つも貰えるのならお得だ。


「普通にペット使いって楽しいの?っての聞きたくてさ。俺も一回悩んだんだけど友達が辞めとけって言われて。」

「今やってる身としては辛いな。ペットするまでに面倒くさいし育成も暫くはポーション売ってる店とシャトルランになりそうだし。その代わり恩恵は大きいみたいだな、雑魚なら任せれば済むらしい。」

「全部任せるってのもあれだよなぁ。このゲーム現実と同じって言うけど、結局MMORPGの楽しさとサブ職の楽しさしかないし。それでも十分楽しいけどね。このゲーム悪い奴等たくさんいるから話題尽きないし。」

「悪い奴等?」

「嫌でもそのうち聞くことになるさ、よし踏ん切りついた。ありがとな、そこの中級ポーション2つ持ってっていいよ。触れれば自動的にバッグに移動するから。」


誠二は置いてあるポーション二つを触るとその二つは消え、バッグの中に移動しスタックされた。

ふと店先に置いてある物が盗まれないのか疑問に思った。

決して盗めるんじゃないか?と思ったけど良心からやめておこうと思った訳では無い。


「これ盗まれないのか?」

「触ってみれば分かるけど透けるからね、俺と話して交渉しないと。」

「そっか。ありがと。」


お店の人にお別れを言うと、今日は終わりにしようと宿屋に入った。


次の日、今日も有野はオンラインにならない。しょうがない事だが昨日と続けて一人で茶柱に指示をする。


レベルも3に上がった事で瀕死になるまでに四体倒せる事が出来るようになった。ただその代わり【ドラりん】で得られる経験値だと25体まで狩らないと次のレベルに上がる事は出来ない。それでも狩るスピードは装備とレベルが上の誠二の使うリーチよりも早い。


人に寄っては暇だと思うかもしれないが何だかボーっとしているこの時間が愛おしい。

危なくなってくるとすぐに離れさせ、ポーションを飲ませてまた戦わせるというブラック企業さながらのプレイをしているとまたポーションが尽きたと同時にレベルがあがった。


それからは毎日この繰り返しで、ペット育成の開始5日目、そして始業式10日前で準備が終わったと同時にゲーム内の誠二のお金も終わった。


「金がねぇ...金がねぇ...。」


下層エリアの誰も来ない場所で体力が瀕死の茶柱を眺めながらブツブツ呟く。レベルは5、【ドラりん】を倒すためにはかなり効率的になったがそれでもまだ継続の回復よりも【ドラりん】からのダメージの方が痛く、自動にはさせられない。


眺めていると【ドラりん】の眼から見える自分の姿が反射して見えた。

まさかこれは・・・


「まさかお前・・・俺にこの防具を売れって事か!」

≪そうだよリーチ君、君は僕が守ってあげるよ。そんな防具は必要ないだろ?≫

「ちゃばしらあああああああ!!!」


ただの妄想のためにただのAIの【ドラりん】を抱きしめると、速攻で防具を市場に売り飛ばし、そこで得られた1500Gをポーション10個に変え、再び草原に出る。


適当に倒させ、また回復させ適当に倒させを繰り返しているとポーションを飲ませている時に、フレンドの有野がようやくオンラインになった。かなり久しぶりでほんのちょっぴりそわそわする。


すると、ピロン♪と何かを誠二に知らせる音が聞こえた。

何だろうとメニュー画面を開いたまま見ていると有野の所に1と数字が書かれてある。試しに押してみると目先の下の方にチャットが開き


「お久しぶりであります。」


と、有野からチャットが飛んできた。

誠二はただ「あぁ。」と返信した後に「そちらに行っても良いでありますか?少し変な噂が流れているらしいので。」と意味深な言葉を送ってきた。誠二はただ「あぁ。」と答え、茶柱に戦わせつつ、有野が来るのを待つ。


「あれ!?防具どうしたでありますか?」


来て早々質問したのは防具の事に関してだった。


普通は見た目が変わるとしたら強くなるや、衣装などがあるが何も着ていないのは予想外だったのか結構驚いている。


キャラクターはデフォルトで男性は無地のシャツとズボンを履いている。女性キャラクターの場合は無地のズボンではなく無地のスカートになる。


誠二はどう答えようとしたかと思ったら、有野が誠二に何も言わせず次の言葉を発した。


「あ、【ペット使い】にしたでありますか。」

「おい、なんだその妙に納得している顔は。」

「思わず顔に出てしまったであります。」


意外と言えば意外そうな顔をしていたがその顔はどことなくうんうんと頷いているようにも感じられる。

有野は変わった誠二の【リーチ】に興味を引かれたが話す事を思い出した。


「そうそうリーチさん。ここいらで最近【悦楽の殺人集団(キラーサーカス)】っていうPK集団のギルドが来ているらしいので気を付けた方がいいであります。」

「いきなり来てなんか意味が分からない事言われても俺は知らないぞ。」

「あれ、掲示板見てないでありますか?」

「掲示板?」


攻略サイトも見てかなりこの世界の施設や用語に関して知っていたがここで初めて聞いたことが無い言葉が出てきて聞いてみる。


「端的に言うとプレイヤー同士の情報板の事で、知り得た情報を公開する場所の事でその中でもやっぱりPKに関する話が多いでありますね。」


更に詳しく言うと掲示板というのは他にも次のレイドボス、イベントの日程や開催場所ギルド勧誘など様々なジャンルの板で別れていて管理しているのは始まって3か月で出た役所にある。

ここもプレイヤーが管理している場所で殆どボランティアのような所だ。


「PKなら俺したことあるぞ?」

「はぁ!?何やってるでありますか!!」

「有野だってしたことあるだろ、中学校の頃体育で」

「それはペナルティーキックであります!!!自分が言っているのはプレイヤーキル、この世界での殺人でありますよ。」


PK通称、プレイヤーキル。昔からこの言葉はあったがどこの運営でも承認はしていない。だがこの世界ではPKが許されている。PKをする事でPKした相手の手持ちを全て奪う事が出来、効率的と言える。

だが、PKをする人に多いのがその手持ち目当てではなくただ相手を殺せるというサイコパス的思想に近い楽しみ方の人が多く、現在、現実と同じように取り締まりのための牢獄が作られているが、簡単に壊されてしまうためプレイヤー自身の注意力が必要になる。


他にも殺されると数日のデスペナルティ、【経験値獲得値-30%】【獲得ゴールド値-60%】【移動速度減少】などかなり重たい罰がくだるため、普通にプレイしている人にとってはかなり毛嫌いされている集団の一つだ。


彼等は特に対人戦に特化したアサシン系の職業についている事が多いため、この世界でアサシン系の職業になりたいものなら少なからずの白い目を浴びせられる。

当然誰しもそんな目を受けながらプレイをしたいとは思わず、アサシン系の職業をする人はめっきり減っていた。


「別にそれがどうしたんだ。今の俺に奪われて困る物なんてないぞ。」

「それはそうでありますが・・・。」

「・・・有野なんか悪い事考えてないか?」


それよりも悪い事を考えている誠二が言うべきことでもないかも知れないがこの正義感を振りかざしている有野は一つ人によっては面白そうな事を考えていた。


「自分達でそのギルド倒しましょうよリーチさん。」

「嫌だね、一人でやればいいじゃない。」

「実はこの国を管理している大手ギルドがキラーサーカスを解散させようと有志を募っているらしく、自分も参加するので一人ではありません。」

「ならいちいち俺誘わなくていいじゃん。茶柱育てるのに忙しいし。」


遠くでまた茶柱が【ドラりん】を倒した。それを見ながらほっこりした気持ちになっている今の誠二に、簡単な説得は通じない。


有野は緊張していた。

確かに誠二の言う通り一人ではやらないし、大手ギルドが居れば数日で見つけ、解散させる事も出来るだろう。だがそれでも知り合いは一人もいない。心細い、出来ればリーチに着いてきて欲しい。そんな気持ちがあった。


どう説得しようか考えているうちに、リーチが大きなため息を吐き次にこう付け加えた。


「もうさ、アカウント作り替えてまともになればいいんじゃない?そうしたらみんな話しかけてくれるぞ?」

「そ、それはちょっと・・・。」


誠二は至極当然の事を言ったが、有野はたじろぎyesもnoも言わない曖昧な答えを返した。


「何か事情があるのか?」

「リーチさんに会うまでならやってたと思うでありますが・・・。」

「俺のせい?・・・なんかやったかなぁ。」

「いえいえ!それは自分のせいであります!うぅ...」


有野は首を大きく横に振るが、次にはがっくりと項垂れている。


男の癖に情けないなぁと少し偏見的な感情を感じながら、このままいつかれても迷惑なだけのため少しばかり手助けをする事にした。


「分かった、せめて人付き合いの仕方だけでも教えてやる。」

「・・・。」

「なんだよその怪訝な表情は。」


有野は信用ならない人を見るような目でリーチを見ていた。


「大丈夫でありますな?」

「10まで教えられる訳じゃないけどこれでも勉強はしていた。」


誠二は幼い頃から人との接触は両親から堅く禁じられていた。それでも誠二は両親の事は好きなのだが、意味の分からない事に人付き合いをさせようとはしないが人付き合いに大切な心得、そして心理についてに関する本を頻繁に買ってきて読ませてくる。


今回はたまたまだが、その知識を活用出来そうだと誠二も少しだけ張り切っていた。


「まず、相手に話しかける前に注意しなければならないのが相手が今どういう状況なのかだな。話しかけるには偶然を装ったり気楽に話しかけたりする状況を判断する必要がある。」

「確かに機嫌が悪い時にいきなりテンション高く話しかけられると嫌でありますな。」

「そうだ、人付き合いで大切なのは相手の嫌な事をしないように気を付ける事。大抵の人は我慢したり無意識に避けたりするけどお前無理そうだもんな。」

「これでもリアルでは人に囲まれているでありますよ。」

「嘘つけよ、そんな奴がこんなゲームで「ありますあります!」ってはしゃいでる訳ないだろ。」


もしかしたらなど甘えた考えは出来なかった。いや、したくなかったというべきか。

こんなあります!とかいうような男が現実ではチヤホヤされているとか考えたくもない。気味が悪い。


多少行き過ぎな気もするが誠二は無視し話を続ける。


「例え温厚な人でもタブーがあるように機嫌が悪い奴も必ず心理に穴がある。」

「穴?というと?」

「その人が気を緩くなるキーワードだ。これさえ探れば簡単に懐柔出来る。」

「・・・言い方どうにかならないでありますかね。」


なんだか手懐けるみたいで変な言い方だがつまりはそういう事だ。

堅苦しい人でも好き嫌いがある。その好きな所に自分を合わせれば自然と相手が好きになってくれる。


簡単な話だと誠二は言うが、そんなの考えて生きている方が大変なのでは?と有野は別の意味で少し気が楽になった。


有野はそういえばと初めて会った時を思い出した。

あの時は完全にリーチが気を緩くしていたタイミングだったからこうして簡単に話が出来るけど普通の人相手だとこうして簡単に教えてくれる事が無かったのかもしれない。


杞憂ではあるかも知れないがほのかに嬉しいという感情が湧く。


「あっ、でも絶対に長くは付き合うな。」

「え?なんででありますか?」


急に仲良くなりたいという気持ちのはずで接する訳なのに長くは付き合うなという矛盾が生じる。


「喧嘩するほど仲が良いというのははっきり言って違う。例えどんなに長く一緒に居ても必ず意見は相違する。とすればわだかまりが出来て結果、些細なきっかけで喧嘩が起きる。本当に仲が良い奴は喧嘩しても翌日にはケロっと仲良くしているのを言うが、それは相当気が合って無きゃ無理だ。」

「うーん、なるほど。」


口では分かっているように言っているがいまいち理解できていない様子。

理解出来ていなくてもいい、自分が分かっていると思い込んでいる事が重要だ。教えるだけならわざわざこんな遠回りせずとも簡潔に「とにかく相手の話に合わせろ。無理だったら他の奴だ。」と教えていたが、こんなに難しくややこしい言い方をするのは無理に考えて欲しくなかったからである。


人の脳は考えすぎるとショートし一時的に機能がダウンする。

その間に色々と説明し、理解したと分からせる。

こうすることで難しい事は考えず、「理解した」という裏付けが話しかけるための勇気に繋がる。


と、誠二は今まで本で読んだ知識を実践しているが半分は実験のような物に近い。


「じゃあ行ってこい。」

「え?リーチさん来ないでありますか?」

「いやだから何で俺が行かなきゃならないんだよ。」


呪われたかのように一緒に行かせたがる有野にもう一度拒否反応を示す。


「あれ?まさかリーチさん人と話すのが怖いでありますか?」


それはただの勘違いだ。誠二は自分から積極的に話しかけるような性格ではないが利益が分かれば普通に話す事が出来る。怖いと思った時も無い。


ただ無性にカチンと頭に来た。

譲れない何かがそこにはあった。


「分かった。俺も行く。」


人の事は分からないと言うが、結局自分の事も何を考えているのか分からない。

その「何」を探すために、誠二は有野についていく事にした。

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