4.
さっきの夢を頭の中でゆっくりとプレイバックする。悪夢と呼ぶには、妙に懐かしいような、かなしい夢をガムのように繰り返し、噛んでみる。
僕は、ガラスの水槽の底に沈められている。手足に力が入らない。押さえつけられているわけでなく、眠っているのだろう。閉じたまぶたの隙間から、小さな泡粒と、銀色の水面が見える。
「陪審員三一三号は、"最期の審判"計画遂行の直前に、潜伏先の地球で不慮の事故に遭い、以来昏睡状態のままだ」
ガラス越しに声が聞こえる。機械音のようでいて、荘厳な・・・まるで神の声のようで。
「防御のために彼が発した、大量のエネルギーは、地球破壊のための装置に大きな影響を与え、働きを狂わせてしまいました。我々の手で破壊されるはずだった地球は、彼の夢の中に流れ込んで、時間を止めたまま、眠り続けています」
反対側から別の声。助手か、秘書ってとこかな?
「或いは・・・自らの体を犠牲に、故意に事故を起こすことで彼は地球を夢次元にずらしこみ、完全な消滅から守ろうとしたのでは、ないか」
「わかりませんね。彼が目を覚まさないことには。夢の中の彼は、全く陪審員としての記憶を捨て、未来をも完全に拒否して別の人生を生きているのですから」
「もし、その仮定が当たっているとしても・・・彼がそうまでしてあの小さな星を守ろうとする、その理由は何なのか・・・」
陪審員三一三号って僕のこと?話が難し過ぎて理解するのに時間がかかるよ・・・。でも、声は出ない。思うとおりに体が動かない。苦しくて、せつなくて、息苦しくて・・・。
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