第8章
「もし時間が止まってしまってても誰が気付くかしら」
あの、九月の満月の夜、三度目の、少し慣れたキスの後、自分のくちびるを指でなぞりながら砂都貴が言った。
「例えばね、太陽は昇って、また沈んでくってことは、地球は自転はしてるのよね。季節も変わってくから、公転もしてる。でも、何年かたって、生き物が誰も成長してなかったら?太陽系の段階で、時間が止まってるってことになるでしょ。でも、それに今すぐ気づく人っていないだろうなぁ」
「でも、それもいいかもね。砂都貴と今のまま、年も取らずに、季節の花を見ながらずっと一緒にいられる。そうしたら、気持ちも変わらずにいられるのかな?」
二人は指をつなぎあいながら、クスクス笑った。
「でも、正直言って、僕は、今言ったことは本当のことみたいな気がしてしょうがないんだ」
「あ、私もなの。絶対、変な妄想よね。…でも」
砂都貴は満月を見ながら言った。
「いつまでも、一緒にいたいっていう気持ちは変わらないっていう予感は、絶対当たる気がする」
同感です。そう言う代わりに、四回目の、短いキス。
そう、僕たちの予感は当たるんだ。何故、あんなに焦って探しまわったんだろう。砂都貴は帰ってくると手紙に書いていったじゃないか。
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