特番「アメリア・アンダーソン船長の素顔」

今回、気鋭の若手ライターであるジョン・ジュールが新たにお贈りする連載記事は、先日、30年を経て機密解除が行われた宇宙船メリフラワー号事故の真実です。事故を技術的な観点から検証した書物は無数に出ておりますが、わたしにはあまり理解ができません。なのでここではメリフラワー号の船長であったアメリア・アンダーソン空軍大佐の人物像に迫っていきます。


第一回のインタビューに応じて下さったのは去年まで、第一線の宇宙飛行士として活躍なさっていた。ウィリアム・ダンさんです。ウィリアムさんは宇宙飛行士になる前は医師として働いておられていました。事故の3年前、宇宙飛行士としてNASAに採用され訓練センターでアンダーソン大佐(当時教官)の指導を受けていました。




—あなたにとってのアメリア・アンダーソン大佐はどんな方でしたか?


そうだな、厳しいなんてもんじゃない。今でこそ、俺は宇宙飛行士として飛び回っているが、あの時は本気で宇宙飛行士をやめて実家を継ごうかと思っていたよ。「お前は宇宙に行っても死ぬだけだから地上で死んだ方が仲間に迷惑がかからなくていい」って言われたこともある。


―そんなに厳しかったと


仲間内じゃあ、アメリア教官は花形の開発部から左遷されてきた八つ当たりを俺たちに対してしてるって言われていたな。当時は俺もそれを信じていた。 でも、いざ宇宙に出て見てわかったよ。アメリア教官は俺たちが生き残れるようにあの鬼のようなトレーニングを課していたとね。実際、教官はいつも俺たちと同じメニューをこなしていたし。宇宙飛行士になってから今まで一度も事故を起こしていないのもアメリア教官のおかげだと思う。

叶うなら、一度アメリア教官と飛んで見たかったな。


―具体的にはどんな訓練をされていたのですか?


そんな特殊なものはしていない。体力づくりと緊急時の対応訓練。ただそのやり方はきつかった。


例えば走り込み一つとってもアメリア教官がずっと集団の後ろから追走していて集団から遅れると蹴っ飛ばしてくるような人だった。体力が尽きて来る頃になると、教官が一人一人質問をしていくんだ。例えば緊急事態時の対応とかをね。10回連続で正しく答えられたら休憩に入れる。間違えたら最初からやり直し。

確かに辛い試練だったし、今でも正直あそこまでやることはなかったんじゃないか?って根に持ってはいるが、宇宙飛行士になるような人間だから負けづ嫌いだし、走るのが好きなわけじゃないから必死に勉強したよ。それに極限状態でも落ち着いて問題に対処できるようになったのにはあの訓練が大きかったと思う。


―あなたが訓練教官になったら同じことをしますか?


難しい質問をしてくるね。悩むな。確かに効果はてきめんだ。だけど俺には教え子に恨まれる覚悟がないからな。人事の人がこのインタビュー記事を読んでくれているなら頭に入れておいてくれ。「俺には訓練教官は無理だ」。




ウィリアム・ダン飛行士は宇宙滞在期間450032日を誇る、まさにレジェンドと言える偉大な飛行士です。そんな彼をして「苛烈」と言わしめるアメリア・アンダーソン大佐とは一体どのような飛行士であったのか。興味が尽きません。次回のインタビューは大佐が船長に任じられる直前まで勤務していた、月面ドックで同僚であったキャシー・ヤンさんにお話を伺い、エンジニアとしてのアメリア・アンダーソン大佐を見ていきたいと思います。



(聞き手:ジョン・ジュール)

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