講義後の会話、宇宙暦128年の日常
「宇宙史の授業取る?」
ミャンシは教授が教室から出ていくのを確認して僕に話しかけた。まったく大学生になったんだから女友達同士でつるめばいいものを。
「ミャンシは取るんだろ?この授業の評価レポートだけみたいだし」
履修登録期間の授業にしてはずいぶんボリュームがあったな。と思いながらミャンシはこの授業をとるのだろうと確信する。
「フィンブは?とるの?とらないの?」
「僕は履修するよ、面白そうな授業だし」
「じゃあ私も履修する!」
ミャンシは嬉しそうに言う。「じゃあ」ってなんだよ、と思いながらもミャンシと同じ授業を受けられることを少し喜んでいる自分がいた。
「ところでさ、あのアンダーソンって人はなんで地球を守るためにあんな命がけのことをしたの?」
ミャンシの授業内容に対しての疑問をはっきり口に出すのは利点だとは思うが、今回は「授業内容を聞いていなかったな」としか思わなかった。
ミャンシは「だって地球に住んでる人が悪かったんでしょ?地球以外にも人はたくさん住んでるし別に地球の一つや二つ…」などと教授が聞いたら卒倒しそうな過激な発言をしていた。
「あのな、確かに「事故を起こしたのは地球に住んでいた人間だ」って先生は言っていたけど地球には事故には全く関わっていなかった人もたくさん住んでたんだからな?それに、当時は月に数百人いた以外は全人類が地球にいたんだ」
「えええええ!!!??!?!人類ってもともと火星にいたんじゃなかったの?」
ミャンシは本気で驚いた顔をしている、驚きのあまり立ち上がってもいる。
「ミャンシ、お前授業の後半全部寝てただろ?」
「えへへ、後でノート見せて」
ミャンシは舌を少し出して笑って見せた。昔からこうだ、きっと大学でもこんな関係性が続くのだろう。
「ジュニアスクールもプレアカデミーもずっと一緒だったけど、なんか離れ離れになっちゃったね」
僕が「次の授業があるから」と席を立とうとするとミャンシがしんみりと言ってきた。
「どうして?同じ大学じゃないか?」
「でも私は宇宙行政学専攻だよ」
ミャシンは少し視線を落としながら悲し気息を吐いた。
「そうだね」
僕は報道専攻なのでミャシンとは違う授業をとることも多い。ミャシンと同じ選考にすることも考えたがやはり父親も祖父も曽祖父もみんなジャーナリストをやっていて僕もその道に進みたいと考えている以上報道専攻以外の選択肢はなかった。ミャシンが報道専攻に来ることは成績が足りず無理だった。
「そういえばさっきの講義で資料として出てきた雑誌の記事ってあれ書いたのフィンプの曽祖父だよね?」
「そうだよ。僕のあこがれの人さ」
宇宙船は時を超える 槻木翔 @count11
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