家庭、私生活

本日お話を伺うのは、トム・アンダーソン氏です。アンダーソン氏は、アンダーソン大佐の弟で事故当時は18歳でした。アンダーソン氏には大佐のプライベートなどについて伺いたいと思っています。


― プライベートでのアンダーソン大佐はどのような方でしたか?


私が物心ついた頃にはもう飛び級で遠くの大学に行っていたので、実はあまり姉の記憶は無いんです。歳の離れた自慢の姉、それだけでしたね。休暇の度に帰っては来ていましたが、その時のイメージは「生活能力のない人」でした。食事なんてレーション一袋で済ませちゃう。


― 生活能力が無いというのは、少し意外ですね。


私も、あの姉さんが宇宙飛行士になったと知った時は驚きました。でも自分の部屋は散らかってるのに職場は凄い整頓されてるし、料理は全然できないのに、実験とかの手先はすごい器用なんです。職場に見学に行ったときに姉の同僚の方に教えてもらった事ですが、唯一、ロッカーだけは散らかしていたそうですね。

おそらく、姉にとってプライベートなスペースを散らかす事は一種の趣味みたいなものだったのでは無いでしょうか?

こんなことを言っていたことがあります。

「私は、自分の部屋を敢えて混沌にする事でトレーニングをしているのだ」と。


―言い訳じゃ無いですか。


でも不思議なことに、どんなに部屋が散らかっていても、どこに何があるのか全て把握していましたね。弟の僕には散らかすまでしか受け継がれなかった。



― 両親はどんな方でしたか?


両親は技術者でした。尊敬はしていますけど、子育てって意味ではあまり優秀ではありませんでしたね。でも、私も姉も家にあった沢山の本に囲まれて育つことができました。


― 話を変えましょう。あなたは、メリフラワー号の発進の日に月で見送ったそうですね。


ええ。当時はまだ民間人の月面基地への出入りは一般的じゃありませんでしたが、乗組員親族ということで月に招待されました。残念ながら、姉は出発準備に追われていたのでじっくり話す事は出来ませんでしたが、あの時ほど姉の事を誇りに思った事はありませんでしたね。なんせ、当時の人類の英知の結晶だった月面基地が自分の姉を中心に回っているんですよ?!

それにしても、あの時に見たメリフラワー号は形容し難い迫力を持っていました。今日、あれより大きな輸送艦がたくさんあるなんて信じられませんよ。


― アンダーソンさんはその後、宇宙開発の世界に進みますが、やはりお姉さんの影響があったのでしょうか?


あったかもしれないですね。私自身はあの時見たメリフラワー号に感銘を受けたと思っていますが、もしかしたら姉と同じように事故に遭う飛行士を少しでも減らしたかったのかもしれないです。実際、宇宙飛行士の任務拡大に伴うリスクの増大をコントロールすることはできたと自負しています。





アンダーソン氏は長年、航空宇宙局保安部で安全性に関する指導を行っております。本日は取材に応じていただき、ありがとうございました。




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